第五、第一の災厄。

 いつしか無人島にまで辿り着いていたマリンはこう言った。

 

「ある晴れた朝焼けですやん。」

 

 無造作に昭和の声がだだ漏れる。

 

 何事も無い。ただそれだけを表す為に、わざわざ体力を消費して声を出す必要など無いのだが、マリン船長は事を単純に考える癖があった。

 

 マリンはただ只管に社畜だった。朝から晩まで働き、毎日残業続き。叱られたり、厳しくしつける様な感じで接されたりして、へとへとになって帰宅しても、家ではやる事なんて無いもんだから、ただ家事を熟すだけの日々が続いて、いつしか明日への夢も何も無くなって、いつの間にか会社を辞めた。

 

 そして会社を辞めてやる事と言ったら、先ずはバカンス。夏の離れ小島で優雅にのんびりとバカンスと致しましょうやって、台風で台無し!?何処にも行けない!!欠便!?帰れない!!手持ちのお金ももう無いし、こうなったらここで働くしかねーな。

 

 ややあって、バカンス先で働き始めたマリン船長は、其処での暮らしをこう語る。

「小島って何処でも、バカンス先には良いけど、住むにはかなり大変なんだよね〜。物品は、空輸は高いから諦めて、毎日二、三本しか出ない観光用とは違う定期便に依存してさ〜、毎日ちょっとだけ開かれてる街の八百屋とかに行っても大した野菜も売って無いのよ〜。当然、働き口も観光か漁業位しかないけど……」

 

 観光業務、これが前の職場に似ていたのが厄介だった。今回は、夏の陽気も合わさって何とか耐えられたものの、マリンは何時しかバカンスで楽しむ筈の光景が、日々の激闘に重なって潮の匂いと同じ様に感じられたという。

 

 そして、今回、定期便は高いからという理由で、大してお金も貯めずに、近くの漁師に、向こうの港に行く機会がるからと、千載一遇のチャンス、送って行ってもらう事にした。

 

 本来ならそれだけで事は足りるはずだが、マリンは悉くツいて無かった。

 

 先に直撃していた台風の裏にまあまあな規模の低気圧が発生しており、遭難しない様にと、マリンはついて行けなくなった。

 

 なけなしのお金と手荷物片手に、こっそり船に乗り込み、外の物置の陰で隠れ潜んでいる所、高潮にやられ、マリンだけ遭難した。

 

 〜

 

(あ〜あ。こんな事ならもっと遊んどいた方が良かったなぁ。)

 そう思うと何だか虚しい思いがした。

 

 取り敢えず、SOSだけ書いて置いて、無人島、どうにもならない状況。マリンは半ば諦めて自分がもし海賊だったらという妄想に耽る事にした。

 

(海賊だったら、出来れば、金銀財宝より、多くの仲間と、安心安全に交易できる免許と、って、それは海賊じゃないか。)

 

(金銀財宝は出来れば接客業時代に欲しかったなぁ…売るだけで一生分の交通費も食費も賄えるし…仲間は今欲しかったな。どうせ死ぬならみんなで飲んでは笑いながら死んで行きたかった。)

 

 妄想も諦めて、諦めて寝る事にしたマリン。砂浜はサクサクと柔らかく、潮騒がまるで子守唄みたいだった。

 

(むにゃむにゃ。昨日までの疲れが取れる様だ––)

 

 〜

 

 ?「マリン〜、仕事がまだあるよ〜。次は厨房の手伝い、先ずは皿洗いから〜、カシャッカシャシャシャシャシャシャシャシャガッ、それ終わったらお客様の布団を敷いて置かないといけないから、早・く・片付けてね。それと、…、…。それと、…」

 

(素早く、しかして丁寧に。)

 

(もっと早く、早く、早く…)

 

 もっと早く、もっと早くと、気付いたら全身が熱に包まれている。仕事で疲れて出した熱と、身体を動かし過ぎて出した熱が合わさった様な熱、熱、灼熱…

 

「ハッ」

 

 起きたのはその沈まぬ太陽の灼熱に魘されたからであったが、不思議と身体は熱く無かった。

 

(あ〜、もう。何でこう…)

 

(もういっか…)

(あのまま醜い老婆になっていたよりは、ずっとマシな死に方だなぁ…)

 

 なんて、全てを諦めたマリンはふと、沖合を見た。

 

 勿論、何も無い。

 

 ただの潮騒が静かに、マリンを歓迎するかの如く、ただ時をゆっくり流していた。

 

 〜〜

 

 目が慣れて来た。潮に。海の色と、照りつける太陽光の反射に。マリンは充実そうに退屈にして居た。

 

(あーあ、このまま腹も減らずに一生のんびりできたらなぁ…)

 

 照り付ける太陽、何処までも透明な海。心地よい潮の騒めき。

 

 漸くバカンス気分になって来た。

 

(よっこらせっと。)

 

 マリンは立ち上がると海を観察し始めた。見極めているのだ。潮の裏にある岩場の形を。

 

 海には二種類ある。浅瀬か沖合か。浅瀬ならば何処までも海岸に沿って続いて、気付くと一周回って島を囲っている。大きな島で言えば、マリンの住んでいる国も其れが二つ、大小様々な島が数百とあった。沖合なら、囲われる事がない未だ確定していない地・。深く暗い海の底が海面までそうあれかしと定めてある。低気圧が発生する場所にして、雲がある時と無い時の差が激しく、出航する際には必ず其れと相談しなければならない。

 

 …一つ言えば、マリンには天性の勘があった。女の勘、もとい女海賊としての勘、相手の表情、潮の表情にある裏の顔をよく読み取れた。だからこそ、前の職場は辛く苦しいものだった。お客様の為に常日頃から笑顔を絶やさない様に心掛けるその心は、歳を取っても比較的若い肌に比べ、とても狭く、苦しいものだった。

 

 そして、マリンは見つけた。次の浅瀬、基、次の離れ小島、其の臭・い・を。

 

 よっし、そう言うとマリンは衣服の未だ乾いていない部分を破き落とし、大きく海に飛び込んだ。幸い、空には雲一つない。其れに、着衣で溺れていないのは、マリンが普段から軽い着心地の洋服を好むからであり、万が一に備え、平均的に薄い服ではなく、所々防寒に適したアクセサリーをした子供っぽい洋服を着て置いて正解だったからである。

 

 〜

 

 マリンは泳いだ。体力が無くなる前ではなく、無くなった後に来た常に温まっている身体を選んで。

 

(次の離れ小島まで、あと数百メートルちょい。イケる。大きな島からは遠ざかるかもしれないけど、次の島には新しい刺激が少なからずきっとあるから––。

 

 其れはそうだった。マリンが辿り着いたのは、太古のプレートテクトニクスで出来上がった群島の端の島であり、そのまま真っ直ぐ道なりに行けば、元の島に戻れる位置だったからであり、荷物を失ったマリンは精神的に身軽に、気持ち良さそうに泳いでいるマリンは知らないと思うが、そのまま真っ直ぐに行かなかった場合、確実にもう一本、遭難するのだ。人生という道を。

 

 〜〜〜

 

 泳いだ。

 

 何処までも続いていると思わせる離れ小島の群島を。

 

 そして、再び辿り着いたのだ。元の島へ。

 って思ってた。けど様子が違う。

 海岸線の形も違う。もしかしたら…島の反対側に来てしまったかも、って思って、グルグル周ろうかと思った其の矢先、マリンは、木造の大きな船を見つけた。

 

