Chapter 4-4

「ほら、悪いスライムじゃなかったじゃん!」

「ええー……マジでか」


 悪いスライムだと思ってたら、ダンジョン初心者の黒ギャルが速攻テイムしちゃった件について。


「あ、仲間になったんなら名前付けてあげないとだし! んー、グミスライムだし、グミちゃん!」


 アズサが名付けると、グミスライムは気に入ったのか嬉しそうに跳ねる。

 ということで、グミスライムのグミちゃんが仲間に加わった!


 コタローもモンスターのテイムをしているところを見るのは初めてだ。アズサにはどうやらテイマーとしての素質があったらしい。それを早速開花させていることには驚きを隠せない。


「うりうり~」


 アズサがグミちゃんのほっぺたを指でぐりぐりすると、グミちゃんはくすぐったそうに身をよじる。かわいい。なんともほほえましい光景である。ここは本当にダンジョンか?


 そんな風にグミちゃんとたわむれながら先に進むと、再びグミスライムが現れる。しかも今度は集団でだ。


 しかしそんなグミスライムの群れに、グミちゃんが単独で飛び込んでいく。


「あ、ちょっとグミちゃん!」


 アズサの声に、しかしグミちゃんは止まらない。グミちゃんが震えると、グミスライムの群れもぷるぷると震え出す。そしてグミちゃんたちは組体操のように集合していき、次の瞬間――なんと、合体してでっかくなっちゃった!


「ええー!?」


 これにはコタローたちも、口をあんぐりさせて驚くしかない。

 そしてなんと、ポムっと音がしたかと思うと、グミちゃんは元通りのサイズに早変わり。再びアズサの肩の上に戻ってきたのだ。


「……グミちゃん、キミ、もしかしてすごい子?」


 アズサの問いに、グミちゃんは首をかしげるように身をもたげるだけだった。


 まあ、そんなこんなで。コタローたちは実に危なげなくボス部屋の前に辿り着く。突然現れた仰々しい扉を前に、アズサたちは驚いた様子だ。


「この先にボスがいると思うよ。ここまではグミちゃんのおかげでめっちゃ楽だったけど、流石にそうはいかないと思うから、頑張って」


 コタローの言葉に、アズサたちは息を呑んで頷き合う。いよいよ本格的な戦闘になるだろう。三人+一匹でどこまでやれるのか、じっくりと見せてもらおう。

 最悪、自分がなんとかするので問題はないだろう。コタローはこれまで通り体育座りで見物するつもりだが、なにかあればフォローする準備はできている。


 それじゃあ、とコタローはボス部屋の扉を開いた。


 ゴゴゴゴゴ、と重々しい音を立てながら開く扉の向こう。その奥には、茶色の体毛を立てて怒らせる、二足歩行の獣人――コボルトがいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る