第13話「交差」
6時10分 ゲンスイら特殊調査部隊は鶴橋に着いた。
鶴橋も梅田や新大阪同様、荒廃して緑が生い茂っていたが、どこか懐かしい、不思議な気配がした。
鶴橋のどこかにある地獄への「扉」を探すため、4人はそれぞれ別行動をする。
(ホントにこんなとこに地獄への扉なんてあんのかよ…)
ヤマトがそう思いながら、鶴嘴を探索する。
鶴橋駅の狭い路地を抜けると、大通りに出る。そこは神秘的で、幻想的だった。
ただの交差点が、まるで何百年も前からそこにあったかのような雰囲気をまとっていたからだった。
その絶景に息をのむヤマト、感心しながら探索を続けると、たくさんの植物に覆われている赤い門を発見する。扉を開けて確認しようとしたその時、ヤマトの脳内に「開けてはいけない」という謎の声が聞こえる。
ヤマトがあたりを見渡すと、まるでこの世のものとは思えない女が一人、ぽつんと立っていた。
女はまるで幽霊のような見た目をしていて、今にも消えてなくなりそうだった。
「お、お前だれだよ… こんなとこで何してんだよ…! ここは人の住めるところじゃねーぞ…!」
「その扉を開けてはいけない」
幽霊のような女は、繰り返しそう言った。
「なんで開けちゃいけねーんだ?」
ヤマトは女に質問するが、女はあいまいな答えしか返さなかった。
「ここから先は、長く苦しい荒野の道。その扉を開けると、もう元に戻ることはできない。」
しかし、ヤマトは構わず扉に触れる。
「んなもん知るかよ!俺は前に進むだけだ!」
その時、ヤマトに身に覚えのないさまざまな記憶が、ものすごい勢いで脳内に流れ込んだ。
なぜか教会で涙を流して懺悔している男。白く荘厳な王都が、民衆の反乱によって血と炎にまみれる映像。
燃え盛る炎の中、傷を負った角の生えたヤマトによく似た男が、鬼のような少女と抱き合う映像。
ヤマトが扉に触れ、脳内に入りこんだ膨大な量の謎の記憶に佇んでいる時、後ろの方からリュウセイがヤマトに声をかける。
「ヤマトさーん! 何か見つかりましたかー?!」
ふと我に返ったヤマトが、リュウセイに報告する。そこに女の姿はなかった。
「ああ!見つけた!扉だ!」
ヤマトの報告を受け、ゲンスイらは扉の前に集合する。
「皆の者、準備はできているな?」
「はい!」
リュウセイとホムラが大声でそう答えるが、ヤマトは違った。
「…はい」
「どうした藤原ヤマト、怖気づいたのか…?」
葛藤しているヤマトにゲンスイが声をかける。
「いえ、問題ないです… ただ…」
「ただ…?」
ゲンスイが問う
「この扉を開けたら、もう2度と元には戻れない気がして…」
「そうだな… しかし、だからこそ進むべきなのだ。 我々は守護警察、護るべきもののために戦い、前へと進むのだ! 後ろを振り返ることがあっても、決して歩みを止めてはならん!」
「了解!」
未知への不安はぬぐえなかったが、進むしかないということを再確認したヤマトは、覚悟する。
「行くぞ!我々は勝って帰るのだ!世界の真実を目撃し、次の世代へと託すのだ!全員!敬礼!」
そう言ってゲンスイが扉に背を向けて敬礼をする。ヤマト達もそれをみて、敬礼をする。
ゲンスイが扉を開け、鬼の世界へと足を踏み入れる。
この日、再び、世界が交差した。
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