Chapter2 筋肉は裏切らない
Chapter 2-1
「本っっっっっっ当に申し訳ないっっっっっっ!!」
みっちょんこと角刈りアゴ割れマッチョメン――違った。立田光義ことみっちょんは、そう言って深く頭を下げた。
昼休みになり、みっちょんに呼び出されたコタローとアズサ。なんだなんだと来てみたら、こうして謝罪を受けることになっていた。ここ、廊下のど真ん中なんですけど。うるさいんですけど。
案の定、周囲にいた生徒はみっちょんの大声に反応してビクッとしていた。
とはいえ、直角よりも深いんじゃないかというくらい、深々と頭を下げているみっちょんにそれを言うのもはばかられる。
というか、そもそもどうしたらいいのかわからない。こちとら長年陰キャぼっちやっとるんじゃ、舐めんなちきしょうめ。
「昨日のことは、正直あまりよく覚えていないのだ。しかし、キミたちに迷惑をかけたことはわかっている! 本当に申し訳ない!」
ということらしい。あの瘴気の正体はよくわからない。だが、あれのせいでみっちょんがおかしくなっていたのは間違いないようだ。
なにかきっかけのようなことがあったか、覚えていないかと聞いてみる。
「あれは確か、おとといの夜だったか……。テレビから黒い靄のようなものが出てきたかと思うと、それから意識がはっきりしなくなったと思うのだが」
なるほど。それがあの瘴気のことか。それがみっちょんに取り憑き、アズサの誘拐という暴挙に及ばせたのだろう。
「んー……。どうする? コタローくん」
「……俺は、アズサさんがいいなら」
「んー……。もうあんなことしない?」
みっちょんは首を縦に振る。
「しない! 絶対しないと誓う!」
「もうコタローくんと決闘なんてしない?」
「しない! 柏崎に付きまとうのも止める!」
「よし! 許す!!」
「本当か!?」
アズサとコタローは頷く。するとみっちょんは表情を歓喜に崩す。
「ありがとう! ありがとう!!」
そして大粒の涙を流しながら、アズサとコタローに強めの握手をするのだった。
なぜみっちょんが狙われたのか、など疑問は尽きない。が、ひとまずはみんな無事だったというだけでもよかったと言えよう。
ひとしきり握手をすると、みっちょんは涙を拭いて続ける。
「しかしキミは強いな。もしよかったら、俺と一緒に筋トレをしないか?」
「うん、いいよ」
みっちょんの提案をあっさり受け入れるコタローだが、隣のアズサが驚く。
「え、ホントにいいの、コタローくん」
「うん、多分大丈夫だよ」
「それなら、いいけど……」
「よし! それなら放課後、屋上で待っているぞ!」
と、みっちょんはウキウキで教室に戻っていった。
呑気に手を振って見送るコタローの隣で、アズサは「ダイジョウブカナー?」と首を捻っていた。
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