ホロらいふ〜まとめ版〜

@h1229ryo158

第四の災厄

 岸辺に、船があった。

 

 大きめの船があった。

 

 立ち入り禁止区域の中でイチャついてる二人を見ると、白を基調とした装備の銀髪の騎士・白銀ノエルは、注意をすべく声を掛けた––––

 

 月明かりも無い宵闇の春。海岸沿いに停められた一つの大きな船から離れた所にほんの少しの灯りが見える。

 

 ザッ ザクッ

 

 白い砂浜を棍棒メイスを腰から下げて歩いているのは、この海岸近くの街、城下町の隣町とでも言うべき現代風のインテリアが窓越しに見える店もチラホラある街中に、異質なローファンタジックな宿屋や飲み屋を何軒も抱える現代風の騎士団、その団長たる白銀ノエルその人であった。

 

 船、其の灯りの辺りからは二人の女性の声が聞こえる。

 

 マリン船長「ねぇ〜。るしあ〜。ちょっと位良いじゃーん。」

 

 片方は少し焦りがみえる昭和風の声に、イチャつく際に変わる高音が特徴だ。

 

 麗羽るしあ「駄目だよマリン〜。もうちょっと離れて。」

 

 もう片方は、元々の声質が天・使・の・様・に・、高く、それでいて落ち着いている。

 

 ノエルは其の二人の声を聞きながら、近づいて行った。

 

 

 

 ノエルは挨拶代わりにと注意勧告した。

 

 白銀ノエル「こら。こんな所で何やってるの。」

「ここは立ち入り禁止だよ。直ぐに出て行って。」

 

 マリン船長「なんだとコラ!ウチの船に許可も無しに勝手に乗って来た挙句、挨拶も無くいきなり何様だ。」

「こちとら海賊だぞ。舐めんな。」

 

 白銀ノエル「初対面で暴れられるのは嫌だけど、どうにもね。こっちの仕事の邪魔しないんなら、考えてやってもいいぞ。」

「それとも、やろうってのかい。」

「それならこちらにも君達を連行する責務があるんでね。」

 

 シュリン

 

 女海賊・マリンが腰に挿してあったチャッカルを抜く。

 

 ジャキン

 

 それを見て、白銀騎士団の団長も同じく腰にぶら下げてあった棍棒メイスを取り出した。

 

 両者、得物を正中に構えては、紅が基調とされる女海賊・マリンが、先に仕掛けた。

 

 マリン「えいやぁっ」

 

 先ずは上段。右上から左下に掛けての袈裟斬りに、

「とぅっ」

 

 大きく水平に斬り結ぶ。

「ほいっ」

 

 三太刀目に、右下から小手を狙う動き。

 

 団長はバックステップで回避しながら、三太刀目に狙いを合わせて上から棍棒メイスで叩く。

 

 ギャリイィン

 

 マリンの太刀筋が団長の先端柔く剛に強い棍棒メイスの柄を捉えた。

 

 大きく接近する両者の顔と肉体。

 

 若干マリンが押され気味になっている。

 

 するとマリンが身を翻して、大きく水平に回し胴を取る。

「ちぇすとぉっ」

 

 団長は其れを棍棒メイスでガードすると、マリンの大きく出た手と足に沿いながら、徐々にマリンに近付いて来る。

 

 団長の棍棒がマリンの柄に触れた。マリンは右手で団長の身体を使って力を抜くと、揺さぶられ離れた団長に渾身の力で低く胴を放つ。防具で弾かれたが、団長に五太刀目が入った。

 

 新月の夜にシルエットが二つ。

 

 すると見回りに来た何処にでもいるが時偶に非凡な少女・ときのそらが遠くから、

「ああっ」

 

 と声を上げては、二人の間にふわりと飛んで、仲裁に入った。

 

「駄目だよ。危ないことしちゃ!!」

 

 しかし二人とも矛を収める気はない。

 

 二人は睨み合いながら、年上と思しきときのそらの忠告を聞いていた。

 

 しかし、業を煮やしたのか、マリンは、これ又、腰に挿してあったピストルを取り出した。

 

 団長は咄嗟に壁際迄、距離を取り、弾が当たらない様にした。

 

 すると、ときのそらは意を決した様に時空を歪ませ其処から立ち引くと、数刻の後、白銀団長の愛人のダークエルフ・不知火フレアを連れて来て、事態の打開を図ってしまった。

 

 来たフレアは早速、船長に向かって矢を引き絞っては放った。マリンは其れを上手く躱すと、団長に向かってピストルを撃ち放った。団長は向かって銃口に棍棒を夢中に振り回すと、弾を弾いて行く。

 

 するとフレアは二本、三本と矢を番え、マリンに向けて放った。

 

 流石に其れを躱し切れず、マリンは肩口に矢を受けてしまった。

 

 ノエルは隙を見て近付くと、大きくスイングをしてマリンをメイスで吹っ飛ばした。

 

 最年長のときのそらがそれ以上の追撃はしない様に忠告をして、事態は収束した。

 

 るしあ「マリン〜」

 

 るしあが近付く。

 

 マリンが肩から血を流しているのを知ると、咄嗟に、船室から包帯と化膿止めを持って来てマリンの肩口をグルグル巻きにした。

 

 マリンとるしあは船室に入り込むと、一連の音で驚いて出て来た一味に声を掛け、白と褐色、青色の青女達を囲う様に指示を出した。

「アイアイ!包囲っすね。任してください。」

 

 一味に囲われてしまったノエルとフレアは背中越しに距離を取りながら、中央のときのそらを護っていた。

 

 バン チュン バンバン チュン キンッ

 

 しかし、

 

 ノエル「今だっ!!!」

「とおぅりゃぁぁぁーー!!!」

 

 団長が、屈強そうな一味の副棟梁に向けて、棍棒メイスを思いっきり振るった。

 

 ガンッ ドカッ バキッ

 

 三連撃。腹と腿と頭に鉄製の打撃を受けて倒れる屈強な船夫。

 

 ノ「一旦退こう。フレア。」

 

 その後、一旦、引き返したノエルは同じく大砲を持って行く様に騎士団員に指示を出して、戦争をおっぱじめた。

 

 其の戦争は一夜明けて、マリンの船を撤退させる事に成功した。

 

 マリン一向が、船長の怪我を治す為に、其の海岸を後にしたのだ。

 

 〜〜

 

 道すがら、陸地に沿って浅瀬をゆっくりと航行していると、街外れに割と大きめの医院を見つけたマリン一味は、其の医療の加護を受ける事にした。

 

 待合室では、ボロボロになった悪魔・常闇トワが項垂れながら、其の隣に居て終始謝っている天使(ガタイの良いショタでは無いただの握力自慢人間)・天音かなたと何やかんやあった雰囲気である。

 

 常闇トワ「まさか本当に、悪魔のツノが生えて来て、其れを思いっきり折られたり引っこ抜かれたりするとは思わないじゃん。」

 

 天音かなた「だから御免ってば〜。」

 

 癒月ちょこ「次の方ー。」

 

 マリン「はい。」

「先日、ちょっと、エルフに矢を射かけられまして、肩に傷が…」

 

 癒月ちょこ「傷の方は然程深くはないから、腕の方は元に戻りますわよ。ただ、三週間は安静にして置いて下さい。」

 

 と言うと、傷口に軟膏を施し、縫ってくれた。

「何されてたんですか。」

 