(え?アレって、木造の…船、だよね。映画とかで見る大航海時代の船。)

(何でこんな所に…)

 

 もしかすると木造の船の外観をした博物館かもしれない。そう思うと、思わず其の船に近付いていた。しかし、船の周りを1周周って異常事態に気が付く。

 

(おかしい。何処にも入口が無い。これじゃあまるで本物の木造船じゃないか。)

 

 マリンは意を決して乗り込む事にした。船の側面にある縦横に編まれたロープが張られた箇所から登った。

 

 乗り込むと其処には、っと誰も居なかった。

 

 お腹もならずに腹が減っているのが分かる。

 

 マリンは今がチャンスとばかりに船の内部も探索する事にした。あわよくば此処で泊まっている者達の食料にありつこうと言う腹だ。

 

 斯くして、食材は其処にあった。船の下の方の後方に、酒と樽に詰まった粉の小麦が。

 

 マリンは無我夢中で小麦を頬張った。

 

 何かしらの交易品の余りかもしれない。偶々持って行かずに置いて行っただけかも。置いて行くんなら、其れなりに人出が出払って居て、もしかすると出払った直後に此処に来たのかもしれない。すれ違いなら、すぐに戻って来るだろう。マリンは此処まで考えて頬張って居た粉の小麦を喉に詰まらせた。そして酒を一気に飲んだ。すると少し酔っ払った。久し振りの酒だったから仕方無い。しかしマリンはそんな事は御構い無しに酒を一気飲みした。酔っ払った。

 

 酔っ払いながら、船室から外に出る階段の方を見ると、何と其処には、怖い顔をして、チャッカルを持っている男の姿があった。

 

「よくも飲んだな。この俺の酒を。」

 

(え?もしかしてこのままだと、私、殺される?)

 

 男は剣を握り締めた。マリンがフラフラと立ち上がり、中段あたりまで剣が掲げられた其の時、疲れと酔いで思わずマリンは転んでしまい、もつれ込んだ右足はそのまま、ヒップアタックを男の膝に入れ込んだ。

 

「ぐあっ…」

 

 すると男は倒れるなり右手から力を抜いて剣を離した。

 

 マリンは咄嗟に剣を奪い、そのまま酔いもあってか、放心状態、いや、持った剣にウットリしてしまった。

 

「何…者…」

 

 マリンは酔っ払いながら倒れると、男に重なった。序でに手が落ち、男の腰にあったピストルを落とした。

 

 男はピストルに手を伸ばそうとしたが、起き上がろうとしたマリンの手によって、合気道の如く手を防がれてしまった。

 

(ん?コレは…)

 

 マリンはそのままピストルを手に取ると、危険な代物なので永遠に借りておく事にした。

 

「お前…」

 

 男から声を掛けられる。

 そこで酔いは覚め、何と無く状況を察する。どうやら、船長と思しき人物が戻って来た時に、よろけて倒れて武装を奪ってしまったのだろう。

 

「…コレは貰っておきますね。」

 

 鞘も取ると、照れ隠しも相俟って、マリンはそのまま甲板にまで出た。

 

 マリンは一瞬考えた後、船に戻って此処が何処か聞く事にした。

 

「あの〜済みません。」

 

「何だ。」

 小さく、少し怯えた様な声で男が聞き返す。

 

「此処って何処でしょう。」

 

「…此処は観光地に程近い海賊島だ。」

 

「何故此処で木造の船を…」

 

「貴様に其の様な事を教える訳にはいかん。」

 

「え?」

 思わず声が漏れた。

 

「兎に角、早く其のチャッカルピストルを返せ。」

 

「いや、コレはマリンが永遠に借りておく物だから!!」

 

 すると男は興味深そうに眉をひそめると、

「お前、マ・リ・ン・って言うのか。何処ぞのお綺麗な土地の出柄でもあるだろうに、即断即決、其の根性、気に入った。」

 

 男は倒れながらも格好良くそう言った。

 

 マリンは一瞬、違和感を感じた。そしてついうっかり聞いてしまった。

「どうして立たれないんです?」

 

 ピンクのアクセサリーが付いた半袖にチャッカルと、片手にピストル。その女の状況的に威圧感のない危機感が男を笑わせた。

 

「フッ。」

「ハハハハ。」

 

「何。腰を少しやってしまってな。」

 

 マリンは少し謝りながら図図しそうに、

「そうですか。済みませんが、此処で私を働かせて貰う事って出来ますかね。」

 

「何。」

「何を言っている。」

 

「あの〜私、お恥ずかしながら、此処で独りで生きて行くのが無理だと思うんですよね。それで、申し訳無いんですけど、此処で働かせてもらえないかと。」

 照れながら、マリンはそう言った。

 

 

「働く…?」

「まさかお前、遭難したのか。」

 

「え?いやぁ、確かにそうですけど…」

武装が武装のまま少し後ずさるマリン。

 

「働くといっても、俺の代わりが務まるとは思えんのだが、お前、仕事で何やってる。見た所、ただ遊びに来たという訳でもあるまい。その格好、普段着にしても安い。旅行で着る様なものでも無いだろうに。」

 

鋭いお方だ。勿論マリンも何も考えずに着ている訳では無い。ただ、それとこれとは話が別だった。

 

「お前、何処で働いている。」

 

「…無職です。」

 

「え?」

 

「働く所ありません。」

 

「何。では一文無しの末、海に飛び込んで自殺でも図ったのか?」

 

「…いや、あの〜。」

 

マリンは、倒れ伏した男に、取り敢えず、経緯いきさつを話す事にした。

 

 

「そうか。ご苦労だった。」

「まさか新しい船員が俺の下に飛び込んでくるとは思わなかったぞ。」

 

そう言うと男は軽く咳払いをして、

「…俺達は行き場を無くした同胞を探している。」

「天災–––––。知っているか。海に遥か昔から伝わる伝説だ。」

 

男は少し姿勢を戻すと、淡々と語り始めた。

「天災が来る日々に、ある晴れた日が来るという予言があったなら、其れを信じるべからず。…これは、一日中晴れる事は稀な海域では当たり前の様に伝えられている口伝だ。元々の意味は奇天烈な占い師が居て、その国に天災が訪れるという始末だと、昔会った老婆はそう語ったよ。」

「此処からだ。天に三津夜の降る如し。層雲は遥か地上まで降りて来て、全ての営利を暗闇に落とす。」

「其の中りを付け、内にて潜む最果ての体躯。…これは、其の天災に巻き込まれた人々の死骸が風の弱い台風の目に集まったものが人の姿になっていると考えられて居る。巻き込まれれば終いと言う訳よ。」

「然してご覧じろ。全ての暗闇は月食にはならず。月明かりの下、世界は救われるであろう。さめざめ。」

 

男はそう語り終えると、語らせ過ぎたな…と言って、マリンに襲い掛かってしまった!!

