第一話 ②

 次の日、朝目覚めて朝の会へ向かった。そこで目の当たりにしたのは昨日の彼女らだった。


「皆さんおはようございます。ここにいるこの子達は昨日変化があった子達です。彼女らは「個性」と言う各自別々の能力を持つようになりました。貴方達も「個性」という力を発揮させてみてください。最後に……彼女らとペアを組んだ人は直ぐに集まってくださいね、これで朝の集会を終わりにしますね、ありがとうございました。」


指名されたように主人公の事が言われ、その指示に従わずに無視しようとその場を離れようとした時、ステージに居たはずの彼女は彼の腕を掴んで連れて行った。


「君がこの子とのペアかい?」


「私はそうですよ……」


「俺に何させる気だ、大体あんた達いつも何やってるんだよ」


「短気な性格か、反抗したところで意味ないぞ、小僧」


「呼び寄せといてなんだよ、お前ら」


「直ぐに分かることさ、大丈夫。我々に任せてくれば……」


(コイツはただ事じゃねぇぞ、何されるかわからねぇ)


(面白い実験体だ。彼女はこんな奴と繋がりがあるわけない)


「まぁいい、私達に着いてきなさい。部屋へ案内しますよ」


「ふーん、ご丁寧にありがとな」


「彼女に部屋は教えてありますので一緒に行動してください」


「え!?彼女と、はい…わかりましたよ」


「……さぁ行くわよ……」


博士は別れ、二人は部屋にたどり着くまで長い廊下を歩く。


「どうかね、彼女の変化は?」


「現在の状態は正常ですが心拍数が徐々に上がってきてます」


「やはり……あの腹立たしいガキはどうなんだ」


「それなんですが……読み込めない状態になってまして」


「何だと!?あの多くを皆に処方して投薬をさせたろ!一週間あるかないかで解毒したとでも言うのか」


「あの薬は貴女方の指令や命令をしっかりと実行するような洗脳型でしてね、もうひとつ投薬したはずですが彼の体からは検出出来ませんでした」


「くぬぬ……脳内のデータを送る信号もやられたのか?」


「……はい、そうですよ。彼は我々を……」


「そんな奴と優秀な彼女で反応が起きたとでも言うのか?」


「そんなこと絶対にあり得ません。データも検出無いですよ」


「アイツの秘密が終わったらすぐさま処分でよろしいかな?」


「新しい個体にそんなことをさせてはいけません。せめて彼のデータの解析をしなければいけませんからね」


「俺の気に食わない奴は全員処罰対象である。わかったな」


「彼女も……奴についてのデータも全く無かったです……」


「クソッタレが、アイツめ……」


「なんとも言えませんがしばらく監視しましょ」


監視カメラからの画面を眺める数人の背景から、二人の歩く廊下に変わる。


「君、昨日集められて何かあったの?」


「……。」


「他の人達もその後どうしたの?」


「……」


「集められた人達……全員広場には居なかったよ」


「……」


「さっきから黙ってるけど元気ないね、どうしたの?」


「……。」

「あとね、最近誰かの声が良く頭に聞こえるんだ。不思議だよ」


「……!?それ私かもしれない……」


「?」


「最近、誰かに頭で考えたメッセージを送れるようになったけど……誰かは分からなかったの」


「それが俺だったってことなのか?」


「そうゆうことね、試しに今やり取りしてみる」


「いいよ、頭が痛くなるから」


「男のクセに……体力は私よりあるでしょ」


「やめとくよ、何か緊急とか緊迫した時とかにやってくれよ」


「そうね……貴方としか出来ないから。特別ね」


「それにしても、何で俺なんか……」


「仕方ないじゃない、博士はやれって言ってるのよ」


「博士!?君といた人かい?」


「ええ、アイツのせいで私は……」


「何かあったの?」

「…これは他に聞かれると厄介だから使うわよ」


彼女は頭を指差し、主人公に伝えたが嫌な顔だった。


「聞こえるでしょ?」


「……」


「話せるはずだから大丈夫」


「わかった。ってあれ?心の声が聞こえる感じなの?」


「そうみたいね、で昨日何があったか話すわ」

「お願い、します……」


「昨日、貴方とペア組んでエネルギーの実験したでしょ。それで反応のあった人がカプセル入りの変な液体に何か流されて身体に変化が皆起きた.私は何も無かったんだけど友達とかは獣?みたいに変化起きちゃってね、その後呼び出されてひたすら私達は人体実験されたの。それから特別な部屋に行かされて……とても恐かったんだよ」


「そうだったの……良く耐えた、頑張ったね」


「私、私…本当に怖かった。助けて欲しかったよ」

彼女は主人公に見られないように顔を押さえる。


「……どんなことがあろうと僕は君の味方だよ」


「……でも大丈夫、貴方と……」


「何かやりたいこととかある?」


「いいえ、私は一刻も早く元の暮らしに戻りたいの」


「もとの暮らし?ここに居る前の暮らしかな?」


「そうね、家族も居たし自由だったなぁ…」


「僕にはそんなことないや、何かあったのかもしれないけどね」


「私、他の人より優秀とか天才とか変わってるって言われるけど貴方も近いでしょ、あまり大きなことはしないけどおかしなところとか変わってるところ沢山あるでしょ」


「そうかい?自分には全く分からないよ」


「私が言うからそうに決まってるよ」


「じゃあ、そうなのか……」


「そうね、もうすぐ着くから準備してね」


「牢獄か地獄の日々が始まるのか……最悪だ…」


「私も居るから安心してよ、一緒に頑張ろう」


「明るく言うほうが凄いよ、君」


頭の中で会話を進めたがやけに話が通じ会う、何か近いものを感じた主人公


「ここよ、新しい部屋は」


「へぇー、お邪魔しまーす」


いざドアノブに手を掛けてゆっくりと回すとそこには高級感ある部屋だった。冷蔵庫、ソファー、窓、テーブル、机など大人数で暮らせる豪華な部屋になっており、注文制で好きな物を呼び出すことのできるルームサービスも備わっている。


「スゲェー、ここに住めるのかよ」


「ええ、そうよ実験体として暮らすにはね」


「それが条件かよ……他に人はいるよな?」


「いいえ、今は二人だけよ。数日後とかやって来るかもしれないけど、基本私達だけよ」


「二人だけ?冗談じゃねぇ、お前とずっと居れって言うのかよ」 


「しょうがないじゃない、博士の絶対命令よ」


「何考えてるんだか……まぁ、ヨロシクな」


「こちらこそよろしくね、」


「それにしでも豪華過ぎない?」


部屋に入ってきたところをモニターは監視しており、そのカメラに内蔵されている心拍数や体温などを研究員に知らせる機能もあった。


「部屋に入る前の彼女の様子は?」


「正常です」


「部屋に入った後は?」


「数値が上がっております」 


「何故だ?」


「部屋の暖房ではないでしょうか?心拍数も正常値ですから」


「そうか……もうしばらくして監視しようか」


「あの薬の準備も今、行っているので御安心を」


「心配などしない、何故?彼と反応したのかが疑問だからだ」


「ですね……他の人達はどうします?」


「別の奴にやらせるから多分大丈夫だろうな、このペアを優先して研究してくれ。この子達は厳重にしっかりと」


「はい!分かりましたよ、引き続き監視します」


 研究員の一人が時計の時間を確認して部屋を出る。片方にアタッシュケースを持って廊下へと歩き出した。


「おや?ここは関係者以外立入禁止の場だよ、何で君みたいな児童が紛れ込んでいる?」 

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