第6話「砂浜ゆき」(修正済み)
太陽が照り付ける青空の元で訓練をしていたヤマト達。
昨日の夜にふと疑問に思ったことを、ヤマトは訓練の休憩中にハナビに聞くことにした。
「なあハナビ、『砂浜ゆき』ってやつ知ってるか?」
「そりゃ知ってるさ。昨日の任務には参加していなかったけど、一応俺の班に所属してるからな。あと普通にガキの頃からの付き合いだし」
「え!?マジで!?」
予想外の答えにヤマトは少し声が上ずった。
「ああ、なんつーか、昔っから全部見透かされている気がするんだよな…」
ハナビはゆきについて少し苦い顔で答える。
「てゆうかお前、ゆきとなんかあったのか?」
ヤマトの口からゆきの名前が出るとは思わなかったハナビが、思わずそう聞き返す。
「いや、あの人が俺に『ハナビは何かを隠してる』って言ってきたからさ」
「…」
ヤマトの言葉に少し表情が曇るハナビ。
「なんでゆきはお前にそのことを伝えたんだ?」
「んなもん俺が知る分けねぇだろ…」
ハナビは少し動揺しているようだ。
「ただ… あいつが『君はハナビ以上に特別だ』って」
「特別…」
「よくわかんねぇけど…!俺別に自分が特別だとかそうゆうのは全然思ってないし!」
自分の発言に恥ずかしくなったヤマトが焦って否定する。
「そうだな。弱ぇし」
それを聞いたハナビが冗談交じりにそう言った。
「は?弱くねぇーし!今度また稽古つけてくれよ!俺の腕が上がったとこ見せてやるよ!」
ヤマトがムキになってそう言った。
「おう!いつでもこい!」
ハナビもそれを快く受け入れる。
しかし、言葉とは裏腹にハナビが何かを思い出して心の中でこう呟いた。
(いや、お前は特別だよヤマト… 恐ろしいくらいにな…)
ヤマトはその後、オフィスで事務作業をしているゆきの元へと向かった。
(ここであってるよな…? ハナビのやつ説明雑すぎなんだよな…)
(てか守護警察にこんなとこあったのかよ… すげぇ静かだな… やべぇ… 何かそわそわしてきた… 早いとこあいつを見つけねぇと…)
静かなオフィスの雰囲気に緊張していたヤマトだったが、なんとかゆきを見つけることに成功する。
(あ、いた)
「なあ、ちょっといいか?」
ヤマトが気さくに声をかける。
しかし、ゆきの態度は以前よりも冷たかった。
「仕事で忙しいから簡潔に伝えてちょうだい」
ヤマトに背を向けてタイピングをしたまま、ゆきが冷たくそう言い放った。
(あ、あれ… 前はもっと明るかったよな…?)
以前とは明らかにキャラが違うことに動揺しながらも、ヤマトは真剣な表情で質問する。
「あのさ… 前にキャンプで言ってたことだけどさ… なんで俺が特別だって知ってるんだ?」
「…」
ゆきの手が止まった。重くてどんよりとした気まずい空気がオフィスに流れる。
そして、少しの沈黙の後、ゆきが淡白にこう答える。
「『勘』よ」
「勘!?そんなでたらめ信じねぇぞ!」
あまりにも適当な答えに少しイラついたヤマトが声を荒げ、オフィスにいる皆の視線が一気にヤマトに集まる。
「静かにしなさい ここは大声禁止よ」
しかし、そんなヤマトに一切動じないゆき
「ごめん」
やまとは反省して謝る。
「次からは気を付けてね。それとね?ヤマト君『勘』って言っても、心理カウンセラーの『勘』よ。占いなんかよりよっぽどあたるわよ」
ゆきは少し自慢げにそう言った。
「心理カウンセラー?」
ヤマトが意外な言葉に驚く
「そうよ。知らなかったの?」
「ああ」
(チクショー!!ハナビの野郎、一番大事なとこ説明しないでどうすんだよ…!!恥かいたじゃねぇか!!)
ヤマトは説明不足のハナビに怒りを燃やしたと同時に、謎が晴れてスッキリした。
「なるほど… それでハナビが隠してる秘密に気づいたのか!」
「ええ、でも前にも言ったけど、あくまで『何かを隠している』ってことしかわからないわ。秘密の内容まではさすがにね…」
ゆきはすこし残念そうな顔をした。
「いや、全然凄ぇよ!心理学って凄ぇな!」
「そうね…」
ゆきが微笑みながらそう言った。
「ちなみに俺のことを特別だっていったのは何でなんだ?ハナビの秘密と何か関係があるのか?」
「私はそう思っているわ… これもあくまで『勘』に過ぎないのだけど、あの人、どうも君と話している時の様子がおかしいのよね… なんだか焦っているように見えるというか、恐れているというか…」
ゆきが難しそうな顔をする。
「恐れる?ハナビが俺を?そんな風には見えねぇけどな… まあ、少しは俺の強さにビビってくれてもいいとは思うけどな」
ヤマトが冗談交じりにそう言った。
「まあ、あくまで『勘』だから気にしすぎないでね… 何かあっても私、責任取れないし」
そしてそんなヤマトにゆきが釘をさす
「大丈夫だよ 俺は地道に努力するタイプだし!」
ヤマトが明るく言い返す。
「そう…」
ゆきも少し表情が明るくなった。
「じゃあな!」
ヤマトがゆきに別れを告げる。
そうしてヤマトは、訓練に遅刻してこっぴどく怒られたのであった。
7話に続く
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