 

マリンは咄嗟に腰からチャッカルを抜こうとするが、遅い。握っている手を取られ、そのまま前方に投げられてしまった。

 

「武器は返してもらうぞ。」

 

男が迫る––。

 

しかし、

 

バンッ

 

マリンは撃っていた。ピストルを。元の持ち主に。

 

だって死にたく無いんだもん。このまま無造作に武器を奪われ返されたら、とんでもない目に合っちゃう気がして…

 

当時の事を振り返ると、マリンは、何か悟りを得た様な顔で、仕方が無かった、そう語るという。

 

すると、腹に血が滲む男の胸から一枚の写真が溢れ落ちて来た。家族と一緒に写っている写真だ。

 

写真。その中央に、今さっき撃った男と其の妻と思しき女性に囲われている一人の少女が目に入った。

 

一目惚れだった。美しく可憐で華奢な緑髪の少女の笑顔に、心を奪われた。そして後悔した。マリンは、今、其の少女の幸せの一つを奪ってしまったのだから。

 

(((お父さん、お父さん、何処?お父さん、又会いたいよ。)))

 

幻聴では無い。男の事を探して此処まで来た其の淡く綺麗な魂は、父の最期を見る事なく消えて行った。

 

「ゴホッ…」

 

男が蒸せ返る。

 

そして、

 

ドサッ カラン

 

男が横向きに倒れ、握ったチャッカルを放す。チャッカルは、主を失い、その場に転がった。

 

(あ、あ…やってしまった。やってしまった。マリンは、一人の命を奪ってしまったんだ。)

 

奪って来たピストルを持って、奪ってしまった一つの命を見て、マリンは胸が空く感じがした。

 

そして、魂が天に召される其の刹那、男は笑っていた。まるで、漸く娘に会えるかの様な面持ちで。

 

マリンは人を殺した。つい最近まで人に頭を下げる際にそっと添えていた手で。其の手に握った男のピストルで。

 

暫く時が過ぎた。潮騒が少しうるさくて、チャッカルを再び握ろうと決意し、そんな暇を潰すつもりで、マリンは、チャッカルを握った。自分の為では無く、自分が殺した男の娘の為に。

 

そんな折、

 

「船長〜。」

 

男の声が聞こえた。

 

マリンは直様立ち上がると、其の男に、周りの男達に向けてこう言った。

 

「これからは、私が船長だ!」

 

〜〜

 

〜〜

 

森の奥から出て来る多くの船員達は手持ち無沙汰に船に帰って来ていた。

 

どうやら積荷を何処かに運んでいたらしい。

 

マリンは此処を海賊島と言うことにした。

そして、船長になるには、このならず者(割と常識人)達に認められる必要があった。

 

「元船長の娘に会いに行く。」

 

しかし、言う事を聞いてはくれないみたいだ。

 

ただ、こちらにも帰れない用事がある。

 

男を殺めた勢いそのままに、行くしか無いと踏んだマリンは、

「其の為に来た。」

そう言った。

其の為に来た、は言い過ぎだったが、そう告げると、頑なに言う事全てを聞き流そうとしていた船員達も素直に言う事を聞いてくれる姿勢を示した。

 

マリンは続けて演説した。

「私はキミ達と同じく働き口を失った者だ。此処から行く当ては一つも無い。ただ、前の船長は、私に敗れ、この写真を私は持っている。貿易は君達に任せるが、先ずは一つ、行かなければならない場所に行こう。其処から先は自由にして良い。」

 

そう言うと、船員達は船に乗り込んで来た。闘いかと思って、警戒するも、何の反応も無く淡々と帆を張って出航準備が整って行く。

(ん?アレ…?良いのかな。)

 

「ヨーソロー。」

まあまあの腕っ節の良い声が出して船員達を導こうとした。

 

船は出航した。

 

出航した後、然してマリンは考えた。前の船長との関係を。しかし結論が出なかったので、聞いてみる事にした。

「前の船長の名前はどんなだった。」

 

すると、

「あ〜、俺達、あの船長の事ほとんど知らねーんですわ。」

「何なら誰が船長でも、この船さえあれば構わないっす。」

 

「そう。なら私が船長って事で良い?」

 

「……」

 

「………ま、いっか。」

 

どうやら、一味は前の船長とは大した思い出がある訳でも無く、なあなあでマリンの下について来てくれるらしい。

 

マリンは、取り敢えずはと、先ず観光地に行こうとしたが、船員達に止められた。

曰く、そう言う真っ当な観光ができる場所の近くに行くと、船ごと拿捕されてしまうと。

一味「あー、止めた方がいい。彼処は軍の船が時折巡回しているからね。行くんなら真っ直ぐ帰りたいもんだ。」

 

そういう訳で、マリンは海賊島から出ると、直ぐに緑髪の娘に会いに行った。

 

一味は特に全員が多様な訳でも無く、編み物に熱中している者も居れば、四六時中マストの上から周りを眺めている者位で、それ以外は屈強と言える船員は一人だけだった。マリンは其の男性を副船長に抜擢すると、一味を取りまとめる様に指示を出した。

 

マリンが此処まで来た経緯を説明すると道中、マリンは船長としてでは無く、あくまで潮が読める航海士として信頼された。

 

そして、航海の腕を見せると、皆から一様に尊敬されて行った。

 

 

前船長の家があったのは、海賊島から北に30海里程離れた場所だった。マリンは其処に至るまで少し、冒険をした。

 

マリンが船の指揮を執ると、時に小々波が渦潮に変わる前に其れを見抜き華麗に回避し、刻に滅多に現れないカモメが陸地を運び、斎に嵐の中を帆を張る向きを変えるだけで軽々と突破した。

 

渦潮を回避した時には敏腕の女海賊と言われ、カモメが通る時は幸運の女海賊と呼ばれ、嵐を突破した後は、"マリン船長"だった。

 

今此処に、ついこの間まであくせくしながら働いていた女性の面影はもう無い。あるのは、ただ貪欲に海賊たらんとする執念深い女、あの少女の魂と笑顔に感銘を受け、後悔と共に航海をする宝鐘のマリンだった。

 

 

マリンは、前船長の家がある土地まで間違えずに辿り着くと、そこで一旦、一味にお別れを言った。

「済まんが諸君、自由にするのは結構だが、一夜だけで良い。今日までの事は忘れてくれないか。」

そう言うとマリンは、其の土地にある唯一の家に行った。表札があり、「麗羽」と書いてあった。

 

其処では、少女が一人で暮らしていた。

 

其の少女の名前はるしあと言った。

 

マリンは直ぐにるしあと仲が良くなり、一晩中るしあと共に過ごした。

 

マリンは決めていた。この娘と航海に出ると。

人と接する仕事を辞め、人を殺めても尚、この少女と出会ったが故に、マリンは人と接するのが好きになった。

 

そして、るしあに航海の話を持ち出し、持って行く物は無いかと尋ねた。そうすると、

「お父さんもね航海をしてるの。」

そう言って一枚の写真を持って来てくれた。マリンも良く知った写真だった。

おずおずと、其れを持って行くの、と尋ねたら、悪いの?と言われ、一瞬険悪な表情が女性から漂った。

 

「何でも歓迎するよー。」

そう言ったら、るしあは家にある家財全て持って行きたいと言い出した。

 

そうこうしている内にマリンはるしあを船に連れて行った。

 

「わ〜大っい〜。」

 

マリンが前の船長から奪った海賊帽を序でにと見せた時からだろうか。そうして、いつの間にかるしあの目の色は赤く染まっていた。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

そう言えばそんな事もあったなぁ…爆発する世界の中、走馬灯を介して、碌な思い出がねえやと笑うマリンの顔は爆発に呑まれ、隣にいる目の赤い女性の瞳と共に、一瞬で塵に還った。

 

〜〜〜

 

マリンは死んだ。

 

跡形も無く吹き飛んだ。

 

