第23話「いつかまたあの場所で」
晴れて守り人となったヤマトは、隊長のスイレンから守り人の仕事や街の情報について教えてもらった。
「俺たち守り人の仕事は、基本的には治安の維持だけだ。しかし、俺たちがこの町の最初で最後の砦だから負けることは決して許されない。数週間前のことだが、この町で得体の知れない種族と対峙したことがある…
勿論排除したが、これから先、どんなことが起きるか想像もつかない… くれぐれも鍛錬を怠るなよ?」
自分たちのことを言及されたヤマトは複雑な気持ちだったが、仕事を全うするために素直に忠告を聞き入れる。
「…はい!」
それから数週間後、すっかり町になじんでいたヤマトだったが、突如銃声が鳴り響く。
そして、雪崩れるように見覚えのある制服を着た集団がヤマトのいる町に攻め込んできた。
あたりは一瞬で血と炎にまみれ、悲鳴と銃声が鳴り響く地獄絵図へと化した。
町の住人を容赦なく殺害し、家を焼き払う守護警察の面々に戸惑っていたヤマトだったが、ふとジャンヌのことを思い出し、全力で彼女のいる町の診療所へと向かった。
(まずいまずいまずい…!なんで?どうして!? なんでここにあいつらが居るんだよ!?)
(目的はなんだ!? 俺たちの救出!? いや、それにしては数が多すぎる…! 何だ…?何が目的だ…?今から戦争でもおっぱじめようってのかよ…!? とにかく!一度ジャンヌと合流しないと…!)
「ハァ…!ハァ…!ジャンヌ!」
ヤマトが勢いよく診療室のドアを開ける。
「ヤマト!」
「無事でよかった…!大丈夫か?ケガとかしてないか?」
「うん、大丈夫だよ、ありがとう…!」
何とか合流できた二人はお互いに身の安全を確認する。
「それより、ヤマトは…?あれってヤマトが昔いた組織なんだよね…?」
ジャンヌが大勢の武装した軍人を見てヤマトとの関係を杞憂する。
「ああ… けど、わからねぇ…! 何で今更ここに来たんだよ…!? ああ、マジでまずいことになってきた気がする…!」
少し焦りの見えるヤマトに、ジャンヌが冷静に現状を伝える。
「気持ちはわかるけど、一度落ち着いて?ヤマト、彼らの目的が何にせよ、守り人との衝突は避けられない…」
「これは選択の時よ… 貴方が未来を選ぶの… 私は何があっても貴方についていく… だからお願いヤマト… 決断して…! 人として生きるか… 鬼として生きるかを!」
ジャンヌの問いに頭を悩ませながらも、ヤマトは自分で未来を選択する。
「正直…!もう何が正しくて、何が間違いなのかすらわかんねェ…!一体俺は何者で、今自分が何をすべきなのか、全く理解できそうにねェ…! だけど、俺は… 俺の信じるものを守りたい!」
そう言って武器を手に取るヤマトは、ジャンヌにこう伝える。
「多分ここは戦場になる…! だから、約束だ…!ジャンヌ…! ──もしこの世界が終わりを迎えるのなら、俺たち2人きりで終わりを迎えいれよう…! 俺たちが最初に出逢ったあの場所で…!俺を待っていてくれ…! 必ず生きて帰るから…!」
ヤマトのその言葉を聞いたジャンヌは涙を流す。今までで一番暖かくて、今までで一番強い言葉が、ジャンヌの心に纏わりついた。
「うん… 待ってる… ずっと待ってるから… だから… 絶対… 迎えに来てね…」
「ああ、約束だ!」
そして、世界に抗う覚悟を決めたヤマトは診療所を飛び出した。
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