Chapter 1-6

 翌日、登校してきたアズサは、彼女を心配する友人に囲まれていた。立田の指示で、学校に病欠の連絡をさせられていたためだ。


 対して、体調不良で早退したコタローは、いつも通りひとりぼっちだ。しかし気にする風でもなく、イヤホンを付けて読書に勤しんでいる。


「コッタローくん!」


 と、そんなコタローの元にアズサがやってくる。陰キャぼっちを連れ回す体ではなく、オタトーク中のテンションで。


「ど、どうしたの柏崎さん」


 コタローはキョドりながらもイヤホンを外す。


「それ!」

「ふぇっ!?」

「その柏崎さんっていうの、すごく他人行儀じゃない? アズサでいいよ」

「い、いや、でも、柏崎さん……」

「ア・ズ・サ!」

「はいっ! アズサ、さん……」

「よーし、オッケー! ホントは「さん」も要らないけど、まいっか! それじゃ、屋上行こうよ!」


 そうして彼女に連れられ、二人は屋上に向かう。

 教室を出る際、アズサは誰かを見たが、それが誰かはわからなかった。


 屋上に出ると、アズサは大きく伸びをした。コタローはそれがなんだか眩しくて、目を細めた。


「どしたの?」

「う、ううん。ちょっと日の光が眩しくて」

「あはは! もっと明るいとこに出なきゃダメだよ」


 アズサは笑っていたが、次第にその表情は曇っていく。


「ね、昨日はありがと。ホントはさ、怖くて、逃げたくても逃げられなくて。誰か助けてってずっと思ってたんだけど……。ね、コタローくんはさ、なんで助けに来てくれたの?」


 アズサを助けたあと、彼女から事情は聞いた。

 登校中、彼女の前に現れた立田によって誘拐され、あのダンジョンに閉じ込められたのだと。ちなみにダンジョンは、あの瘴気を倒して出ると、消滅した。


「……オタクはさ、ギャルに優しいんだよ」


 コタローの返答に、アズサは目をぱちくりさせる。


 やがて、その意味がわかったようで腹を抱えて笑い出した。


「ちょっと、もう! なんなのそれー! もー!」


 ひとしきり笑い、息を整える。


「あー、面白かった! もー、聞きたかったのはそういうことじゃないんだけどな」

「ご、ごめん。でも、俺らしいでしょ?」

「かもね。よーし、わかった。今はそういうことにしときましょう!」


 二人は笑い合う。やがて予鈴が鳴ったので、二人は教室に戻っていったのだった。

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