Chapter 4-3
繁華街は平日にも関わらずにぎわっていた。ただしそれは表通りに限った話で、裏通りは閑散としている。
そんな裏通りを更に奥に進むと、非常にうらさびれた区域に入っていく。時間が止まっているかのように人気のないそこに、目的の店はあった。
「ヒッヒッヒ。いらっしゃい」
そこは駄菓子屋だった。店主であろう老婆が出迎えてくれる。鷲鼻でしわくちゃな彼女は、下からねめつけるように笑い、コタローたちを見ていた。
「あ、あの。俺たち、マリーさんの紹介で来たんですけど……」
「ああ、話は聞いてるよ。おいで」
そう言って老婆は、コタローたちを店の裏へと連れていく。
「この路地裏をまっすぐ行って、突き当たりを右さね。そこに目的のダンジョンがあるよ」
「あ、ありがとうございます」
「ヒッヒッヒ。気を付けてな」
口の端を釣り上げて笑う老婆は、手をひらひらと振る。彼女に見送られながら、コタローたちは言われた場所を目指した。
「……なんか、怖かったねあのおばあちゃん」
「そ、そう?」
コタロー的には普通のおばあちゃんだった。まあ、こちら側の人間としては、だが。
「あったよ!」
そして突き当たりを曲がり、ダンジョンの入口を見つける。
黒い靄はまるでブラックホールだ。すべてを吸い込むかのように渦巻いている。
「『ストレージ』」
コタローはつぶやき、ウィンドウを表示させる。そこからアイテムを選んでポチポチと押していくと、様々な武器や防具が出現する。
「好きなの選んで。中は危ないから、念のためにね」
すべて最高級の品だ。見た感じ、そんなにレベルの高そうなダンジョンではないなと判断したコタローだが、念には念をだ。少なくともこの装備なら即死はまずないだろうというものを選んだ。
「すっご……。じゃあ、あたしは動きやすそうなのがいいな」
「なら、私は弓をいただいてもいいですか? 幼いころ、弓道をやっていたので」
「俺はこの大剣をいただこう」
そうやって三人は装備を選んでいき、準備を終える。アズサは短剣に軽装、ミウは弓矢と軽鎧、みっちょんは大剣に鎧と重装備だった。
「コタローくんは? 装備しないの?」
「俺? うん、邪魔だからね」
アズサの問いに当然のように頷くと、三人は「え」という顔をする。
しかし気にした様子もなく。
「んじゃ、行こっか」
コタローの先導で、ダンジョンに入っていく四人なのだった。
靄を潜り中に入ると、中はしっかりとダンジョンダンジョンしていた。石の壁に囲まれた内部を進んでいく。コタローの思った通り、一本道の簡単なダンジョンのようだ。
これならコタロー一人でサクッと攻略してもよかったが、今回は三人のチュートリアル的な冒険だ。なるべく手を出さない方がいいだろう。
出てくるモンスターも実に低級だった。ぽよぽよと現れたのは、グミスライムと呼ばれる、その名の通りグミ状のモンスターだった。
「え、かわいい!」
「言ってないで、戦わないとやられるよ」
「悪いスライムじゃなかったりしないの!?」
「しないしない」
というわけで、グミスライムとたわむれるように戦う三人を、コタローは体育座りで眺めることにした。実にほほえましい光景だった。これなら何があっても大丈夫だろう。
「えい! えい! あ、倒した」
アズサの振った短剣が、ぴょんぴょん飛び跳ねていたグミスライムにたまたまヒットする。その攻撃で、グミスライムは目を回して倒れた。
そしてそのまま光の粒となって消えると思われたが、グミスライムはむくりと起き上がると、ぴょんとアズサの肩に乗った。
「あれ、ちょっと、どうしたのこの子」
これはもしかして……。
「『メッセージ』」
コタローはメッセージウィンドウを開く。
そこには、「アズサがグミスライムをテイムしました」と表示されていた。
マジか。
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