 るしあ「私を守っててくれて…」

 

 ちょこ「あらやだ。」

「其れなら特別に代金は取らないわ。はいこれ、外の薬局で買って帰ってね。それと、何度も言うようで悪いけど、三週間は安・静・ですよ。」

 

 と念押しと、処方される薬の書かれた紙を渡された。

 

 マリンとるしあは薬局で薬を買うと、船に帰って再び、停留所を探した。

 

 

 〜〜〜〜

 

 マリン「–––って云う訳でさ、其の二人に返り討ちにされたんだよね〜。」

 

 ぺこーら「成る程ぺこ。」

 

 るしあ「でもマリンも凄く頑張ってたよ〜」

 

 カチャ カチャ

 

 運ばれて来る取り取りにカッティングされた人参料理と、遠方の大陸で貿易で手に入った香辛料で出来た郷土料理に舌鼓を打ちながら、宝鐘マリンは、子供時代の親友であり、特別に近くの河口に船を留めてもらった兎のプリンセス・ぺこーらと話を続けた。

「で、最終的にどうなったの」

 

 マ「最後は騎士団員が持って来た大砲とウチの大砲の撃ち合いになってさ、船はボロボロ。向こうも向こうでかなり、損害を出したみたいだけど、あの岸辺がボコボコになっただけだと思うし…何だかな〜」

「最近、鮫・運・は良かったんだけど、どうにも人相手に調子が悪くなると言いますか。」

 

 ぺこーら「其れは大変だったぺこね。」

「でも喧嘩は良くないぺこ。」

 

 彼女達が集まるといつもぺこーらは取り仕切れるのだ。

 

 ただ、世界はそう単純では無かった。

 

 問題を話し始めたぺこーら。

「最近さ〜、ウサ建の社員のムーナって娘が何者かに狙われていて、森の方から怪しげな視線がするとか何とかでさ。」

「森の方に行ってみて確かめて欲しいぺこなんだよ。」

 

 マリン「お安い御用だ。その位なら何とかしてやる。」

 

 るしあ「そうだね。ぺこーらのためにも頑張らないと。」

 

 ぺこーら「本当ぺこか!?ありがとうぺこ〜。」

 

 こうしてマリン達は、問題となる森の奥に潜む珍獣・猛獣達のお噺について、関わることになった。しかし、相手は歴戦の猛者。一筋縄で行く筈もなかったのである。

 

 〜

 

 S「ターゲット補足。」

 

 お「どうする。凸撃しちゃおっか。このまま。」

 

 桃「そうね。」

 

 ラ「もうちょっと待った方が良いんじゃない?今直ぐにとは言えない人達も居るし…」

 

 森、奥から照準の付いたアサルトライフル越しにムーナと呼ばれた少女を捉えるSSRBと、拡大スコープでテレビ画面に釘付けになるが如しの愉快な仲間達–珍獣・おまるん、妖怪・桃鈴ねね、魔法使い・雪花ラミィ、このパーティに関わったら最後、命は無いと後世に噂されるだけの存在。

 

 この森の謎は深まるばかり…ただ、少しづつだが、世界は変わり始めていた。

 

 〜

 

 ヒュー ガサガサガサ

 

 森の木々が静かに揺れて、草木が音を立てて道を開けて行く。

 

 マ「よいしょっと」

 

 軽々と裏山まで辿り着くと、其処からは街の姿が展望できた。

 

 マリンの船からウサ建の事務所兼作業場、農地に隣接する森。其の奥にある巨大なロボットと離陸管制塔。

 

 その更に奥の方から、怪しげな轟と雷をもって迫る天災––––

 

 マ「良い風だね〜。」

 

 る「うん。とっても良い風だね。」

 

 吹き抜ける風は少しだけ、いつも取りの潮風の匂いがした。

 

 〜同時刻〜

 

 とある街では一人の青女が潮の匂いにつられて海岸まで出て来ていた。先日、ここで銃声と戦争があったとの報告が入ったばかりの海岸で、一人っきりで海の向こうを睨んでいた。

 

 桐生ココ「へぇ…来るのか。」

 

 そんな街の長を除いて、世界は変わり行くのだ。ムーナと呼ばれたウサ建で働く一人の少女と、其処に訪れた二人の少女と共に。世界は、否応無く変わり行くのだ。

 

 〜〜

 

 森の中をガサゴソと探索して回る二人。

 

 其処にいきなりだが、珍獣・おまるんがターザンして現れた。

 

 おまるん「おー、お前ら、よくそんな装備で森に登って来れたもんだな〜。虫に刺されなかっただけでも幸運に思えよ〜。」

 

 マリ&るし「誰!」

 

 おま「私はしがない野生児さ。其れよりそこの緑の髪の奴、ちょっと疲れてるんじゃ無いかな。こっち来て休むと良い。」

 

 そう言うとおまるんは指を鳴らし、手品の様に数多くの猿をるしあの周りに侍らせた。

 

 ウキキーキー

 

 幾らか集った猿は、おまるんの指示でるしあを拐いに来た。

 

 マリンが剣を抜いて応戦する。

 

 その時、一発の銃声が、銃弾がマリンの額に、一瞬の後に直撃した。

 

 マ「う…~」

 

 幸い、額は固いため安い銃弾を弾き返したが、凄腕だった。距離、およそ130メートル前方の草叢。アサルトライフルで気絶させるとは…これ如何に。

 

 海岸での諍いから来た争いと言い、敵の戦力が測れない内に剣を抜いたマリンの負けだった。

 

 る「マリン!」

「大丈夫!?」

 

 仰向けになった倒れるマリンと連れ去られるるしあ。二人の旅はここで終わってしまうのかーー。

 

 〜〜

 

 指先の冷えを観測し、目が覚めるとそこは洞窟であった。

 

 マ「ううん…うっ。」

 

 激しい頭痛に襲われ、頭を抱えるマリン船長。

 

 マ「はっ」

「「るしあーー」」

 

 洞窟内に響き渡る声。しかし、返事は返って来なかった。

(兎に角、ここから出ないと。)

 

 ヨタヨタと歩き始めては転び掛けるマリン。

 

 なんのそのと、マリンは微かな光に向かって歩き始めた。

 

 ある程度近付き、暗闇にも目が慣れると、出口からよく知った顔が飛び出して来た。

 

 ぺ「「おーいマリン〜。大丈夫ぺこか〜。」」

「そこは右下の岩から迂回すると早いぺこよ。」

 

 マ「ありがとう。」

 

 ぺ「手を貸さなくても大丈夫っぽいぺこね。」

 

 マ「よいしょっと」

 

 ぺこーらの下まで辿り着いたマリン船長の顔色は悪かった。

 

 マ「どうしてここに居るのが分かったの。」

 

 ぺ「この前もその前も盗まれた人参はここに置いてあったぺこから。もしやと思って。」

 

 マ「どういう…はっ」

「まさかもう全部盗まれちゃったって事!?オーマイガー!」

 

 ぺ「違うぺこよ。」

「兎に角、先ずはるーちゃんを探すのが先決なんだぺこよ。」

 

 マ「そ、そうだ。」

「「「るしあ〜〜〜」」」

 

 再び洞窟内に木霊するマリンの声は、無情にも行き場が無かった。

 

 〜

 

 洞窟は裏山の中腹辺りにあった。其処から少し行くと、彼女達の集会場所に辿り着くのだが、二人とも知る由はなく……その集会場所で、るしあは猿達に囲まれて寝ていたのだが、当然これも知る事はなかった。