そして、幽霊となって彷徨い歩くことになった。

と言っても、幽霊船の様に何処かに固定されてふらふらと彷徨い歩く訳でも無く、ポルターガイストを起こす程の霊力がある訳でも無い普通の幽霊だった。

 

マリンは物静かにるしあとの過去をよくよく振り返る事にした。

 

 

「マリン〜。」

そう元気よく声を掛けるのは、最近駆け落ちした前船長の娘、麗羽るしあだった。

 

「釣れたよ〜。」

魚を釣り上げ、楽しそうに燥ぐるしあ。

 

この時、マリンは嬉しそうにしていたんだった。

 

前船長の死亡から数日、るしあを迎えに行ってから数週間、心の底から一緒に笑える様になってから数ヶ月、るしあと共に過ごして数年。

るしあのこの笑顔を見れたのは一体何度あったのか。

 

いつの間にか忘れていた。

自分が幸せを奪った張本人である事と、るしあに其れを押し隠して過ごしていた事に。

 

るしあは気付いていたんだろう。其の事実に、とっくの昔に終わった悲劇が未だ彼女の中で続いているという事実に。

其の上で彼女は強く生きた。いや、強く生きざるを得なかった。自分は本質的に孤独であるというお話と、自分は一人では何処までも非力であるというお噺と。

世界は何処までも廻り巡るのだと言うマリンの顔を真剣に見つめていたあの目。赤い、何処までも深く広がる赤が其の目に留められている。マリンは其の真剣さを大切に心に留めたのだった。

 

るしあは哀しかったんだろう。この人はいつになったら自分を裏切るのだろうとか、この人に本当に着いて行って良かったのだろうとか、いつまでこの生活は続くのだろうとか。

 

 

満天の星空の下で、るしあのあの赤い瞳を見る。マリンは決めていた。自分の海賊衣装は紅にしようと。そして、マリンの何て事の無い普通の目の色を見て、るしあが笑った。

「ふふっ。マリンって、両目で違う色しているんだね。」

 

其の時の笑顔を覚えている。あの写真にあった屈託無く笑う少女の面持ち、其れが今、目の前にあるのだと。思わず抱きしめていた。強く抱き留めていた。あの当時、るしあに逆に心配されて、とても悲しかった事を思い出した。自分はこの娘を導かなければならないのだと心に決めていたのに、心配された途端、不安と後悔が押し寄せて来て、不覚にも涙を流して居た。

 

そして、マリンは衣装を変えた。全身紅色の海賊衣装。買ったとある観光地に似ていた島の店員は、笑いを堪えながらマリンに衣装を当ててくれていた。其れでも、マリンにとっては一張羅だった。

地図を読み取って、嘗ての富豪が隠したとされるお宝を当てて、全部奪った暁に、一丁前にるしあと高級なお店でデートした事もあったけど、其の時もこの衣装だった。

 

今もそうだろうか。

一瞬と言える忘失と記憶の彼方から帰って来て、直ぐに確認する。

足もあった。流石に海賊の足腰はそう伊達では無い。

 

マリンはそうして再び思い出した。

 

あの時の事を。

 

マリンが何でも無い時間に起き上がって甲板に出た時の事、るしあの目が背後で赤く開いていく。マリンはそれに気がつかずに甲板に出た。

 

晴天になっていた。星空が今日も美しく輝いて見える。北極星の位置を確認して、次いで季節の星座が天球のどの方角に有るのかを見る。

(あ、るしあの顔に見える…)

 

疲れているのか、其れとも一際輝いて見えるのは、るしあへの愛だからだろうか。

確かに、るしあの顔の星座が見える様に瞼を細めて所々星の光を細めているマリンは、その睫毛の艶やかさもあってか、とても憔悴して居る様に見える。

 

一味「船長、こんな時間にどうしたんですか。夜風に当たり過ぎると体に障りますよ。」

優しく声を掛けてくれる一味の中でも屈強な人物。航海の腕も然ることながら、其の体力もあってかマリンの操舵に着いて来てくれる数少ない信頼できる男。其の男がこんな夜更けに一人でマリンの体の心配をして居る。

マリンは思わず自分の体の心配をした。

 

自分の腕で自分の身体を抱く様に身を縮こまらせる船長は、やはり、未だに海賊というには程遠い存在だった。ただ、華奢と言うには少々ケツが大き過ぎるのも抱くのに過ぎる案件か。

マリンは一瞬そういう風に自身の貞操の心配をすると、直後から図々しくなったのか、男にこう言った。

「おいこら!るしあは起こしてないだろうな。」

 

其の一瞬の写り身の早さも又、女性の特徴だった。

「アイ!勿論ですよ。」

マリンの人物として優れた所に感銘を受けた船員達は、いつもこうして一際飛んで行く声を出す。

 

マ「そう。其れなら問題は無いけど…」

こうして時折声を押し殺す船長も又、船員達にとって、其の人気の秘訣だった。

 

すると、上空から声が掛けられた。

「三時の方角、一船の巨大な船が見えます。」

 

マ「何?どれどれ?」

望遠鏡で覗くと、10㎞先に確かにマリンの船の倍はあろうかというガレオン船が在った。

「どこの素人船だ。」

 

マリンは、夜間まで航海をしていた一隻の船に好奇心を示し、朝まで暫し様子を見る事にした。

 

この船に備え付けの固定の望遠鏡を使い、二重で望遠し覗いていると、其処には、可愛らしい二人の生き物が目に付いた。

 

一人目は、蛸の様な黒い触手を背中から生やしている童顔の暗い色を基調とした女性。

二人目は、よく海に飛び込んでは渦巻きや竜巻を発生させ、其の都度一人目の女性と言い争いになって居る白髪で小柄なサメの洋服が良く似合う娘だった。

其処にもう一人、物置の陰から出て来たのは金髪でプニプニとした肉付きが特徴のこれ又小柄な女性。

金髪の女性は、白髪の娘が起こしている竜巻や渦巻きと其の中心で何て事なく居座って居る其の娘の姿を見て笑っていた。

 

暫く観察して居ると、ピンク髮の背中に鎌を背負っている長身の女性に、何の変哲も無いオレンジ髪の女性がくっ付きながら、船の内部から出て来た。

ピンク髮の女性は鬱陶しそうにオレンジ髪の女性をあしらっているが、一人足りない事に気付き、当たりを確認する。

そして、白髪の娘が竜巻に乗って海から甲板に上がって来て、ピンク髮の女性を驚かしている。

金髪の女性が何か、竜巻が友達だとか何とか言って、五人とも笑っている。

一頻り笑い終わると、女性達は宙やら海やら方々を見遣っている。

すると、オレンジ髪の女性がこちらに気付いた。

向こうも望遠鏡でこちらを確認する。

ピンク髮の女性が、何を見ているのかオレンジ髪の女性に聞いて居るが、女性は軽く口元を動かしただけで微動だにしない。

其の内、ピンク髮の女性が業を煮やしたのか鎌を持ち上げ、オレンジ髪の女性の喉元に其れを掛け、直ぐに望遠鏡から目を離すよう催促した。

オレンジ髪の女性は慌てながら、ピンク髮の女性に望遠鏡を渡し、ピンク髮の女性が鎌を置いて其れに覗きを入れた瞬間、オレンジ髪の女性は素早く後ろに回ってピンク髮の女性のお尻と胸を触って頬に接吻をしようとしたが、ピンク髮の女性が身を翻して鎌を持って振り回すと避けながら離れて行く。

 

かなり物騒な船だが、其の分余計にマリンの気を引いた。

 

