第24話「鬼が哭いた日」

診療所を出たヤマトは次々と守護警察の隊員を殺す。ヤマトの太刀筋に迷いはなかった。

視界に入った隊員から順番に殺しながら、すでに守護警察と戦闘を始めていた守り人たちと合流するヤマト。

「隊長!」

「ヤマト!ここは絶対に明け渡すわけにはいかん!死ぬ気で戦え!一歩も引くな!」

「はい!」

守り人のスイレンがものすごい剣幕でヤマトにそう伝える。

そのやり取りを偶然耳にした隊員が驚いた声でこう言った。

「ヤ…ヤマトっていったか? 今… お前…! ヤマトって言ったのか!?」

聞き覚えのある声がヤマトの動きを止めた。

「大樹… ミキオ…!?」

ヤマトは動揺した声でそう言った。

「知り合いk…」

スイレンがヤマトと侵略者の関係を問いただしたその時、無慈悲にも流れ弾がスイレンの頭を貫いた。

遺言を残す間もなく地面に倒れるスイレンの姿が、さらにヤマトを動揺させる。自分より数段強いスイレンが一兵卒の銃弾で殺されたことは、ヤマトの自尊心や価値観を崩壊させた。

しかし、そんなヤマトを気に掛けるどころか、さらにすごい剣幕でミキオはヤマトに問い詰める。

「お前… なんだよその角… それにその恰好… まるで鬼じゃないか…!? 一体何があったんだよ…! 鬼を皆殺しにするんじゃなかったのかよ! こんなとこで何やってんだよ!!」

「大樹ミキオォォォォォ!!!!お前こそどうしてここへ来た!?それもこんなにたくさんの兵を連れて…!?なんで今更…!? お前たちがもっと早くここへ来ていたら、あいつらは死んでいなかったはずだ!!!

お前はまた俺の邪魔をするのか!?」

ヤマトは今までの全ての怒りの矛先を、かつての仲間であり、上官である大樹ミキオにぶつけた。

「いったい何を言っているんだお前は…!? ──そうか、お前はここに長く居すぎたんだな… すまない、ヤマト。お前を一人にして… だがもう大丈夫だ…! 俺たちがお前を救いに来た…!!一緒に俺たちの世界へ帰ろう!!」

「うるせぇよクソ野郎…! 俺を帰したいか!?俺を救いたいか!? なら…!俺を倒してみやがれ!!」

「クソッ!もう少し早く来るべきだった…!話は後で聞く、ヤマト!少し休めッ!」

ヤマトとミキオが戦闘を開始するが、ミキオの装備は大盾のみ。対するヤマトは粗悪ではあるが、剣を持っている。

ヤマトの猛攻に耐えるしかないミキオは、一歩ずつ後退していく。

(クソッ…!まずい…!このままじゃ…!)

「ヤマト…!最後に教えてくれ…!一体何がお前をそうさせたんだ…?」

「知ってどうすんだよ…!?」

「どうもしないさ…! ただ、知りたいんだ…! お前のことが…!」

「キメェこと言ってんじゃねえよ!!」

「ははっ!そうだったな…!忘れてたよ…! お前はいつもそうさ…! 一人で勝手に突っ走って、いつも厄介ごとに見舞われていたな… でもお前は人を頼ることが苦手だから、いつも一人で悩んでいたんだ… でも、お前は誰よりも人の痛みに敏感で、誰よりも仲間想いな『いい奴』だった!!なのはやギンも、お前のことを本気で愛していた…!なのに… 一体お前はどうしてこんなことをするんだ…!? 世界を敵に回して…! 鬼の味方をして…! また一人で悩むつもりか…!? 何回も言ってるだろ! お前は一人じゃないって! 信じてくれ! 俺はお前の味方だ…! だから…!」

かつても仲間であり、殉職したなのはとギンの名前を聞いたヤマトは、何かが吹っ切れたように、ミキオが言い終わる前にとどめを刺す。

「ガハッ…! ヤマト…!」

「うるせぇんだよ…! 俺はもう誰も、何も信じねぇ!!自分の大切なものを守るためだけに生きるって決めたんだ!!だから…!」

「──俺のために死んでくれ!大樹ミキオ…!」

そうしてヤマトは、かつての上官であり、仲間である大樹ミキオの心臓に刀を突き刺し、とどめを刺した。

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