Chapter 1-6
だからこうして見学にやってきた私たちは、ある意味六年間の自分の学校生活を決めようとしているとも言えるのだが。
「
「いーえ! 幸宮様のような高貴なお方にはテニスがお似合いなんですっ!」
「それならバドミントンの方がより高貴でしてよ!」
「あの……卓球部……」
「なーにを言っていやがりますか運動部ども! 幸宮様にお似合いなのは我らが茶道部と決まって」
「書道部はいつでもお主の挑戦を待っておる」
「手芸にご興味は……ない、ですよねー」
と言った具合に、私は運動部文化部関係なく集まった先輩方に囲まれて身動きが取れなくなっていた。幸宮
同様に
そんな私たちを外で見ている
ちなみにここは弓道場である。純花のお祖父様の話からも分かるように、拓篤君は情緒溢れるものが大好きなので、彼の希望でまずここへ来たのだ。
そう言えば純花のお祖父様がお亡くなりになられている事は、どうやらまだ公表されていないみたいである。個展が開かれた時にはまだご存命だったみたいだけれど。だから拓篤君は普通に個展の感想を言っていたのだ。
口止めされているのかそれともただ言いたくないだけなのか、純花は何も言わなかった。それが少し寂しかったけれど、友達としてもっと仲良くなればいつか打ち明けてくれる事もあるかもしれない。
ともかく。今はこの勧誘ラッシュから抜け出さないと。
ほら、弓道場を占領されてる弓道部の先輩方の視線が痛いし!
「みなさま、お声を掛けて頂きありがとうございます。折角ではありますが、部活はゆっくり考えてから決めたいと思っていますので、どうか本日はお引き取り下さいまし」
私の言葉に、勧誘の先輩方は渋々と言った様子で帰って行った。って言うか凄ぇな幸宮祈里。声出しただけでみんな静まり返ったぞ。
「すまないな、祈里」
「いえ。それより、弓道部の皆様にも謝罪しなければいけませんわね」
私たちはお騒がせして済みませんでしたと頭を下げて、弓道場を後にした。
「これじゃあ、どこに入っても苦労しそうね」
「あはは……。これからどうしよう?」
ため息交じりの純花に、結城君が苦笑する。
「ふむ……。また別の部活を見に行ってああなるのは避けたいしな。仕方ない、今日の所は引き上げるとするか」
そうするしかないかな。私たちは拓篤君の言葉に従い、帰路に就こうとする。
だがそこに、
「あれ? 祈里じゃん。おーい、こっちこっちー!」
と、やたら明るい男子の声が校舎の窓から聞こえてきたのだった。
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