よっし、明日朝に近付くぞ。

 

マリンはそう決めると、向こうも同じ考えらしく、翌日迄掛けずともこちらに寄って来た。

深夜は風が出て無い事が多く、基本的には碇を使って船を止め、就寝の準備に入る。

勿論其れでは、いかんせん退屈過ぎるので、マリンは例の島、元の島によく似た大きさの島だが、これが元の島から一海里しか離れておらず、手漕ぎボートで観光地のトランプやらチェスやらを奪って来た結果、かなり暇が潰せる様になったとか、語る事は最早マリンが海賊である事に尽きる。

だが、海賊とて、風の無い所で帆を張るなど以ての外、しかし意外に向こうのガレオン船から沢山の黒い触手が出て来て、其のまま手漕ぎ板で漕いでいるでは有りませんか。

(不味いな…彼奴らと会敵したら、戦力差が余りに越してしまう戦いになる。不利。かと言って交渉する材料も積荷以外特に無い。)

 

深夜、寝静まった頃に動く物騒な巨大船。其れに比べるとマリンの船は所詮海賊船と言わざるを得ない大きさだった。

 

ザザ、と漕いでいるのか泳いでいるのか分からない滑らかな航行で直ぐに近付いて来る船。

 

マリンはるしあを起こさない様に船員達にゆっくり起きて来る様に指示を出すと望遠鏡から望遠鏡を外し、固定の望遠鏡で近付いて来る大きな船を見ていた。

 

どうやらあの白髪の娘が後ろから推進力を足しているみたいだ。

 

船頭に立った鎌を持った女性を見ると、るしあの父と思しき者から伝え聞いた予言が頭を過る。

「天災が来る日々に、〜〜〜信じるべからず。」

天災…しかし其の徴候は未だこれ以外何の手がかりも無く。

「天に三津夜の〜〜〜を暗闇に落とす。」

暗闇に…今が深夜である事とは関係が無い。

「其の中りを付け、内にて潜む最果ての体躯。」

最果ての体躯–––––先の白髪の少女に少なからず其の思いはあるけど、前船長の言を借りれば、肉体が一箇所に圧縮されてしまう非科学的なお話とは違うみたい。これが引っ掛かった。

「然してご覧じろ。〜〜〜。さめざめ。」

最後のさめざめと言うのが気になった。接尾にするにしろもっと良い謳い文句があった筈だ。なぜ、さめざめなのか、サメの洋服を併せ考えると、ただの感嘆表現の様には思えなくなっていた。

まるで、安っいサメ映画の様に、サメが天から降り頻るとかなのかもしれない。いや、サメと言ってもホオジロザメを降らす位なら、車すら飛ばすだろうし、そんなのが天災だとは思いたく無い。

其処まで考えてマリンはガレオン船が近くまで来ているのに気付いた。

船員達もこっそり揃っている。

「船長、全員揃いました。」

 

其の声に、船長という自覚を持って気を引き締めるマリン。目の前には高速で移動して来た例の団体がいる。

 

「さてと…」

マリンがそう呟くと、鎌を持った女性がこちらの船に跳び乗って来た。

 

ピンク髮の女性・カリオペは着くなりこう言った。

「We are boyscouts.」

 

マ(え?私達はボーイスカウトです?)

 

いきなりの発言に若干慎重になるマリン船長。

マ「何しに来たんだ。」

伝わらないと思えば、直ぐに英語で言直す。

「To what did you go?」

 

其の姿に、おお、と船員から嘆息が漏れる。

 

カリオペ「That's elder English.」

 

ボソッと言われた言葉故に聴き取れなかった。

 

マリンの質問に、最終的にこう返す。

カ「communicate.」

マ(コミュニケーション?え?戦う気は無いのか。)

カ「其れよりも…」

マ(え?同じ言語喋れるの!?)

日本語で喋り始めた。

 

カ「この船下さい。」

 

え?聞き間違いか?こんな深夜に、よりによってより大きく上質な船を持っているのにも関わらず、マリンの船が欲しいって?これは聞き捨てなりませんなあ…

そもそもボーイスカウトって何なんだ。友好的であるのは伝わるけど…

マリンは思わず聞き及んでいた。

「What are boy–scouts 」

 

カ「⁈」

そっち、と言わんばかりの一瞬硬直する様な表情の変動があったが、気を取り直して素直に教えてくれた。

「We are membership that is kind and isn't enemy, for everyone.」

 

其の内容は、端的に言うと今のマリンの状況と真逆だった。

(はぁ?誰にでも優しくする団体?ふざけんな。そんなお伽話の様な訳は信じられるか。)

 

現に今のカリオペは死神の鎌を持っている。護身用とは言え、やり過ぎな格好だった。

それに、今はそんな事に固執している場合じゃ無いと、マリンは自分に言い聞かせた。

マリンは本題を切り出した。

「何故この船が欲し…」

 

カ「Our ship is bigger for us.」

食い気味に、其の手の語尾で威勢を貰う訳にはいかないと、答えた。

 

マ(は?デカ過ぎる?それじゃあ、あの船は自動的にマリンの物になるって事だよなぁ。)

「分かった。それじゃあ、今直ぐとは行かないけれど、船、交換しちゃいますか。」

 

カ「OK」

 

 

そうして翌朝、既に船室内の荷物を交換し終えていた頃、るしあが起きた。

「ん〜。おはよう〜。」

るしあは船室内に行ったり来たりする船員と新しく搭乗して来たオレンジ髪の女性に驚いて、マリンに声を掛けて来た。

「急に知らない人が部屋に入って来たんだけど…」

 

マ「ああ、実は…」

マリンは粗方の事情を説明すると、そんな訳だからこの船とはバイバイだね、そう言うと、るしあの荷物を片付け始めた。るしあは少し後悔する様に、しかし微塵もそれを感じさせずに、自分でやる、と片付けをし始めた。

 

しかし、るしあの荷物は意外に多かった。なんせ家財全てだ。早く渡さないと豹変して襲って来るのでは?そう考え、片付けをしていると、るしあが大切にしている洋服が見つかった。

それに触れようとした瞬間、背筋に悪寒が走り、振り返るとるしあの目は真っ赤を通り越して少し黒くなっていた。

マ「え、あ、御免、触れちゃったかな。あはは。」

 

マリンは直様に其の洋服から離れると、他の物を片付け始めた。るしあの赤黒い目は元の?赤さに戻っていた。

 

 

ボーイスカウトと名乗った者達は既に引越しは完了して居た。言っても大して荷物を持っていた訳でもないので、皆んなあの船の高低差を物ともせず、ジャンプして乗り換えただけなのだが。

 

彼女達の名前はこう言うらしい。

ピンク髮の長身・巨乳・酒豪の大きな鎌を持ったリーダー、森カリオペ。

オレンジ髪のかなりの業物剣を持っていた女性、小鳥遊キアラ。

金髪碧眼の童顔の女性、アメリア・ワトソン。

背から虚空から触手を出し船を漕いでいた童顔の小さな女性、にのまえ伊那尓栖いなにす

渦巻きや竜巻を起こす白髪のサメガキ、がうるぐら。

 

どいつもこいつも才能のある怪物だった。マリンの海賊としての出自が笑われる位の圧倒的な実力は、先の交渉の際にも発揮された程だ。見るからに武器の扱いも天と地程の開きがあるし、可愛さや若さでも劣り、絵を描く趣味でも負ける様なレベルだったり、予言にあった最果ての体躯すらも見える。

