第3話「束の間の休息」(修正済み)
翌朝、ヤマトは誰よりも早く目を覚ましまだ辺りが薄暗い中一人で梅田の近くまで散歩した。朝日が昇る時、ヤマトは大阪駅沿いの線路に立って絶景に圧倒されていた。
(──やべぇ… 何にも考えられねぇ… ここって… こんなにキレイだったっけ… あたまが… 回らない…)
昨日の激闘が嘘のように感じられるほど、世界は驚くほど静かで、美しかった。鳥の鳴き声とヤマトの足音だけが静かな朝の世界に響き渡る。
朝の新鮮な空気を吸ったヤマトはキャンプへ戻って朝食を済まし、班のみんなと軍用車で梅田の調査兼観光に出かける。
「早くしろ!行くぞ!ギン!」
「ああ」
心なしか、ギンの声がいつもより暖かく聞こえた。
4人で車に乗っているのに誰1人声を出さなかったのは、この世界の美しさに圧倒されていたからだ。
2度と見ることができないかもしれない景色を、1秒でも長くこの目に焼き付けておきたかったからだ。
梅田に着くとヤマトたちは大阪駅へ向かった。
ガラスの破片が落ちてくると危ないので、防刃フードを被って大阪駅内を探索する。
「マジで誰も居ねぇんだな」
「いたら困るよ…」
「確かに… 俺たち軽武装だから鬼がいたら殺されるかもな…」
ヤマトの冗談に、気弱ななのはの顔が曇る。
それを察したヤマトが、恥ずかしそうに訂正する。
「じょ 冗談だって…! 鬼はもういないよ!それに… それに、なのはちゃんは! 俺が死んでも守るから…」
ヤマトの発言に赤面しながらなのはが言う。
「ありがとうヤマト君… でも… 死ぬときは一緒だから…」
(そ、それって…!?いや、今のはそうゆうのじゃねぇだろ… いや、でも…!!)
なのはの無意識の発言にヤマトは勝手に思いあがっていた
そんなヤマトをあきれてみるミキオ。
「お前ら… イチャイチャするのは勝手だが、あんま突っ走んなよ…」
ミキオが班長として2人に釘をさす。
「してねーよ!!それに、もう突っ走ったりしないよ… 俺達は仲間なんだから…」
ヤマトが少し恥ずかしそうにそう言った。
その言葉を聞いたミキオが嬉しそうにほほ笑む
「フッ… ならいいさ」
「たまにはいいこと言うんだな… ヤマト」
ギンがめずらしく冗談交じりにそう言った。
「うるせぇ!」
ヤマトが間髪入れずにツッコむ。
そんな珍しい光景を見たミキオとなのはは顔を合わせてほほ笑んだ。
人一人居ない静かな駅は不思議そのものだった。いろいろな店を見て回っていると、ヤマトがある提案をする。
「なぁ、みんなで写真撮らねぇ?」
そういってヤマトがポケットから小さなカメラを取り出した。
「いいね!私写真撮るの久しぶりだな…」
「俺もだ」
はしゃぐなのはとミキオ
「てゆうかヤマト… お前それどっから持ってきたんだ…?」
なぜか貴重なカメラを持っているヤマトにミキオが質問する。
「土木部隊から借りて来たんだよ ちゃんと返すって」
「ちゃんと許可とってんだろうな…?」
ミキオが冗談交じりに疑いの眼差しでじっとヤマトを見つめる。
「とってねぇけど」
ヤマトは悪びれもせずに澄ました顔でそう言った。
その場にいた全員に衝撃が走る。
「クソッ… 頭痛が…」
ミキオが頭をかかえる。
「だ、だいじょうぶなの…?それ…?」
なのはも心配そうにしているが、ヤマトはなぜか自信にあふれかえっていた。
「大丈夫大丈夫!ちゃんと心を込めて謝罪すれば許してくれるって!」
そんなヤマトにギンが釘をさす。
「ふざけるなヤマト。お前のやってることは重大な規律違反だ。これは観光じゃないんだ。任務に集t…」
ギンが言い終わる前にヤマトがギンの肩に腕を絡ませる。
「いいじゃん、肩の荷下ろせって、ギン!鬼はもういねぇんだしさ!俺は、お前らと撮りたいんだよ!」
急にくっついてきたヤマトを軽くあしらいながらギンは不機嫌そうにヤマトの提案を断った。
「俺はいい…」
そんなギンのことは一切気にせずに、ヤマトは強引にみんなを寄せて写真を撮る。
「いいから!ほら、みんな集まって!」
静かな駅構内に、シャッターの音が響き渡る。まるで本当にこの空間を切り取ったかのような、暖かくて、美しい写真が撮れた。
「おおお!いい感じにとれたね!」
「ヤマト!お前写真撮るのうまいな!」
「へへへ… そうかな」
ミキオとなのはに褒められてまんざらでもなさそうなヤマト
「…いい写真だな」
ギンが意外な言葉をぼそっと呟いた。それを聞いヤマトは、満面の笑みを浮かべて喜んだ。
「ああ!」
4話に続く
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