第3話 「夏」

〇シーン1

・概要:主人公(リスナー)が、ヒロインの涼香に誘われ、

    2人きりになれる図書室の倉庫にやってくるシーンです。

    涼香は主人公を迎えると、すぐさま甘やかし(犬扱い)が始まります


※効果音:蝉の鳴き声(このチャプターが終わるまでずっと再生します)

※効果音:遠くの方から野球をする音や、吹奏楽の演奏など、部活動の音が聞こえる

※演出指示:少し間をおいてから次の効果音へ

※効果音:扉を開ける音


 柏木 涼香「ああ、やっと来た。ほら、さっさ入って」


※効果音:扉を閉める音(鍵もかけます)


 柏木 涼香「あんた最近、来るの遅いやん。補修を続きみたいやけど……あんた、一応、進路は進学なのに、そんなんで大丈夫なん? 第一志望は、たしか県内の大学やったと思うけど、あそこは……そりゃ、あたしが受ける東京の大学に比べたらアレやけど、簡単な大学やないよ。しっかり勉強せんと……」


 柏木 涼香「はっ、アホらし。こんなん、あたしが言うことやないね。あんたは犬で、あたしは飼い主。それだけなんやから。説教するより、遊ぼう遊ぼう♪ クーラーも全開に効かしといてといてやったから。涼しいやろ? 外とは別世界みたいに」


 柏木 涼香「ほら、こっち来て。で、寝転がって。いつもみたいに、お腹を見せて、服従のポーズ♪」


※効果音:主人公が寝転ぶ音

※演出指示:次の「んっ」は上履きと靴下を脱ぐ音です


 柏木 涼香「はい。ようできました、犬くん♪ それじゃ次は……んっ」


 柏木 涼香「ふふっ、上履きと靴下脱いで、裸足になっただけなのに、なーんか妙に心配そうな顔しとんなぁ。そんな目で見ても、別に痛いことはせんよ。あたし、ペットは可愛がるタイプやもん。あんたがされて嬉しいことはするけど、されて嫌なことはせんって。約束するわ」


 柏木 涼香「じゃ、あたしの足、舐めて。綺麗にしてね」


 柏木 涼香「こう暑いと蒸れてなぁ。ホントはクラスのみんなみたいに、スカートも短くして、裸足になりたいんやけど、あたしのキャラ的に、校則は守らんといけんやん? ソックス、ちゃんと校則通りに折り返して履いとるんちゃ。でも、暑いもんは暑いし、蒸れるもんは蒸れるんちゃ」


 柏木 涼香「ジメジメして嫌やなぁって思ってたら、今日の昼休みに思いついたんよね。あんたやったら、舐めさせたら喜ぶんやないかなぁ~って。普通は嫌がるやろうけど、あんたはあたしに一年以上も犬扱いされて、それに付き合う気持ち悪い変態やん? こういうのも、ご褒美になるんやないかな~って思ってね」


 柏木 涼香「で、どうする?」


※効果音:主人公が涼香の足に口づけする音

※演出指示:涼香は、足を主人公に舐められ続けているテイで

※演出指示:以下、指定があるまで主人公が涼香の足を舐める音を再生


 柏木 涼香「あはははっ、やっぱりやん♪ 犬の気持ちがわかるイイ飼い主やね、あたしって。残念なのは、あんたが犬やなくて、イイ歳した男やってことやけど」


 柏木 涼香「つくづく気持ち悪い男やなぁ。変態なのは分かっとったけど、まだまだもっと変態なトコが見えるとは思ってなかったわ。ちょっと感心する……ふふっ、あはっ、あはははははは! やだやだ、くすぐったいって~! あっははは、可愛い♪ 上目遣いでこっち見るのも、一生懸命、舐めるのも、まるで本物の……んっ、くっ、ふふっ、あはぁ♪」


※演出指示:主人公(リスナー)が涼香の足を舐める音を10秒ほど連続再生

      会話が途中で途切れた感じを出したいです。


 柏木 涼香「あはっはは……本物の犬、飼っとったら、こんな感じで甘えてくれたんかなぁ」


 柏木 涼香「あたしなぁ、子どもの頃に犬を拾ったんよね。まだちっこい、捨て犬で……くっ。段ボールに入って。それで……中に犬は三匹おって、二匹は死んどった。残ってた一匹を、持って帰った。そして、お父さんと、お母さんに頼んだんちゃ。この子を、飼わせてくださいって。そしたら、お父さんが犬を掴んで……んっ、いっ、家のマンションの窓から……その子、放り捨てたんちゃ。裏が空き地になっとって、犬はそこに落ちて、小さく鳴いて、それで終わり……ははは、引くやろ?」


 柏木 涼香「んっ……両親は、あたしの言い分、なーんも聞いてくれんやった。あたし、ギャンギャン泣いたんやけど、お父さん、あたしを殴ったんよね。平手打ちやから、殴るのとは少し違うかもしれんけど。お母さんは見てるだけで、何もしてくれんやった」


 柏木 涼香「で、お父さんが言ったんちゃ。『飼ってくれって頼む時点で飼う資格がない。自分で飼えるようになってから飼え。お前が無責任に拾ったから、あの犬は死んだんちゃ。そのことをよう覚えとけ。今は悲しくても、あとでありがたみが分かる』って。一言一句、このまま。一生、忘れん」