 

ただ、気掛かりなのは、そんな怪物達でも、るしあには畏敬の念を覚えていた事だ。マリンには恐れられる理由がてんで分からない。あんなに綺麗で可愛いくて清楚で華奢なのに。

 

がうるぐら「じゃあ待たね〜。」

カ「We don't speak so,unless we will meet again.」

がうるぐら「That's right?But,she is the character on prophecy.」

カ「Oh,that's right.」

「さようなら〜。」

マ「じゃあね〜。」

カ「I will only meet you again.gura,ame,ina,クソ鳥。OK?」

小鳥遊キアラ「Me,too.カリ〜。」

カ「Oh,goddamn.」

ぐ「……………」

カ「What,gura?」

ぐ「Nice to me you.」

返事は無い。まるで船其の物に挨拶をするかの如く、静寂は潮騒に溶けて消えて行った。

 

 

そうして、一度の出逢いを終えたマリン一行は、次なる冒険を求めて大きくなった船で航海をする事になった。

 

ただ、途中まで針路が同じだったのか、次の島まで一緒に行くのと同じだった。向こうは向こうで船を動かし易くなったみたいで、あっという間に追い抜かれてしまった。

 

そうして、次の島に辿り着くと、其処で、思わぬ珍事に遭遇した–––。

 

〜〜

 

マリンが交換した船、大砲も無かったので企画が違うのか、其処んところをかなり無理して海賊船に改造した結果、操舵もかなり手間取ってからに、先方よりかなり遅れた迄はまあまあ良いが、何やら言い争いの状況に発展する程に、海岸沿いの事態は困惑していた。

 

カ「Dissolution.《解散よ。》」

ぐ「I have been looking forward to do so.《望むところよ。》」

カ「In the first place,I have disliked your abnormal ability.《そもそもあんたのその能力が気に食わないのよ。》」

ぐ「I don't wanted this abilitys.《私だってこんな能力欲しく無かったわよ。》」

「So,I want better to surfe forever.《そんなんなら、一生サーフィンしてた方がマシよ。》」

カ「Well,you don't get on my ship.《そう、なら私の船に乗らないで頂戴。》」

ぐ「We are severanced.《絶交よ。》」

 

既に何やら解散の危機…だが、ここで思わぬ事態が向こうからやって来た。

アメリア・ワトソン「It's a happening.Ina changed a monster.」

 

にのまえ伊那尓栖いなにす

「Inaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」

 

其処にあったのは、島の木々を見上げる程の黒い体躯と八本もの凄まじく太い触手が、融合したかと思えば、細くアメンボの様な脚、巨大であるが故に其れが全てを支える浮遊を齎す形と明らかになるが、其の上に細く理想的な足、太ももが露わになり、淫部を重ねず、これまた理想的な腹周りの黒く時折鈍い白さが斜めに縞模様に強調される体格、外殻で、霧の中から現れたる角と翼が融合し、これまた其れが八本揃い、怒髪天に昇るかの様に巨体を浮かせている姿が。正に神話の真体だった

 

マ「え?」

帆と錨を下ろし、これからまさに上陸しようとして居た矢先の事、黒く鈍い爆発が島の山岳の中腹からしたかと思いきや、其の黒は灰色の煙を通って徐々に白の霧に変わって行き、其の巨体を露わにしたる。

 

マ「た、大砲用意!9時の方角に全部揃えろ!」

一味「アイ、アイ!」

 

マリンは船端に手を付く。

「何じゃこれ…」

状況に着いて行けないマリンは思わず心中を吐露する。逃げ探る様に海面の方に助けを求めるも、丹で何とか堪える。

 

アメリア・ワトソン「She opened the Pandora box!」

 

余りの事に一瞬困惑したのか、マリンの服の端を摘み、るしあはこう言った。

る「…マリン、大丈夫?」

るしあの方がしっかりしてる。ただ其の事実だけでマリンは戦えた。

マ「大丈夫。下がってて。」

一度何かを思案する様にるしあは山の中腹から下りて来る怪物の方を見遣ると、素直に指示に従った。

 

にのまえ伊那尓栖いなにす

「Inaaaaaaaa」

 

山から海岸まで聞こえて来る咆哮、とんでも無い。マリンは、今からでも遅く無いと、逃げる準備と、入れる保険を探した。

勿論、そんなのは無い。ただ無差別に木々がなぎ倒されて行く光景に、大砲の照準を先んじて合わせるしか無かった。

 

然して其の悪魔は天使でもあった。八本の角翼は尾と接合、融合し、天使の輪、背徳の大輪を鈍く暗い後光に光臨した。

其の角翼尾は、頭上に大小の天輪を、背中から大きく翼を広げる様に二つの徳輪を、其の間に滑らかな歯車を想わせる小さな天輪と同規模の其れが四つ接続してあった。

其々が色違いになり、超高周波を放ちながら、木々がその体に触れる事なく倒されて行く。

まるで自ら道を開けるかの様に、粉砕され、細かい薪にしかならない森林が哀れだった。

 

音の無い高く燻る様な圧が、怪物が迫る。

 

流石に言い争いを止めて一旦共闘を持ち出す死神とサメガキ。

 

大きな鎌を木々が霞む程、巨大にし、自らも闇色の装束、髑髏の死神の出で立ちになり、巨鎌に回転を掛けぶん投げる死神・カリオペ。

怪物と同じ色合いの竜巻と渦巻きを起こし、木々を根刮ぎ吹き飛ばしながら怪物に迫るサメガキ・がうるぐら。

 

「「Ina!!」」

 

伊那を呼び、ムッと、声が重なった事に顔を合わせては又、知らん振りをする両者。

 

マリンは、ぐらが超高周波を帳消しにし、カリオペが傷を付け怯んでいる今しか無いと、踏んだ。

「撃てーー!!」

 

マリンの指示に従って一味が大砲に火を入れる。

 

ドン ドン ドン ドドン ドン ドドドン ドン ドン ドン ドドン

 

船が大きく傾き、砲弾が宙に舞う。対象の肉体が巨大である為か、全弾、華麗に命中し、外殻に損傷ないし、炭を服に当てたかの様に、すすを付けた。

 

イ「Ina?」

 

「否〜〜〜〜!!」

 

周囲が、輪から、瞬時に光に包まれる。

まるで牛が尾っぽで蝿を払う様に、数多くの光弾が八つの輪から発生し、曲線を描いて大砲とマリンを狙った。

 

マ「拙っ…」

 

着弾の刹那、得体の知れない色取り取りの炎が船をカバーし、護った。小鳥遊キアラ、其の巨大な不死鳥の姿、其の翼の力である。

 

元より大砲頼みのマリンとしては、効かなかったという事実が咄嗟に受け容れられなかった。

(あ…れ?大砲が効いてない?何で?どうして、あんなに細っこい見た目の癖に、どれ程頑丈なんだ。)

顔を上げて直様状況を把握する。

 

しかし、事は神話の規模の争いだった。

 

甲高い音を立て疾駆する巨大な炎の鳥、そして、空いた紫を基調とした箱を持って来るアメリア。

 

死神と神獣は三者三様の風靡を醸し出しながら、SCPNo.0、「始まりにして終わり」、にのまえに迫り、アメリアが箱を持って海岸近くで転けた所で、再び大きく周囲が光に呑まれた。

 

