Chapter 3-3

 仕事。一体どんな。ちょっと興味が湧いてきた。


「あなたたちが入った靄の中。私たちはあれを『ダンジョン』と呼んでいるわ。発生したばかりのダンジョンは元の形を保っているけれど、時間が経ったものは違う。中は複雑な迷宮になり、内部には侵入者を阻む仕掛けが数多く用意される。罠や、モンスターがね」

「へぇー。ゲームっぽい!」


 アズサの反応に、マリーはくすりと笑う。


「あら。そんなこと言って、下手に飛び込んじゃダメよ。死んじゃうから。でもゲームっぽいっていうのは確かにそうね。中にはそれこそ、ご褒美のようなお宝が眠っている場合もある」


 マリーは腰を上げ、コタローたちの後ろへ回る。そこには戸棚があり、中には色とりどりの宝石が並んでいた。


「たとえばこれ。ゲームが好きなら、ミスリルなんて聞いたことがあるんじゃないかしら。これがそのミスリル。表の世界じゃ空想の鉱物、裏の世界でも希少なものだけれど、ダンジョンはこういうお宝の宝庫なの」

「ミス……え? え!?」


 あまりにさらっと言われたせいか、遅れて驚き出すアズサ。みっちょんはピンと来ていないのか、ふむ……と唸っている。


「そしてダンジョンは今、各地で発生している。それに合わせて、内部に眠る金銀財宝を狙う輩もね。Mr.コタロー。あなたの腕を見込んで、ダンジョン攻略をお願いしたいの。もちろん報酬は弾むわ」

「なるほど……」


 コタローは腕を組み、考える姿勢を示した。

 それを見て、アズサが声を上げる。


「え? でもそんな、危ないんでしょ!? そんなんコタローくんにやらせらんないし!」

「確かに、話を聞く限りは相当危険なようだが……」


 みっちょんも否定的な声音だ。ここまでの話で、二人がそう思うのも無理はない。

 が、コタローはよし、と両膝を叩く。


「いいですよ」

「そうだよ、辞めといた方がいいし……って、は!?」

「コタローくん」

「大丈夫大丈夫。俺がスキル持ちなのは聞いた通りだから。上手くやるよ」


 あっけらかんと言うコタローに、ポカンとするアズサとみっちょん。そんな二人を尻目に、マリーは書斎机に戻っていく。


「あなたならそう言ってくれると思っていたわ。とっても嬉しいわよ。じゃあ早速だけれど、一つ目の依頼をしてもいいかしら?」

「どんとこい」

「いい返事ね。今、日本国内だけでも数件のダンジョン発生が報告されているわ。あなたにはそれをすべて攻略してきてほしい。できる?」

「もち」


 コタローは親指を立てる。

 Goodと、マリーは場所の説明を始めてくれた。今情報があるのは三か所。どれも東西バラバラに散っているが、スキルを駆使すれば一日一か所で終わるかな。


「……くし」

「柏崎?」

「え、ど、どうしたのアズサさん」


 そんな風に算段を立てていると、アズサがわなわなと震え出した。

 何事かと問うと、アズサは立ち上がって叫んだ。


「あたしも一緒に行くし!!」


 ええー、とコタローは胸中で驚くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る