 柏木 涼香「今でもたまに夢に出て来る。あの子犬が、あたしに精いっぱい甘えようとするんよ。あたしはあの子、よしよしっ、もう大丈夫、ずっと一緒やって、甘やかしてあげる。でも……いつも目が覚めて、ガッカリして……んくっ、あっはははは! めっちゃ熱心に舐めるやん♪ 犬くん、あんた……ひょっとして、励ましよるつもり? あははは、平気やけん。もう昔の、ずっと前の話やから」


 柏木 涼香「んじゃ、もう足を舐めるの終了~!」


※演出指示:ここで主人公が涼香の足を舐める音を停止


 柏木 涼香「次は……ちょっと詰めて。あんたの隣に行くから」


※効果音:涼香が主人公(リスナー)の隣に寝転ぶ音

※演出指示:ここから涼香の声は、耳もとで囁くように


 柏木 涼香「『なんのつもりや』って? ……別に。ただ普通に、犬や猫がおったらやることよ。ほら、ペットを飼っとる人が、犬や猫を吸うっていうやん? それ、やるだけ。コラ、恥ずかしがんなちゃ。さっきまで人の足を舐めよった人間が、今さら何を……はぁ? 『汗をかいてるし、匂う』って? そんなん、分かっとるわ。犬や猫だって、別にいい匂いがするから嗅ぐわけやないやろ。やから、黙って嗅がれとけ、犬くん」


※演出指示:涼香が主人公の背中に顔を当てて、匂いを吸います


 柏木 涼香「すぅぅぅ……ふぅ、汗の匂いやなぁ。体育の時間に嗅ぐ匂いや。別にいい匂いやないけど、くんくん……たまにはいいかも? もし部活とかやれとったら、嫌になるほど、この匂いをかいどったんやろうなぁ」


 柏木 涼香「あたし、ホントは、運動部に入りたかったんよね。くんくん……子どもの頃は、運動、好きやったから。バスケか、バレーか……卓球でも陸上でも、何でもいいから、やりたかった。両親が、許してくれんかったから、できんかったけど。スポーツなんかやっても、意味ないって。すー……すー……ふぅ……そりゃ、言ってることは分かるよ。あたし、そんな凄い才能ないもん。運動神経は普通だし、別に凄い大会に出て、優勝したりとか、記録を残したりとか、それで将来はプロになったりとか、そういうのは絶対にできん。それくらい分かってた。でも、部活動って、そういうもんやないやん?」


 柏木 涼香「普通に楽しくやりたかった。それだけやったんやけどなぁ」


 柏木 涼香「ははは、なんかに顔をうずめるのって、かなり安心するんやなぁ。猫や犬を吸う人らの気持ちがわかるわ。あったかい生き物に顔を当てると、安心する。相手が汗くさい変態の人間でも、それでも、安心するわ」


※演出指示:涼香が主人公の肩に触れます。


 柏木 涼香「ん? あんた、肩がバキバキやんか。これは一日二日じゃこうならんなぁ。ゲームのし過ぎとか? なんでこんな固いん?」


※演出指示:主人公(リスナー)が「ワン」と答えた体で


 柏木 涼香「今は『ワン』って答えんでいいの。普通に人間語で答えてよ」


※演出指示:主人公が「深夜まで勉強していたから」と答えた体で


 柏木 涼香「ふむふむ……『遅くまで勉強してるから』、ね。なるほど。家に帰ってから深夜まで勉強して、昼間の授業は寝落ちして、補修を受けてると。あのねぇ、バカなん? 悪循環すぎるやろ。がむしゃらにやればイイってもんやないんやから、勉強ってのは。考えてやらんと、体を壊すだけやからね。肩、揉んでやるわ。ほれ、ぐ~り……固っ! それに……んっ、腰もバキバキやんか! こんな体しとったら、血管詰まって死ぬよ? 勉強のやり方も考えて、適度に運動もすること。これ、飼い主からの命令やからね?」


※演出指示:主人公が「わかった」と答えた体で


 柏木 涼香「今のは『わかった』やなくて、『ワン』って答えるところやろ。ほら、うつぶせになって。特別にほぐしてやるけん、楽にして。んっ……! んっ……! 固ぁ……本当に10代の体かちゃ、これ? んっ……! んっ……! くっ! ダメや、手で押しても効いてる気がせんから……踏むわ」


※効果音:ヒロインが立ち上がる音


 柏木 涼香「おりゃ! ぐりぐりぐり~~♪ あははは、効いてる! 効いてる感じがする! って、逃げるな! ぐりぐりされてろ~! コリをとってやってんだから! 感謝して……だから逃げんなって! あっははははは!」


※演出指示:涼香の笑い声でフェードアウト

※演出指示:無音数秒(時間経過の演出)


 柏木 涼香「はぁ……はぁ……久々に、はしゃいだ。楽しかったわ」


 柏木 涼香「ふふっ……楽しかった、か。あんたみたいな変態と遊んで、『楽しかった』か。ま、そういうふうに思うってことは、あたしも……」


 柏木 涼香「なぁ、犬くん。勉強、手伝ってもいいよ。あたしは第一志望に普通に受かりそうやけ、あんた一人分くらいなら面倒みれそうやから。ちゅうわけで、今日はこれくらいで切り上げて、今から勉強しよっか? そうと決まれば~~ほら! 頭切り替えて、犬のときみたいに、可愛い可愛いせんで、厳しくいくけん、覚悟するよーに♪ よろしく!」

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