光は全てを包み込み、直後の光弾の規模を太陽の様に報せる。

光が閉じ、島全体と同じだけの大きさの虹色の光弾が、島を、周囲を土の色も木の深緑も関係なくステンドグラスの窓から入る光の様に照らし出す。

光弾は三つに分離すると、三人の女性達に迫った。

 

着弾の刹那、女性達の顔が歪む。虹が三様の形態を全て塗り潰し、其の直後に来た白と黒の巨大な魔弾が諸にカリオペ、キアラ、ぐらに衝突する。

 

轟音と爆音と共に、周囲の木々全てが薙ぎ倒され、島は灰色の沈黙を帯びた。

 

ああこれはもうるしあを連れて泳いで逃げるしか無いな。泳ぎが得意なスタイルでは無いのは、離れ小島の間を泳いでいる時に何度も溺れかかったので分かっているけど。

あの時ももう少し待てば近くの漁師か国の警備の者に助けて貰えて、大切な人の大切な人を殺さなくても良かったのにと、なんて事無かった日に考えては夢に出ては、今日までこの始末。

 

幾らでも手はあったのにと、接客業時代を思い出す。あの国に又戻れたら良いな…そんな気分に浸る日も2日や3日では足り無い。今も同じ考えだ。

 

そうして、こうして過去を振り返る事すら反省して、未来に振り替える用事も無い。

 

そして現今にて–––––、例の真体は、灰色の景色の中、天国に至るかの様な光の筋とプリズムに生きていた。

 

ただ見守って居ただけのマリンにはどうする事も出来無い。

近寄って来る巨体を視野に入れておこうと、一歩引こうとした其の矢先、マリンは気付いてしまった。あの娘に今ある特殊な雰囲気的な圧力は無かった。つまり、何処かで力の源となる何かがあった筈。

マリンは探した。そうすると見つかった。衝撃で気絶しているであろう倒れ伏す金髪の女性の近くに、この世のものとは思いたく無い紫色の箱がある事に。

 

マリンはるしあを置いて一目散に其の箱へ向かった。

 

果たして其処には、内側に一筆書きで呪文が描かれた空の箱があった。

 

マ(何だこの呪文。まるで…あっ、確か書道とかで崩し字があるって高校の頃習ったなぁ…行書体だっけな。)

 

読めるかも知れない…そう思うと、読めて来る気がするマリン。

しかし其れも直ぐに諦めた。全部漢字であったのだ。直ぐに読解するのは無理だった。

其れに、もう既に近付いても何も起こらない空の箱なのだ。

 

そうこうして居る内に、聖なる怪獣が迫る。

 

しかし、意外な事に進路上にある訳でも無く、又、此方の事など気にもとめずに、其のまま島を飛行、飛ぶというより泳ぐと言った方が適しているかも知れないが、これが徐々に島の外に迫り、出、離れて行く。

 

マリンは其の様子を眺めて居た。

 

そして、島の外に出て行き、海上にて空中を泳いで行く其の後ろ姿は、鑑賞に耽っている女性其の物だった。まるで、倒して来た仲間との思い出を振り返るかの様に。

 

 

カ「Wait,Ina,or abuse you on a rap.」

カリオペは重症だった。今船にある医療設備ではとても治療し切れない程に、今も尚痛みの中、夢に魘されている。

キアラは再生する能力があったのかカリオペの看護をして居る。

ぐらも又、大したダメージを受けていないのか、島中を巡って伊那を連れ戻せないか探っていた。

 

伊那は既に水平線と同化して居る。このままだと見失う羽目になる。

 

マリンは其れでも良かった。るしあが居るなら、他の女は別に要らなかった。

 

しかし、このままで良いのだろうかという不安はある。仮にも知り合い、こんなにも良い人なのに、果たして助けない訳にはいかない。

マリンはしばし考えると、箱の中に描かれてある呪文を母国語で良いから読んでみる事にした。

 

  世  知  賢  史  歴

 

  無  性  愚  経  験  

 

  闘  起  説  体  長  

 

  工  夫  肩  剣  尽  

 

  綴  連  道  理  情

 

何と読むのだろうか。

 

マリンは真ん中から訳す事にした。

(ええと…起きて性の愚かさを説く。体を経れば、剣は肩の太い大人の男に工夫させ闘わせ、無と世は賢く歴史を知る。長く尽きる感情を経験して、理は道が連なると綴る…)

正直、何処を読んでも風流に一考の価値はありそうだが、マリンはよりにもよって真ん中からフリックに右回りに読んだ。しかも漢文の読み方とかなり違うが、相当の訳になっている。

るしあが隣に座って顔を近付け、読み始める。

「歴は長きを験し、情を尽く。」

「?どういう事?」

 

マ「え?」

そうも読めるの?と言いたげなマリン。だが、直ぐに慣れる。

「擬人法だね。歴史なんて情がなくなる様に感じられる程長いものだよっていう感じかな。」

 

る「成程。ありがとうマリン。」

こんな時に二人してデート気分に浸る。

 

そんな折。

カリオペ

"uum…"

「はっ!」

カリオペが起きた。

"Is where Ina?"

小鳥遊キアラ

"Ina have gone over sea."

状況を説明するキアラ。

カリオペ

"Orz...I follow Ina,soon."

キアラ

"No,Kari.You should rest."

カリオペ

"No.I must follow Ina by myself.《一人で行くわ。》"

"I involve them,《巻き込んでしまうのよ。》when I release my ability《私が力を解放したら。》."

キアラ

"You should be longer."

カリオペ

"No..ouchi!"

どうやらどうにかする秘訣がある様だが、傷が思ったより広範囲に及んでいるのか、体力の回復が進んでいない。

カリオペ

"Kiara,you must send me."

キアラ

"No,Kari!"

カリオペ

"We go."

どうしても今直ぐ行かなければならないのだと、立ち上がるカリオペ。

キアラ

"Do we go,no matter what?"

カリオペ

"Yes."

 

 

カリオペには箱の中の呪文を教えた。

呪文が伊那を止める方法だなんて皮肉な話ね、ってカリオペは言っていたけれど、一体どういう意味だろう。

 

 

pyiyooon

 

不死鳥が死神を乗せて空を疾駆する。

 

 

伊那まで数km。水平線を土俵に、キアラはカリオペを乗せて空を疾走する。

 

キアラ

"Kari.what is your ability."

 

カリオペ

"Everything I speak absolutely kills everyone."

 

 

伊那まで数百m。其の背中の光輪が色彩豊かに海を照らし出している。

 

光輪がセフィロトの様に移動して行く。傾斜角とエネルギーから見て、どうやらこのままだと大気圏外に出てしまうみたいだ。

 

カリオペ

"Ok,I release my ability."

