第4話「君は何も知らない」

梅田周辺を完全に奪還した守護警察は、新大阪の奪還を目指す。

そこで、ヤマト達はハナビ班と合同で新大阪の調査に向かう。新大阪は完全に未知の世界で、何が起きているのか全く分からない。

沈むような曇天は、まるでヤマトの心のようだ。

軍用車に乗り込む直前、ヤマトはゆきの発言を思い出す。

「鬼丸ハナビは何かを隠している」

「14年前、この世界で『何か』が起きた… そして彼は、この世界の真実に限りなく近づいている…!」

「それは、この世界の常識を覆しかねない世界の秘密!いえ、世界を変える、宇宙の秘密よ!君も… 本当は気づいているんじゃない?」

(まさか… ハナビが何を隠してるって言うんだよ…)

(あいつ嘘つくの下手だし… ずっと任務で忙しいし… なにより、あいつがそんなことするはずがねぇ…! 世界の秘密ってなんだよそれ…! そんな大事なこと、隠すわけがねぇ…! 謎を解明して人類を護るのが守護警察の役目だろ…!)

(でも… あの記憶は一体… ハナビは一体、何者なんだ…?)

(クソッ…!迷っていても仕方ねぇ!直接聞いてみるしかねぇか…!)

ヤマトは任務直前、ハナビに対する不信感を払しょくするために直接話を聞いてみることに。

「なあ、ハナビ…」

「どうしたんだ?浮かない顔して」

「あのさ…」

言葉に詰まるヤマト。しかし、勇気を出して踏み込んだ質問をする。

「俺になんか、隠してることってないか?」

ハナビは笑いながら問い返す。

「隠してること?例えばどんなだ?」

「それは…」

少しの沈黙の後、ヤマトは覚悟を決めて、ハナビに質問する。

「例えば… 世界の秘密とか…」

「!」

ほんの少しだが、ハナビの表情が変わった。

「ごめん… 変だよな俺…」

自分でも何を聞いているのかがわからなくなったヤマトが謝罪すると、ハナビは意外な言葉を返す。

「なぁ、お前って運命を信じるか?」

「なんだよ急に」

「信じるのか?」

「…信じるわけねーだろ、てゆうか急にどうしたんだ?」

「いや、なんでもない… 忘れてくれ…」

「…14年前のことか?」

「!」

ハナビは動揺する。

「何か… 知っているのか?」

「ああ ゆきってやつから聞いた」

「ハナビが何か隠してるって。なあ、教えてくれハナビ…! お前は一体、何を知っているんだ…!」

「言えない。」

思っていた答えと違ったヤマトは、感情が抑えられなくなる。

「なんで…! 俺たち仲間だろ!」

しかし、ハナビは冷静に答える。

「仲間だから…! 言えないんだ…!」

ハナビの表情も険しくなる。それは、何かを抱え込んでいる者の表情だった。

「少なくとも…! 今はまだ…!」

ハナビの顔から、尋常じゃない覚悟を感じ取ったヤマトは、自分の気持ちを殺してハナビの言葉を信じる。

「クソッ…! わかったよ…! でも… いつか、いつか絶対俺に聞かせてくれよ… 世界の秘密ってやつを…」

「ああ… 約束するよ…」

ヤマトとハナビはそれぞれの軍用車に乗り込み、任務へ向かう。


場面は淀川に跨る橋「新淀川大橋」へ移り変わる

梅田同様、道路にはヒビが、完全に錆びきったガードレールには植物が絡みつくように生い茂っていた。しかし、梅田のビル群とは違い、橋には身を任せることのできる安心感があった。

改めて職人のすごさを感じたミキオたちであったが、橋の目の前には鬼の検問があった。

今までと違い、鬼の軍勢に「規律」のようなものを感じたミキオ班に、緊張が走る。

「強行突破するか?」

ギンが軍用車を運転しているミキオに提案するが、ミキオが却下して急ブレーキをかける。ハナビ班も間一髪のところブレーキを踏んで衝突を避ける。

「駄目だ… 突破できない…! あいつら、今までの鬼とはどこか違う…! まるで… 『軍隊』だ…」

ミキオは表情が一気に険しくなる。

「軍隊って… さすがにねぇだろ。 梅田の時を思い出せって あいつら、奇襲とかはしてきたけど、基本的に動きは素人だったじゃねぇか。力に任せた乱暴な動きでさ。」

「それに、だいぶ距離がある。こっちにはギンがいるから、敵も距離を詰めてこれないし何より、俺とハナビがいるんだ。よっぽどの鬼じゃない限り、俺たちは負けねぇぞ」

ヤマトは慢心しているわけではない。冷静に、こちらに分があると判断したのだ。

「ちょっと、危ないんだけど…! 何で急停止するのかな…? バカなの?」

「バカはあんたでしょ」

ガムを噛んでいたせいでおもいっきり舌をかんだイバラが降車していきなり理不尽にキレ散らかすが、ゆきに諭される。

「お前ら!何があった?」

運転席から降りてきたハナビがミキオ班に話しかけるが、ミキオの答えを聞く前にハナビは察した。

「あぁー… こりゃまずいかもな…」

「マジかよハナビ! あんな奴ら大したことないって! 陣形みたいなの組んでるからそれっぽく見えるだけだって!」

ヤマトはハナビが想像と違う反応をしたことにすこし戸惑って、ムキになる。

「いや… 今回ばかりはマジでまずいぞ…」

それでも、ハナビは冷静に分析した。

その結果、逆にヤマトの闘争心に火が付き、無謀にも一人で突っ走ってしまった。

「なに怖気づいてんだよハナビまで…! もういい!」

「俺が証明してやるよ!」

その時、信じられない光景が

「危ない!」

ミキオがヤマトの前に立ち大盾でスナイパーライフルの弾を防ぐ。

「ハァ… ハァ…」

ヤマトはミキオがいなかったら死んでいた。

「ごめn…」

自分の命を大切にしなかったことをミキオに謝ろうとしたヤマトだったが、間髪入れず次の弾丸が来る。

それも大盾で防いだミキオは、なのはに煙幕の指示を出す。

「なのは!」

「了解!」

煙幕の中で体制を整えるミキオとハナビたち。

「あいつら銃なんて使えんのかよ…! 聞いてねぇぞ…!」ミキオが珍しく感情的になるが、ハナビが冷静になるよう促す。

「落ち着け!とにかく車の裏に隠れるぞ!」

軍用車を盾にして作戦を考えるが、橋を渡るのはあまり現実的ではない。

そこでヤマトが提案する。

「俺たちが裏から回ってあいつらをぶちのめすから、ギンたちはここで時間を稼いでくれ!」

「俺とハナビ!ミキオ班長とイバラで2手に分かれるから! できる限り耐えてくれ!」

「了解」

「お前にしてはいい案だな」

ギンが素直に感心するが、皮肉にしか聞こえない。

「うるせぇ!」

「行くぞ!作戦開始だ!」


5話に続く

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