 

 るしあを探していると、先程見た猿達の気配が感じられないことに気が付いた。

 

 するとマリンは咄嗟に後ろを振り向き、

「居る…」

 

 駆け出した。

 

 ガイドの無い初めての未開の山の中では踏破困難、遭難が最も危惧されることであり、常に水流や大気の水分を肌感覚で良いからチェックして置きたい所だ。その能力はマリンにもあった。海賊業をやっていると潮風に巻かれて時折、淡水の匂いに気が付く。今回もそうだった。

 

 近くから熱の匂いがした。

 

 無論、るしあの其れでは無い。だが、マリンには予感があった。

 

 果たして、その予感は当たっていた。

 

 見ると、猿の群れが地面から湧き出た湯の源泉に入り浸って居た。

 

 マ「おいこら!猿共!るしあをどこやった!」

 

 聞いた所で何も得られるものは無いだろうに、マリンはしかして叫んだ。

「るしあー。」

 

「くそっ」

 

 特に返事もなく、清閑とする温泉。

 

 すると、これ又、奥の方からぴょこんとよく知った耳が。

 

 気が付かない内に追い越されてしまった様だ。

「マリ〜ン、こっち来るぺこよ。早く!」

 

 ぺこーらが憔悴気味にマリンを急かす。

 

 すると温泉からも街がよく見えた。絶景だった。

 

 だがよく見ると兎田建設の方から煙火が見えた。更によく見ると旗が燃やされている事に気が付いた。戦争だった。

 

 そうすると背後から一人の女性が近付いてはこう言った。

 

 ラミィ「早く行った方が良いよ。」

 

 マ「分かってらい!」

「ありがとう。見知らぬ人」

 

 ラ「どういたしましてと言いたい所だけど、仕方が無いからだね。あっ。」

 マリンとぺこーらが街の方に戻って直ぐにときのそらが時空を越えてやって来た。

 

 ラ「あの…」

 

 ときのそら「大体の事情は察したから、大丈夫。」

 

 ときのそらは気を取り直すと、其処から様子を伺った。

 

 〜

 

 ぺこランドはSSRBによって襲撃を受けた後だった。満月だった。

 

 るしあも居ない。はっと気が付くと、マリンの船の上におまるんが登っていた。

 

 お「中々快適な家だ。私が引き取って置いても良いだろう。」

 

 そしてその船の上にムーナが居た。

 

 ム「ココはダイジなお客様の持ち物デス。早く下りなさい。猿!」

 

 ムキャーと威嚇するおまるんと怒っているムーナ。

 

 いがみ合う両者にマリンはこう言った。

 

 マ「るしあを何処やった!」

 

 お「ん?近くに居なかったっけ。」

 

 S「まあまあ、そんな事より、今日は人質も沢山手に入った事だし、焼肉パーティでも開こうじゃ無いの。」

 

 ぺ「焼肉!?」

「ぺこーら達を食べるつもりぺこね!」

 

 ムーナ「させませン!!」

 

 S「確かに、わためぇをこっそり調理しようとはしていたけど…」

 

 わためぇ「んー。んー。」

 

 口はガムテープ、手足を縄で縛られた羊飼いが連れて来られた。

 

 ときのそら「大丈夫!?」

 

 直様に縄を振り解いたのは、ときのそら。時空の歪みは、雪花ラミィも連れて来た。

 

 わためぇ「ありがとう。このご恩は一生忘れません。」

 

 羊飼いと雪の魔法使いが仲間に加わった。

 

 S「おのれ、よくもウチ達の非常食とマドンナを…」

 

 マ「そんな事よりるしあは無事なんだろうな!?」

 

 桃鈴ねね「無事だよ。」

「ほら」

「温泉の方にも行ったんだね。臭いで分かるよ。でも残念。逆方向でした〜〜。」

 

 るしあは猿達を伴いながら出て来た。

 

 る「お〜い。マリン〜。」

 

 マ「るしあ!?」

 

 る「さっき迄お猿さん達と一緒に寝たりおしゃべりしていたんだけどね。船に乗せてくれるなら仲間になっても良いって。」

 

 マ「本当!?」

 

 こうしてお猿さん達が仲間に加わった。

 

 お「くそっ。これ以上仲間を取られて堪るか。」

 

 S「停戦協定だ。」

 

 ぺ「やったペコ!」

 

 こうしてぺこランドは焼け野原になりながらも何とか事態を収束させる事ができました。めでたしめでたし。

 

 〜〜〜

 

 とあるお城での出来事。

 

 ルーナ姫「そろそろこのお城にも飽きて来たな〜。」

「何か楽しい事無いかな〜。」

 

 ルーナ姫はいつも通りの日常を過ごしている様ですが、少々退屈が込んできたみたいです。

 

 ルーナ姫は探しました。暇潰し、ゲーム、旅行、遊園地。そうだ。噂に聞いて居たぺこランドに行ってみようと。

 

 〜ぺこランド〜

 

 さくらみこ「何だこの村、しけてんにぇ〜。」

 ぺこーら「やんのかぁ!?」

 さくらみこ「やんのかぁ!?」

 ぺこ&みこ「「ぼこぼこにしてやるぞ〜。」」

 そんな最高なeverydayが過ぎ去る中、ルーナ姫はぺこランドに到着しました。

 

 ル「ここか〜思ったよりも寂しい場所だな〜。」

 

 マ「ああん!?余所モンが、何生意気にウチのシマ語ってんだ!」

 

 ルーナ姫「何なのら!?この海賊!lueknight助けて!」

 

 マ「ああん!?何男手に頼っとんじゃ!シャンとしろシャンと。」

 

 シャン

 

 ルーナイト「お呼びでしょうか。姫様。」

 

 ルーナ姫「こいつを摘み出せ。」

 

 マ「調子乗ってんじゃねえぞコラ!海賊の脅威ってのを思い知らせてやらにゃならんひよっ子がぁ!!!」

 

 こうしてルーナ姫は、愉快なお友達を一人、手に入れました。

 

 しかし、

「姫様、大変です。お城の方から火事です。」

 

 ル「何。早く城に戻るのら!」

「またね。マ・リ・ン・船・長・。」

 

 マ「何処で私の名前を…」

 

 こうしてルーナ姫は短い休息を確かめました。

 

 そして、マリン一味は奇しくも、ルーナ姫の後を辿る事になるのです。

 

 〜〜

 

 星街すいせい「ヤッホー」

 

 突如として青髪の痩身者に気軽なノリの声を掛けられた。

「彗星のごとくやって来た星街すいせいです。」

「すいちゃんは〜、今日も可愛い〜。」

 

 という訳で、ここでバチコリとポージングを決めていくゥ〜。

 

 本来ならば誰しもが唖然とする中で、マリン船長だけはるしあと同じ匂いに気が付く。

 

 星街すいせい「ここからは私の占い次第で〜す。」

 

 とまあ、こんな感じで初対面なのに離してくれない訳だが、

「ジャジャーン。てれりれりれれ〜てれりれりれれ〜れれ〜れり〜れり〜れり〜れりご〜」

 

 自分風にアレンジしたお馴染みの曲を鼻歌混じりに演奏して行く星街すいせいさん。

天球が描かれた占いの玉?が注目を集めている。

「何と快・晴・です。お二人の仲は最高に素晴らしい。」

 

