第9話 PV
「投稿したら”読者からの反応”をみてみるといいわよ。PV数やフォロワー数が解るのよ」
俺はドキドキしながら”読者からの反応”を見た。
「これは……」
真っ白である。
「まだ誰も来てないのよ。今あげたばかりだから落ち込むことないわ」
俺は内心がっかりしたのと、自身が書いた小説を初めて人にきちんと読んでもらえる事に期待と高揚感が合わさり気もそぞろだった。
――ピンポンパンポーン――。
下校の時刻になりました生徒の皆さんは速やかに下校してください。♪~。
下校を促すアナウンスが流れた。
「じゃぁ、今日はここまでにして皆さん帰りましょう!!」
「はいはいはいはぁーい!! 杏奈、今日もお茶会したいですぅ~!!」
「私は大丈夫よ」と湊。
「俺も用事ないから大丈夫だけど……。」
「ボクも大丈夫だけど、ボクが行っても喋ることないですヨ」
(そうなんだよなぁ)と思った。
男子が女子のお茶会のノリについていける気がしない。
「私は駄目ね。」と一禾。
「どうしてですかぁ~」杏奈が泣きだしそうな、だみ声で言った。
「電気屋に行ってノートパソコンを見に行くのよ。必要でしょ」
「確かにこれからの活動を考えればあった方がいいな」俺は同調した。
「一理あるわね」湊が顎に手をやった。
「じゃぁ、皆で電気屋にいくのらぁ~♪」
「それならボクも暇なんで行きますヨ」
*** 電気屋 ***
そこにはノートパソコンがずらっと並べられていた。
「結構高いな……」
10万、20万する物が並んでいる。
俺は恐ろしくなった。中学生の小遣いでは到底買えない。
湊が「WEBを開いて文章を書くだけなら低スペックのパソコンで十分よね?」と言った。
それでも安くて5万円はする。
「あっちにアウトレットと中古品のコーナーがあるヨ」
啓太郎に連れられて移動すると、そこには何とか手に入りそうな額のノートパソコンが並んでいた。
「一番安くても17800円か……。お年玉貯金を崩せば買えるけど――」
「けどぉ?」杏奈が首をひねった。
「知らない人が使っていたと思うと、ちょっとヤダ」
俺は微妙に潔癖症だった。
「それになにか理由が有って要らないってなった物だろ。トラブルを抱えてそうで……」
「やっぱり、新品の5万円のやつがいいのかな?」湊が言う
「ボクならそうしますケド」啓太郎も同意した。
「あれれれぇ~? 一禾ちゃんどこに行っちゃったのぉ~?」
一禾の姿が見えない。
「お買い上げ有難うございました」
「買ったわ。帰りましょう」
一禾は現金で20万円の新品のノートパソコンを購入していた。
「ブ、ブルジュアだー!!!!」
(一体どこのご令嬢だよ……)
*** 葛間家 二階 自室 ***
家に着くと俺はスマホでカキコムのサイトを開いた。
読者の反応を見る。
するとさっきとは違う事に気が付いた。
PV 2。
「おぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」
にだとおおおおおおお!!!!???
会心の出来だったはずの俺の――そいつは死神!――の第一話が2。
「すごいじゃないか!!」
俺は戦慄を覚えた。俺の書いた小説のページが2回開かれている。
興奮が収まらない。感動すら覚える。
身もだえしてベットでのたうち回った。
すると階下から母親が呼ぶ声がする。
「創太ー。おりてらっしゃーい」
「いまいそがしー!」
「そういわずに、お兄ちゃんが帰って来てるのよー」
「アニキが??」
俺は急いで階段を下りた。
「やぁ、久しぶりだな。ずいぶん大きくなった」
「正月以来だから4カ月ぶり位だね。そんなに変わってないよ」
アニキの名は
俺と12歳離れたサラリーマンである。
「なぁ、アニキ要らないパソコン持ってないか?」
アニキはハイスペックパソコンでMMORPGを嗜むゲーマーだ。
身内のパソコンなら安心だろうと踏んで貰えないか交渉しようと思いついたのだ。
「近いうちに新しいパソコン買うから今使っているのを処分する予定だけどどうした?」
「それ、譲ってくれないか? 実は文芸同好会に入って家で小説を書くのにパソコンが欲しいんだ」
「おぉ!! 創太は小説を書くのか!! それはすごいな。中古なんて言わずに新しいの買ってやるよ」
「いいのかアニキ!!」
「あぁ、可愛い弟のためだ。一肌脱ごう!!」
「よかったわね、創太。じゃぁ今日はお兄ちゃんの好物のハンバーグ作っちゃおうかしら」
「やったー! 母さんありがとう!!」
俺は大はしゃぎした。
「あら、お兄ちゃんより創太の方が喜んでるじゃない。ウフフ」
こうして俺はパソコンの入手手段を得た。
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