第10話「屍の先に待つもの」

10:05 floor1 戦国ソウスイ視点

野営病院へ向かったヤマトとギンの分まで頑張るためにも、ソウスイは父親である戦国ゲンスイの教えを思い出す。

「ソウスイ、貴様は私のようにならねばならん 今のままでは、到底辿り着けぬぞ!」

「はい… わかっております、父上…!」

「よろしい、ならば稽古を続けよう」

戦国ソウスイは、元自衛隊の将官でもあった生粋の武人「戦国ゲンスイ」のもとに生まれた。

父への憧れの裏には、周囲の期待や、本人のそれを受け入れる覚悟など、ひとえに「憧れ」と言うのは憚られるが、

今はなんの迷いもなく、父の後を継ぐために絶え間のない努力をしている。

そんなソウスイは、この作戦で戦績を残して少しでも父親である戦国ゲンスイに近づこうと思っていた矢先、任務を放棄するというありえない部下が現れて苛立っていたが、

これも父に近づくための試練だと思い、自身と残された部下達を奮い立たせることにした。

「テメェら!諸事情で別で動いていた藤原ヤマトと冷凍ギンが、医療班のところにいる鬼の対処に当たることになっちまったから、俺たちだけでここのフロアの鬼狩り尽くすぞ!」

そう言ってソウスイと部下達は、1階の鬼との戦闘を始めるのであった。


10:05 floor2 爆師ハナビ視点

2階はハナビが指揮をとっていた。

「全員!俺に続け!遅れるなよ!」指揮といっても最前線で戦い部下達を鼓舞するだけの単純な作戦だったが、この場合はこれが最も効果的だった。鬼の群れに対して正面から突っ込むことで、最速での制圧を目指すハナビ。

イバラやつららもハナビの後ろで走っている。

2階の戦闘は、負傷者は出たものの、死者0人という素晴らしい戦績だった。


10:25 floor3 天下ツカサ視点

3階の様子は他の階と比べて緊迫していた。喋る鬼を捕虜にすることができたからだ。野戦病院に現れた鬼と同じく、高い知能を持ち合わせていたので、拷問すれば何か有益な情報が得られると思ったのだろう。ツカサは問い詰めながら鬼を拷問する。

「なあ教えてくれよ お前らは一体何者で、『どこ』から来たんだ?」

そういってツカサは鬼の足の甲を剣で突き刺す。

「グワァァァァ!!」鬼が鈍い叫び声を出す。

そして歪んだ声でこういった。

「い” え” な” い”」

予想と違う答えにイラついたツカサは、さらに左足の甲も剣で突き刺す。

「グワァァァァ!!」鬼がさらに鈍い叫び声を出す。

「ご ろ“ ぜ」

鬼の口が固く、これ以上の拷問に意味がないとわかったツカサは、最後にダメもとでハッタリをかましてみる。

「もういい お前の脳に直接聞くことにする」

そういってツカサは、自身のヘルメットを鬼に装着させると、鬼が焦って口をわる。

「ま“ て“ 悪かった… 扉だ… 俺たちの世界と、お前達の世界を繋ぐ扉が鶴橋にある… 俺たちはそこから来たんだ… 俺には家族がいる… 頼む… 家族だけは殺さないでくれ…」

「『待て』?今俺に待てって言ったのか?お前は? お前はそうやって命乞いしてきた人間一体何人殺したんだ?」

「…」

問い詰めるツカサに、鬼は反論できなかった。

そんな鬼に対して、吐き捨てるようにツカサがこう言った。

「冥土の土産に教えてやるよ化け物野郎 こいつはただのヘルメット、思考を読み取る力なんてねーよ…」

「貴様ァァ!!」

襲い掛かろうとするが、拘束具がそれを邪魔する。

そしてツカサは、冷静に鬼にとどめを刺した。

「ハァ…」

全て終わったことに安堵したツカサから、ため息が漏れる。

(「扉」だって…?俺たちは一体… 何と戦っているんだ…?)


続く

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