 と占いの結果を発表すると、

「それじゃあまたね〜」

 

 帰って行った。

 

 〜隣街〜

 

 占い師・星街すいせいが住むその街は、城下町と比べると些か不安の残る大きさだったが、華やかで快適だった。

 

 城下町とは道路でつながっており、今風の隣街と城下町との間のレトロな建物が残る幹線道路、そして歴史を思わせるお城と宿屋が立ってある街があった。

 

 どちらも華厳だが、主に肉食系女子はその街から離れたところにある山と森と野原と海に集まっていた。だからこそ、その様な声が聞こえる筈が無かった。

 

 白神フブキ「えへへ〜食べちゃうぞ〜」

 

 わためぇ「ぎゃー!!」←

 

 そんな事は尻目にと、マリン達は大きな川に船を乗せてゆったりと一味と一緒に漕いで行く。

 

 白神フブキ「えいっ。(かぷっ)」

 

 ヤゴー「待ち給え。」

「礼を仕損じる。白神フブキ。汝を大空の案件として取り扱わせて貰う。」

「既に4名程手配済みだ。逃げられると思わないで欲しい。」

 

 大神ミオ「いきなり!?」

 

 白神神社に住んでいると噂されて来た白神フブキが、羊飼い・わためぇを襲っている、と思いきや、魔王姿の逸般人・谷郷元昭が白神フブキの目の前に立ち塞がった。

 

 谷郷元昭…通称ヤゴー。大空建設の社長が名付けた事で有名な模範的な魔王である。

 

 白「ヤゴー。何を持って先達と後塵の違いを見間違うか。」

 

 ヤゴー「今日で汝は終わりだ。今すぐにわためぇを離しなさい。」

 

 白「それが最後の台詞にならない事を祈るね。」

 

 わ「はひっはひっ…はふぅっ……」

 

 白「じゃあ、行くね。」

 

 刀剣一線、魔王ヤゴーに向けて無窮の蓮撃!

 

 魔王は手に魔力を乗せ、撃ち放つと、元国王フブキングの蓮撃を回避して行く。刹那、大神ミオの変身が開く。ゴジしゃ…小さなゴジラ化し、闇の放射能・龍属性でできてしまった隣人・大神ミオは魔王魔王の魔力を喰らい尽くそうとしては、放射能熱戦に変え、魔王・やゴーの体を焼いた!!……かと思いきや、全身に施された刻印と肩から下げている魔力で編まれた細いマフラーに依って、完全な迄に無力化……!!無傷!圧倒的生還!!!

 

 白「助太刀無用。」

 

 ミームクイーン・白神のフブキングは物理的な技量のみで渡り合っているが、こちらにも秘策はある。だが、それは今回はお預けの様だ。どうやらわためぇが琴を取り出して、演じるのだ。

 

 わ「戯曲・愉快な仲間達。お聞き下さい。」

 

 ポロロン ポロ ポロン ポロン ポロ–ン ポロン ポロロン ポロ ………

 

 魔王「むっ。これは。」

 

 白「アレ?何だか、戦う気が薄れて来たぞ…ふわ〜ぁ。じゅるり…」

 

 自前の羊達から収穫した素材で形作られた堅琴の音色は、戦う者全ての力を削いだが、肉食本能迄は抑え込めなかった模様だ。

 

 白「えへへ〜食べちゃうぞ。食べちゃうぞ〜。」

 

 魔王「待ちなさい!」

 

 あのフブキングがわためぇに襲い掛かるその瞬間、ときのそらが現れた。

 

 すると、ときのそらは、咄嗟に止めようとしていた魔王ヤゴーの魔弾を一身に受けてしまった!!!

 

 そら「く…はっ……」

 

 白「そらちゃん!!」

「くっ…私が悪かった。謝るから、ヤゴーは離れてて!!!!!」

 

 ヤゴー「えっあっ。済みません…」

 

 白「ごめんなさい。そらちゃん!私が身勝手にわためぇの羊毛を…」

 

 わためぇは羅生門だった。

 

 そんな快晴の折、夏色まつりは肩を落としながら坂をゆっくりと登って来た。

「あっちーだりー…」

 

 わ「はっ!またしても女子おなごが。」

 

 大神ミオ「わ〜まつり、来てくれたんだね。」

 

 夏色まつり「ン?何事?」

 

 大神ミオ「実はかくかくしかじかで」

 

 夏色まつり「何!許せん!魔王処すべし!!!」

 

 ある晴れた朝日は、最後まで、わためぇの羊毛を脱がす事は無かっただろうと、今になってみれば付け加える事はできる。

「ヨーソロ〜」

 

 猿と一味と羊皮紙(貿易で手に入れた)と、そしてるしあ。

 

 マリンの旅はまだまだ続くのだろうと。

 

 差し当たってフブキングやヤゴーとはお別れの程を。

 

 遠くから、希望が無いからと、大神ミオと夏色まつりも手を振ってくれて居た。

 

 その後、ヤゴーは全界隈から大バッシングを受け、魔王が統括する案件の6割を表社会、2割を裏社会に明け渡す事になり、連日取り沙汰されたが、街を歩く時もマスクとサングラスが必要になる訳では無かった。

 

 〜〜〜

 

 城下町に一つの巨大な組織があった。桐生組。街の実権を握る生殺与奪の専門家。

 

 そんな彼等は桐生組たる証として腕にドラゴンーパンプキンドラゴンの刺青がしてある。

 

 その刺青がチラホラと街の中に。見受けられる。城に集まっている様だ。

 

 ルーナ姫が急いで城に戻ってみると城は何者かのブレス攻撃を受けた後だとわかる様に焼けていた。

 

 ルーナ姫が居なくなって数日後の事。神秘が薄れた城に一頭のパンプキンドラゴンが頭、桐生ココが出現したとのことである。

 

 ル「まずいな。魔術防壁の方を強化しなくては駄目か。」

「…手配して欲しい場所があるのら。」

 

 ナイト1「何処へなりとも」

 

 ナ2「はっ。何卒申し付けてください。」

 

 そのまま荷馬車を進ませる姫様一向。

 

 すると見覚えのある建設会社が見えて来た。

 

 ルーナは直ぐに馬車から降りると、直様、馴染みのある応接室に案内された。

 

 ル「変わらないのらぁ。今日も…」

 

 大空スバル「あははは。待たせちゃってごめん。」

 

 ル「そんな事無いのら。」

「其れより、又、ルーナの話を聞いて欲しいのら。」

 

 大空スバル「はいはい。何かな〜。」

 

 ルーナ姫はそう言うと、ぺこランドに行って来た話からお城の火事までの事、今後の提携方針について説明をした。

 

 ス「へ〜。兎田ンとこと仲良くなっちゃったか〜。」

 

 ル「ち、違うのら。決してそう言う関係を結んだとかでは無くて…」

 

 ス「そうか〜。でも話してて、仕事の疲れがちょっと楽になって来たかな。ありがとうルーナ。」

 

 ル「どう致しましてなのらぁ!」

 

 今日も今日とて仲よさげな二人。

 

 そんな彼女達を置いておいて、世界は変わり続けていた。

 

 〜〜

 

 マリン達は裏の界隈にやって来ていた。先日、海岸留めて居た時とは正反対に陸路だが、同じ街である。

 