 

森カリオペ

"NOWRAPPINGREAPER"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詠唱だった。

死神としての力が、死の詠唱となって、生きたる内の鎮魂歌となって、真に巨大な怪物を朽ち果てさせる。

光輪が止まり、超音波が高周波に聞こえる様になった辺り、其のCDディスクの様な色彩が失われ白く朽ち果てて、巨体は歩みを止め、其の衝撃で外殻から脆く崩れ落ちて行く。

 

始まりが終わっていく。

 

当然、このレベルの詠唱に当たるのは、キアラも例外では無く、其の不死鳥としての焔は小さく魂の様に縮こまって行く。

そしてカリオペは高高度から落下し、海面との激突に向かって一直線に突き進む。

 

終わりが始まって行く。

 

そうして内部から伊那は露出した。朽ち果てて行く白と黒の外殻、其の喉仏から。

 

破壊が崩壊を呼んで行く海上、壊れ行く神性が、崩れ行く神秘が、伊那を空中に放り出し、空中で美しく霧散して行く魔力の塊が、まるで息をするかの様に、一呼吸置くと、積乱雲と見間違う大きなきのこ雲になってしまう。

 

海面擦れ擦れに、復活する火の鳥がカリオペを救いに行くのに対し、伊那には、災厄の風が渦を巻いて留まる。其の風と渦は、遠く水平線上から白髪と金髪を運んでいた。

 

そう。全ての災厄を兼ね備えたボーイスカウトである彼女等は、超弦理論の五輪の様に、常に固まって居ないと、全ての者に災厄を与えてしまうのだ。

 

彼女達は、強靭だった。何処までも。誰よりも。

 

 

だからこそ、神様は用意した。五つの真言を。

 

一つ

震え、奮え、振るえ。最果てまで、何処までも管理せよ。其の鎌は振るわじ。ウえたる民をつくらば、奮うな。其の死神に震わせられるな。ゆめ忘るるな。フルうのは、汝が抱きし夢なのだと。

 

一つ

日に陰りなば、其は灯が合う輩也。汝の現今と黄昏の只今が交わせば、世は輝いて、闇を汝に捉え、輝きを見たさんとする。光はくすんで、闇は光の奴隷となり、輝きはくすみと遭う。

 

一つ

思想は行動に至る。行動は変革を齎す。変革は終局を受け入れる。創世は環境を産み、環境は集約を育む。環境は行動と変革の間にあり、滅亡は予言され、発明は予見される。

 

一つ

天に三津夜の降る如し。層雲は遥か地上まで降りて来て、全ての営利を暗闇に落とす。其の中りを付け、内にて潜む最果ての滞空。最果ての名を冠するは仏成らざれ。

 

一つ(パンドラの箱に置かれてあった呪禁にて)

いつまでも。いつまでも。お忘れなき様に。今日この日、世界の終焉に巡り会えた事に。しかして開闢は成され、全ての魂の死出の安堵を彼方へと進ませよ。

 

其の風は其の焔と混じり合い、炎熱地獄を彷彿とさせる炎の島を黄昏にゆらゆらと映し出していた。

 

其れを背景に、金髪は桃色の髪の死神と再会した。

金の髪と桃の髪にはこう言い伝えがある。

人に食われるのを良しとするのが金。人を食らうのが桃。

今、金髪は災厄に呑まれ、死神は根源を一瞬とは言え超越した。

 

其処に到るのが人なのか、人が全ての災いの正体なのか。

 

神のみぞ知る其の全貌は、まるで人の感情の様に移ろい行くのだとしたら、やはり、世界は廻り巡る。

 

〜〜

 

彼女達は其のままお互いの力を合わせる事なく、喧嘩しながら其の島で別れた。

 

マリン達も其の島に長居する事は無く、破片となった木材を薪にして特殊な炎色反応が楽しめるキャンプファイアーを楽しむ位で、其の島を後にした。

 

サメの群れととある業者に出逢ったのは其れからだった。

 

〜〜

 

鷹嶺ルイ「ええ、良いですよ。取り引きを受け賜りましょう。」

「ただ、物々交換、こちらからの商品と致しましては、悪魔が作ったとされる世にも珍しい蛇入りの奇酒!これですね、何と年に一度しか出ないと言われる毒入りの蛇から取れた血清瀑上がりの一品!お酒は最良の薬とも言いますけど、これは特に其の効能が高いのです。今なら三割引、いえ、さめざめに鱶鰭、アラの部分ですね。これ、全部引き取りますので、其れで宜しければ。」

(と言っても私が田舎の観光で買って来たマムシ入りのお酒何ですけどね。)

マ「え?良いの〜こんな雑破なものしか無いけど。」

(フカヒレか〜。確かにサメから取れるって聞いた事はあるけど、まともなシェフは居るのか分からないし…ここは貰っておくか。何か珍しそうだし、るしあも喜ぶかな〜。)

鷹嶺ルイ「ええ、其れで、是非とも。」

「有難うございます!」

(やった。これで街では珍しい大きめのフカヒレが大量に仕入れられた。このまま方々に高値で売り捌いて、後はがっぽり稼いだお金で高みの見物と行きますか。ルンルンだなぁ…鷹嶺ルイだけに。)ブフッ

マ「?」

ル「あ、どうもこの度は。あ、そうですね。こちらの鱶鰭、じゃ無かった、この木の端材何か譲って貰えないでしょうか。」

何やら次の取引について考えているみたいで少々混乱しているのが分かる。其の隙を狙うつもりは無いが、軽く漬け込んでしまおう。

マ「え〜。別に良いけど〜。ただとは言わないよ。この辺の地図、出来れば大きめの奴ある?」

ル「あ〜其れでしたら、逆叉、ちょっとこの辺の地図、大きめの奴で、コピー取って来てくんない?あ、風間、今日はもうストーブの薪作んなくていいよ。ああ、この端材神秘があって良い?其れなら交渉材料になるかも…あ、少々お待ち下さい。」

色々と仲間が出て来た。

スンッ 臭っt!!

見るからに侍の格好をした風流な女性、風間と言った女性と、この臭いは、え?何かシャチの被り物してるんですけど、アレも怪異の一種なのか。風呂…この辺にあるのか分からないけど、ヤシの実に閂で穴を開けて作って雨水溜めるあのシャワー以外マリン達、浴びたこと無いけど、アレはいい匂いがしたなぁ…はっ。若しや入ってないお方が来ちゃったのか。

逆叉クロエ「地図持って来たよ〜。」

マ「ん〜?どれどれ?」

(成る程、この近くに丁度停められそうな海岸があるなぁ…あ、これ、街なんだ。寄り道は後にしておくか。へ〜。あ、この兎田建設っての聞いたことある。確か、成人式の時にぺこーらが言ってたな。何か海外に会社持ったって。ちょっくら行ってみるか。)

マリンは息を止めて地図を凝視した。

ル「あ〜。お客様〜。商品には満足頂けましたか。端材の方は持って行って宜しいでしょうか。」

マリンは地図を見ながら答える。

マ「ああ、沢山あるから気を付けてね。」

 

そうして当時、マリン一行は先ず、兎田建設を目指す事になったのだが、如何にも今回の件が気掛かりなので、サメが沢山取れる所と往復するつもりもあった。

 

〜〜

 

ぺ「そんで、遠路はるばる来てくれたぺこか。この辺は島も多いから海賊多かった筈なんだけど。」

マ「ああ、其れはもう粗方片付けたよ。鬱陶しい輩しかいなくてさ〜。全員冥土送りにしてやったよ。」

ぺ「凄いぺこ。見違えたぺこね〜。彼奴らには丁度困ってたんだぺこ。でも危険な事はあまりするんじゃ無いぺこよ。あ、其処のは?」

マ「ああ、るしあって言うんだ。私の大切なパートナー。」

る「パートナーだなんて、照れるなぁ。」

「麗羽るしあです。マリンと一緒に旅をしています。」

 

「其れに…マリンは私を守ってくれるのです。」

 

〜〜〜

 

その後、何時までも仲良く海賊をやっていられると思い込んでいたマリン一行は、とある戦いを終えた後、白い浜辺に錨を留めたのだった。

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ホロらいふ〜まとめ版〜 @h1229ryo158

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