 何分ここでは、yagooNEWSなるものが街角のテレビ画面に映ってるそうだがときのそらとの一件を機に、裏社会に実権を握られてしまった哀れな証左でもある。果たして彼の命運は一体…とそんな事は置いておいて、裏社会で噂のカップル・おかゆんところねだ。

 

 二人とも何やら屋台の飯を頬張りながら此方に近づいて来る。

 

 おかゆん「モグモグ〜。ころさん、楽しいね〜。」

 

 ころね「ハムハム〜。うん。そだね〜。」

 

 すると目の前から、危なげなカップル・マリンとるしあだ。マリンは白銀騎士団の宿屋を探して居た。

 

 おかゆん「モグ。お。何やら不審な人物が。」

 

 ころね「ハム。来ちゃったねぇ。来ちゃったねぇ。」

 

 る「ねー、マリン〜。歩き疲れちゃった。」

 

 おかゆん「どうしてこんな所に居るのかな〜。」

 

 ころね「確かに気になるね〜。」

 

 マ「白銀騎士団の看板をついさっきそこで見かけてな!どうにも決着を着けに行こうかと思っとるんよ。」

 

 お「其れはやめといたほうがいいよ〜。僕が言うのもなんだけど。モグモグ。」

 

 こ「やっちゃえば〜?!誰も責任取らないからさ〜。ハムハム」

 

 マ「こちとら海賊張っとるんです。一度の負けは良いにしろ。船まで傷つけられたとあっては、あっちゃいられない。」

 

 お「ふーん。そうなんだ〜。モグ」

 

 こ「其れより雲行き怪しく無い?ハム」

 

 ビュゴー

 

 そんな折、一陣の強烈な潮風がその場に居た全員の髪を攫った。

 

 マ「ここまで潮風が届くなんてただ事じゃないわね。」

 

 る「ね。この宿屋でしょ。マリンが探して居たの。ここ入ろ。」

 

 そうするとそこには、ノエルとフレアのサイン入りの看板が、潮風に揺られて奥の細道から出てきたではありませんか。

 

 お「ノエフレ!」

 

 こ「おかころ!!」

 

 マ「………」

 

 る「……」

 

 一瞬、何かの気配を感じ取ったおかゆんところね。

 

 お「マリン〜とやら〜、あの娘は放って置くとヤバイかも。」

 

 こ「そだね〜。気・を・付・け・て・ね・。」

 

 と、見知らぬ獣女二人に忠告を貰ったマリンは、しぶしぶるしあの言う事に従う事にした。

 

 〜

 

 すると、なんとそこには、ノエルとフレアが居たではありませんか。

 

 二人は甲冑姿と民族衣装から洋服に着替えながら、

 

 ノ「ね〜フレア〜また今度温泉旅行に行こー。」

 

 楽しげに語り合っていた。

 

 フ「うん良いね〜」

「どこ行く〜?」

 

 気が付かない内にマリンとるしあは声を押し殺して聞いていた。

 

 ノ「ぺこランドの近くに温泉が見つかったんだって〜そこ行こーよ。」

 

 先日、マリンがるしあを探すときに見つけた猿がたむろっている温泉の事だ。

 

 ガタン

 

 マリンの足が近くにある木箱に引っ掛かってしまった。

 

 ノエフレ「誰!?」

 

 マリンは疲れていたのか、思わず飛び出して居た。

 

 シャキン

 

 戦闘だ。先ずは中段と見せ掛けて、マリンの動きが止まった。

 

 当然、二人とも武装していないのだ。丸腰に等しいのだ。

 

 私怨があろうが、そんな相手を倒しに行くのは不愉快だった。

 

 シャキン

 

 剣を鞘に戻すと、マリンはこう言い放った。

「今日はこの位で見逃してやるよ。」

 

 そうしてマリンはるしあを連れて、しかし、其のあまりに大きな胸の前に敗北感を感じていた。

 

 ブーブー

 

 フレア「あ、電話だ。」

「もしもし、ハイ。緊急……ですか。直ぐに向かいます。」

 

(これに比べると、るしあは永遠の0だな。)

 

 る「ねーマリン〜何考えてんのー。」

 

 マ「え!?いや、別に、今日もるしあちゃんは可愛いなって。」

 

 る「何濁してんの。」

 

 マ「え!?いや、えっと〜。」

 

 る「ヌグルルルル」

 

 マ「え?」

「るしあ、ちょっと待って、何考えたかだけ言ってみ。」

 

 る「質問に質問で返すな。」

 

 爆発寸前のるしあを宥めるマリン船長すると、又再び、潮風が建物を襲った。

 

 ビュゴー

 

 ガtガタ

 

 揺れる戸板と頑強な家屋。二人はつい押し黙ったままだったが、遂に、

 

 る「ねぇ、別れよ。」

 

 マ「えっ?急にそんな事言われても…」

 

 る「もう良い!」

 

 急に駆け出したるしあはマリンを置いて行ってしまった。マリンは追い掛けたが途中で見失ってしまった。

 

 〜〜

 

 ルーナイト「報告します。風と潮がこれまで以上に高まり続けているとの事です。」

 

 ル「あいわかった。防波堤の方は。」

 

 ナ1「はっ。今しがた各建設会社の方と連携を組みまして、目下補強中であります。」

 

 ル「そうか。」

 

 ナ2「報告します!先程会議で、防波堤は役に立たないとの事です。」

 

 ル「そうか。防波堤が使えないなら、お城の魔術防壁を拡張しないといけねぇな。」

ルーナが何とかするのら。」

 

 そう言うと姫様はデスクから立ち上がり、お城の地下に向かわれました。

 

 〜

 

 暴風はぺこランドも襲っていた。遠くに竜巻に乗ったサメの幽霊が見える見える。会議帰りの大空建設社長・大空スバルは、同じく建設会社の社長である兎田ぺこーらの後について行った。

 

 ス「おい兎田ぁ!大丈夫っすか〜!」

 

 著しく大きな声を掛けた。

 

 ぺ「いきなり何しに来たんだぺこ。お茶は今出せねぇぺこ!」

 

 後ろをついてきたと思しき社長仲間に一度の嫌悪感を抱きつつ、其れでも丁寧に対応して行くぺこーら。

 

 ス「いや〜。丁度シュバリゲオン出動させるんだけど、それでも人員が足りて無くってさ。」

 

 人数足りないんだよ〜、何て後頭部を撫でながら、まるで飲み会に誘うかの様な軽いノリでトンデモナイことを言い出した大空スバル。

 

 ぺ「ウチに戦闘が卓越された奴は居ないぺこ。」

 

 素っ気なく、先方の提案をお・断・り・す・る・自然な一手。ところが、

 

 ス「いや、そうじゃ無くて、あるでしょ。うさ建巨大ロボット。」

 

 近くまで来て漸くと言わんばかりに指し示した先には、つい最近まで建造に夢中だった愛ロボットの姿が。

 

 ぺ「乗れって言うんぺこか?」

 

 全てを察して無意識の内に肯定してしまうぺこーら。

 

 ス「そうそう」

 

 待ってましたと表情に声が乗っている大空スバルの程。

 

 ぺ「ちょっと待つぺこ」

 

 しかし否定はするのが兎田流。う〜んと唸っては、

「考えてみるぺこ」

 

 と。

 

 よくよく外を、見ると風の闇の中に紛れ込んだ鮫が、早過ぎる宵闇に鮫の幽霊が大量を通り越して、居る。

 

「 GURAAAAAAAAA –––––」

 

 潮風が極大の台風と化す。其の勢いに呑まれまいと、桐生ココは一人、街の最も海に近い家屋の上から、海を睨み付けていた。否、正しくは、台風の目になっている箇所のあり得ざる竜巻、其の中心部に居るこれ又異質ながうるぐらを見つめていた−––––

 

 ザザぁ ゴウゴウ ざっパッぁ〜ン

 

 一際恐ろしい波が彼女を襲うが、音速を超える正拳突きでこれを打ち払う。

 

 スッパーーン

 

 〜〜

 

 メイド()の湊あくあは可愛かった。丸々とした肉付きに紫色の髪の毛。少々難儀な事だが、メイドの腕にも自信があった。

 

 そう今日までは。

 

 今日はいつも通りにお仕事をしていたら、いきなりお屋敷にサメの幽霊が飛んで来るんだもん。お仕事は邪魔されるわ、怖いわ、そこにいるわで三重苦。追い払うのに苦労して、出来なかったけどほとほと疲れたら、次から次へとやって来るんだもん。信じられないっ!ってうわあああああ

 

 ドッカーン

 

 え!?

 

 突如起動した魔術トラップに、サメの幽霊が引っ掛かって爆発四散したと思うと、声が聞こえて来た。

 

 ジジ..ジージー

 

 ?「あー、もしかして起動しちゃった?」

「私、シオン。もしかすると…死んじゃった!?あくあちゃん大丈夫〜?(おどおど)」

 

 いきなり声が!?ってシオン!!?どういう事!?

 

 紫咲シオン「あー、仕事してるあくあちゃんの邪魔しようとトラップを仕掛けて置いたんだよね〜。」

「大丈夫かな〜。あくあちゃん…」

「爆弾仕掛けたつもりは無かったけど、相当巨大な獲物だったから爆発になっちゃった…みたいな?」

「と、取り敢えず、様子を見に行くか。」

 

 バタバタ ドカッt ドサドサッ ドンガラガッシャーン ITETE..

「ちょ、ちょっと待ってて。」

 

 〜

 

 街中が大パニックになった。

 

 其れは当然。サメとか関係無く、暴風は光を通さない闇風へと変っていたからだ。人々はお城の魔術防壁で何とか難を逃れていたが、弾丸すらも屈折する風の壁が流れる。流れる。流れ狂う。決して自然の災害という訳でも無い。何処かしら神秘的な暗雲に包まれながら、街はクリスマスの様に城の周りに巨大な魔術防壁のイルミネーションを施されながら、其の巨大な樹は街を護り続けていた–––––。

 

 

 〜〜〜〜

 

 金髪の女勇者・アキ・ローゼンタールは不可解な人影を探していた。否、人影というにはあまりにか細い其の面影を–––––

 

 協会は次から次へと不確かな道程で出現するアンデットを掃討出来るようにアキロゼに申し付けていた。

 

 海岸、海、入江、山の中、小高い丘の上、城下町––其の道程に其の出現頻度に、不確かな面影を捉えた。

 

 人が操っているのだ。アンデット共は、そして、不確かなのだ。其の方法が。協会から依頼された「未知なるアンデットとの遭遇」は、既に殺して来た。だが、其の先に、一人の少女の姿が浮かび上がるとは、想像だにしていなかった。

 

 薙ぎ倒せば薙ぎ倒す程、其の不可解は確信へと変わり、遂に、あの一人で駆けて行くあの少女の魔力に迄辿り着いたと言う訳だが–。

 

 其の少女に近付く際、又しても協会から依頼持続の相談が届く。あの少女が居たとした宿屋にアンデットが出現したとの事だ。

 

 どうやら、あの少女は無意識の内に自身を守らせる囲いを遅れ馳せながら作っているのでは無いかと。

 

 死の象徴であるアンデットが街中に現れただけでも相当危険なのだが、其方は任せたと、通信機越しの同僚ロボ子に任せた。

 

 何せ目の前からあの少女が消え失せるのだけは避けたい構えなのだ。

 

 アキロゼはるしあを追い掛けた。と其の時、戦意に気が付いたのか、アンデットとサメの幽霊が同時に出現した。

 

 本能的に察する。これは危険が過ぎる。

 

 アキロゼは手に握っていた両刃剣を強く握りしめると、斬撃一刀。アンデットと鮫を斬り伏せた。

 

 次々にアンデットが街中に出現する。右1、左2、3体。後方に死角なし。前方の四体纏めて横薙ぎに斬り伏せて、アンデットだから復活を考慮しないとね。

 

 まだ居る…次に来たアンデットも同じ様に大きく踏み込み、瞬く間に掃討すると、見つけたるしあに向けて剣を突きつける。

 

 アキロゼ「あなた、一体何者。」

 

 すると思ったより丁寧に

「ネクロマンサーの潤羽るしあです。」

 

 と帰って来た強い風が吹く中、声が伸びた。

 

「るし…フ・ァ・ー・!?」

 

 其の瞬間だった。

「!!」

「「「ヌグエェアアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」」

 

 正体不明の光が先程麗羽るしあと名乗った人物奥底から出現し全身を包んでは爆発する。いや、した。

 

 巨大な火の柱が真白く変わっては巨大になって行く。異常に甲高い音を伴って、巨大な竜巻が一瞬生じては、雷が中心から四方八方に巻き付いて、人の姿に移り変わって行く。

 

 いやデカい。

 

 協会が出しているA級賞金首(35Pタイタン等)なんてザラにいると思わせる戦力。見積もって私の練度の3、いや5倍は固い。

 

 戦力差、絶望が望外の程。雲泥の差にも程がある。

 

 想像を超えて天を衝く巨人。其れがルシファーだった。

 

 今、麗羽るしあはこの巨人になってしまったのだろうか。

 

 潮風は、サメの幽霊の大群へと姿を変えていた。

 

 時は来たり。世界が終わる其の時が、堕天(女体化)をし、其の心が助けを求めていたのにも関わらず世・界・の・暴・風・に閉ざされた結果がコレである。

 

 〜〜

 

 光。

 

 十数秒遅れてゴロゴロと音が聞こえる。

 

 光。光。光––。

 

 何度も何度も何度もゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロドンッ!!!!

 

 ス「なんだぁ!?」

 

 アヒルの様な声を上げる大空スバル。

 

 ぺ「不味い。ぺこただでさえこの暴風の中、人なんて飛び出せば飛んで行きそうなものぺこなのに」

「ムーナ!!大丈夫ぺこか〜!!!」

 

 近くに連れて来たムーナ・ホシノヴァに安否確認を取る。

 

 ム「シャチョウ!大丈夫です!」

 

 すると元気な声が返ってきた。

 

 ぺ「良かったぺこ〜。」

 

 光。次いで聞こえて来る雷鳴を待たずして、ムーナは決意した。

 

 ム「スミマセン。」

「私、外に行って来ます。」

 

 え?と声に出してしまう兎田建設のシャチョウ。しかしムーナは止まらず、

 

 ぺ「ムーナ!!!」

 

 ダッt

 

 ムーナは外に出ると、暴風雨に呑まれながら、天に手を翳す。

 

 すると、暗雲が避け、月の姿が露わになる。

 

 風が弱まり、ムーナは、更に、空を飛んだ。

 

 そして、あの天を衝く巨人の下に行った。

 

 ぺ「クッソ〜こうなったら、ぺこダムに搭乗してあの巨神を止めるしかねーぺこ」

 

 誰に命令してんだと言わば、

 

 ス「直ぐに乗るっスよ!」

 

 其の声には先達としての重みが乗っていた。

 

 ぺ「了解ぺこ!」

 

 〜

 

 ス「シュバリゲオン発進!」

 

 ぺ「ぺこダム搭乗完了!」

 

 東からシュバリゲオンが発進したのと同じ様に、西からぺこダムが発進した。

 

 シュバリゲオンは暴風を止めに、ぺこダムはルシファーを倒しに向かった。

 

 そんな折、ムーナが巨人の下に到着し、またしても月明かりを手にする。すると、大地が揺れ出し、ルシファーごと月明かりに魅せる様に浮き上がって行く。

 

 その浮遊と月明かりに柔いだ暴風に乗せられて、マリンの船は出航した。

 

 先程の声から全てを察したマリンは、猿とサメの幽霊と一味と共に、空高く、宙を舞った。

 

 〜〜〜

 

 サメとの関わりは激的だった。獲るのは思ったより簡単で、誰かが海中で鼻を押さえながらそのままで引き揚げれば巨大なサメでも何のその。釣り上げた後は煮るなり焼くなり好きにできる。ランプの燃料なり、アラの部分に珍味な部位が眠っているのだから、交易で活躍した。だが、まさか、そのサメの幽霊が出るとは思いもよらなかった。

 

 サメは使える。こんな時でも。今回だって、サメが近くに纏わり付いて居ないと船の軌道が安定しない。味方だったのだ。サメは。

 

 そんな事情は露知らず、闇風は暴風から、元の潮風に戻ろうかという勢いだった。

 

 船がぐらつく。

 

 航海の時だ。

 

 今こそ我等、宝鐘海賊団の総力を結集してるしあを助けに行く。

 

 行かなければならない。

 

 どうやら…

 

 

 …るしあを迎えに来るみたいなのです。

 

 

 〜

 

 サメとサメの幽霊が、ルシファーの一瞥で、はんぺんなる塵芥やはんぺんの妖精に変わる。

 

 ぺこダムは直様応戦した。シュバリゲオンが巻き込まれて一瞬で蒸発したのが見て取れたのだ。

「「ムーナ!!!!」」

 

 最後の言葉の様に柔らかで丁寧な面持ちで、焦燥を孕んだ声を掛ける。機械からの音声が二重に反響して聞こえるのが、何とも悲痛この上無い。

 

 ム「ハイ。」

 

 ぺ「「大丈夫ぺ iyun

 

 ピカー

 

  ドン ゴゴ

 

 

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 ム「シャチョウ!??!」

 

 ぺこダムも、るしあが眠っていた場所もきのこ雲に呑まれてしまった。

 

 そして、目に映る物全てを灰にするかの如く容赦無く迫るルシファー。

 

 しかしてその眼は見た。今にも崩れ落ちそうな船で、猿に囲まれ、はんぺんの妖精に押し上げられながら、彼・に迫る一人の赤い青女を。

 

 船はそのまま船首をルシファーの鼻と交わし、躍り出たステップは昭和気味に、ルシファーの口から中に、マリンを呑み込んだ。

 

 内側に侵入した際の防壁は無いのか−–、唐突に覇気が停止するルシファー。

 

 今、宝鐘マリンは、前人未到の地へと足を踏み入れ探索を開始した。

 

 だが残念な事に、るしあは子・宮・の中に居た。

 

 〜〜

 柔いだ暴風の中、月明かりに照らされて地面から夥しい量のゾンビが出現した。

 

 一体一体が明確に意思を持っており、昨日今日で生み出された訳ではなさそうだ。

 

 一体全体何が起こるというのか–––理解はするがめまいはする。

 

 人でなし共の残骸と言う訳ではなく、間違いなくこの国で土葬されて来たゾンビだ。アンデットの起こす低周波音によって起き上がっている。其のアンデットを遥かに超え、この国の人口に匹敵する程に膨れ上がった数、いる。

 

 異質な空気が纏わり始まった。

 

 全ての事が終わってしまう。

 

 

 ときのそらは、時を止める力で、魔王と共にルシファーの魔力を中和している。

 

 

 さくらみこは祈祷をしてゾンビを宥めて居た。

 

 するとゾンビは昇天して行きながら、その場に倒れ伏す。其処に35Pがやって来て即席の墓の中にゾンビを担ぎ上げていく。

 

 

 星街すいせいは占いの玉でパチンコをして居る。近くに天照大御神神社があるのだ。

 

 ?神社からの声?「今日もバチコリとツイートに成功して行く〜〜。」

 

 

 アキロゼは無類に剣を振るい続けていた。

 

 天地乖離か–––––。

 最大、いや、最強の敵であるあのル・シ・フ・ァ・ー・の練度は恐らく、天元突破を十数度繰り返さなくてはいけないレベル、恐らく、其の度に顕現していたアンデット程の強者では無いにしろ、先人達を今一度屠り去るのも好都合。ここから先は、只管に我儘で居ないと…

 

 

 赤井はあとは其れでも、歌い続けていた。

 

 

 癒月ちょこは、こんな事もあろうかと、足に装着した拳銃ホルダーから拳銃を抜き、ゾンビを撃退している。

 

 

 夏色まつりはクーラーの付いた部屋の中でアイスを食べながらテレビを付けたところ、緊急速報にゾンビが映っていて、放心した。

 

 !「突如発生した"死者蘇生"によって、我が国は混乱しております。って、何!?」

 

 

「鳴らせ。神天雷奏。廻り巡る世界を一呼吸に。変えよ、今根気常こんこんき〜つね。我が体に、一点の闇黒も無く!刀剣解放–––––白亜絶滅魔獣総軍フブランド。」

 

 neKO゛ーーー゛N!!!

 

 白神フブキは、刀剣の潜在能力を解放させ、フブラー嘗てこの街に堕ちた彗星=星街すいせいが流れ星に願った結果を迎撃した守護獣神、其れを大小様々に無数に召喚し、方々の援護に回った。

 

 

 湊あくあは、気絶して居た。

 

 

 紫咲シオンは魔術を用いたゲリラ=メスガキックでゾンビを安全に撃退していた。

 

 

 大空スバルは大半が蒸発したシュバリゲオンの内部で、

 

 ゾンビが其の無い肉を、前後左右上下に反転させながら、凝り固まり、肉塊が肉塊を呑み込みながら更に巨大な兎鬼へと変貌して行く––。

 

 ゾンビが兎鬼の化け物に変わるのを見た。

 

 

 大神ミオはありったけの天然魔力を使いフブラと同じだけ巨大なゴジしゃでゾンビ群体の大半を焼き払った。

 

 GYAOーN

 

 ga.ga.gagangangagan

 gzbea–m‼︎

 

 

 waoーn

 

  nyaoーn

 

 

 戌神ころねと猫又おかゆは片方が巨大な壁に変化したかと思いきや、もう片や巨大な猫狼に変化し、ゾンビやアンデットを呑み喰らっていく–––。

 

 !「突如発生した大きな壁と狼…猫でしょうか、其れが一心不乱に………」

 

 

 白銀ノエルは、これ又、棍棒メイスを振るっては元凶となるアンデットを壊して行く。

 

 

 不知火フレアは切れてしまった矢の補充に向かった。

 

 

 兎田ぺこーらは化け物が更なる化け物に変わるのを見ていた。

 

 

 桐生ココはドラゴンの姿に変身しては兎鬼やらの化け物に火を吐いている。

 

 

 ルーナ姫は、死者蘇生の基点となるアンデットを倒す様にルーナイトに指示を出した。

 

 

 わためぇは、こんな時でも羅生門だった––––

 

 

 天音かなたは、大空警察から貰った拳銃を素手で壊してしまって居た。

 

 

 常闇トワは、街中の片隅で蹲って居た。

 

 

 獅白ぼたん率いる愉快な仲間達は、指名手配も関係無くゾンビも屍鬼も諸共掃討して居た。

 

 

 サメガキ「A.I wanna go to a 'saizeriya'?a?ya?aaa~」

 

 死神「OK,and take your times,I wondered cake from ends.You aren't big for me.You don't break this nation.」

 

 曰く、英なる国には、神が一柱のみしか存在せず、それ以外は全てギリシャ神話の神なのだとか。世界を一度はその旗で染めたとある一国は、アトランティスでギリシャ軍と天災に敗北した。そして、元々いたのか、それとも残されたのか、神のみぞ知るその一柱は、死神だったという。

 死神は不死鳥と仲良くしており、サメガキたるアストヒル=ロンゴミニアド頭脳体は、お友達である化生に一途な観音様(SCP財団長)と、とある救世主の母である何処にでもいる普通の金髪の女性と仲が良かったのだと云フ。

 

 

 何処かでこの事を慌てふためきながら、見物している謎の組織があった–––。

「風間も卍解する〜。」

「できるの!?」

「吾輩、こんな時だけどサイゼリヤに行きたくなって来たぞ。」

「うーん、どうやら此処にもゾンビ集団が向かって来ているみたいですね〜。」

「ええ〜。もう終わりじゃ〜ん。」

「必殺!風斬真伝。武之輪墓かぜきりしんでん/たけのわがはか!!!」

「うわっ!!!いきなり基地ごとゾンビを切り刻まないで下さい!!」

「う〜ん、基地に出来た隙間からゾンビの呻き声が聞こえるな〜。若しかして

 、吾輩達、囲われてたのか。」

「アンデット補足!原因不明の死者蘇生もこれを破壊すれば止まります!」

「よっしゃ〜。これで勝つるぞ〜。」

「近くに居ねーでござる。」

「どうやら詰みみたいね。」

「吾輩、今すぐにモッツァレラチーズを食したくなって来た。」

「私の薬でどうにかなるでしょうか。えいっ!!」

「ぎゃー注射!嫌〜い!!」

 

 

 そして又、鬼は竜になり、空を飛びながら桐生ココ、パンプキンドラゴンに襲い掛かる。其のドラゴンに、ぺこダムは、辛うじて動いており、ゲリラ的に跳んでは、ビームライフルで焼きを入れながら、急所にビームサーベルを打ち込み倒して行く––––。

 

 

 フブラとゴジしゃが融合し、互いに違いな陰陽を更に纏い二人して陰陽印の方陣を描きながら、目覚めたルシファーの巨大な一瞥を吸収して、同じ程強大なエネルギーを纏った封印術–––––––、順繰りに神社を参拝するかの様に、第一に鳥居で取り押さえ、第二に参道がエネルギーを流し、第三に狛犬が咥え、第四に手水舎てみずやの格好で拘束し、以降の変化で封印の形態が建築様式に進化構成されて、ルシファーの体を封じ倒して行く。

 

 

 魔王の指示により、ゾンビ群体を罠に嵌める事に成功した。塞いだ道路の間にコンクリートを流し込んで、ゾンビは止まった。実に、コンクリート葬である。

 

 アンデットは、既に生成されなくなっていた。

 

 遂には、溜まり切った尸の臭いが多くの市民を奮い立たせた–––!

 

 〜〜〜〜

 

 マリンは、マリンという異物を取り込んだルシファーの彼・女・らしさを見つけることはできず、1日遅れて、肛門から落ちてきたのだが、その時にはもう既に、アンデットは粗方掃討され、ゾンビ側に血の気がなくなったかの様な沈黙が訪れていた。

 

 マリンはまあまあ高度から落下したが、デカいお尻が衝撃を吸収して助かった。

 

 すると、マリンはその落下時にカノジョの膣口とカレの陰茎の両方を見ており、直様立ち上がると、船を探しに行った。

 

 見れば、既に屍の山が築かれてある。

 

 斬撃や打撃に倒れ、匍匐するアンデッドの肩甲骨を丁寧に外していく射撃。

 

 金色と銀色の髪の毛が温くなった風に揺られて、マリンの船を示した。

 

 マリンは船に辿り着き、余り動かないことを知ると、川の流れを変える様に一味と共に工夫した。

「水責めじゃ!!!」

 

 ざざ ざっプゥ〜ん

 

 横たわっているルシファーの陰部目掛けて船を走らせた。

 

 そして、マリンはマストを通ってルシファーの子宮の内部に入り込み、無事にるしあを助け出す事に成功した。

粘着質の肉塊がるしあを覆っていたが、チャッカルとピストルで捌き、るしあが子宮の中心から出ると、不安定になったルシファーの身体は、大量の魔力を光の礫状に霧散させ、陰陽道の強大な封印に沿って超高密度と化した魔力は、ルシファー最後の覚醒と共に、其の素粒子を質量に繰り込む急降光速、次いでエネルギーが無くなった事により起こる急速冷凍、急冷故の圧力とエントロピーのバランス引いては対消滅対生成の秩序が乱れた末の大規模な熱射、急熱にヨる幾何学模様を否定する巨大な爆心、全てを吹き飛ばす急爆の音波、影から先に、ループ状に万物を溶かす急波なる降圧が起こってしまう。

 

ときのそらは助けに行こうとしたが、間に合わなかった。

 

 そして、どこまでも細長く高いきのこ雲、そしてこの星を貫通する勢いの衝撃波と共に、国の名を冠するこの国唯一の不動産魔術式、「ホロらいふ」は消えて無くなったかと思われたその時!その巨大な樹を到来させた術式に陰陽遁ベースの封印術が、其の巨大な爆発を対生成・対消滅から、無力化。

果てしない連鎖階段の様に、柱の組み立てと帷の降ろしが重なって、マリンの目の前に和風建築が出現する。


 「完全に見失ったのです。」


 ドスと、腹部に冷たい感触が入り込む。ゲホと吐血し、目の前にるしあがいる事実を受け止めようとした。


 「最後まで、るしあの為に格好良い所見せて欲しかったな。呆然としないで。」


 そう言うと、るしあは、マリンから包丁を引き抜く。


 だぼだぼと溢れて行く命の音。そして、るしあは今、罪を犯した。

 

 だが、この国の墓問題は粗方、解決された。

 

 …この様な事が何度も起こって来たと言うのか、それともただ絶望に伏し、善悪の秤が消失したのなら皆一様にこうなのか。

 

 人々とホロメンは、今日は特に笑顔に包まれていた。

 

 

 …

 

 いつまでも。いつまでも。お忘れなき様に。今日この日、世界の終焉に巡り会えた事実に。

 

 世界の真実はいつまでも変わらない。灯りを。明かりを。灯せ。点せ。世界の果てが来る何時、審判の日が来る迄、全ての魂よ、永遠に安らかであれ。

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