新任務


 とある軍の指令室に一人の男が呼び出されていた。

 その男の名前は上野泰斗。

 大変革の日、死霊神と契約を行い上位Ⅲの力を手に入れた世界平和維持機構独立軍の中でも最上位に位置する力を持った契約者であり、大変革以前以降含め数多の戦場で活躍し現在は17歳という若さで小佐にまで登り詰めたエリート中のエリートである。


「ルグルス大佐、上野泰斗ただいま参りました」

 指令室の椅子に座るは見た目30代前半の筋骨隆々な男、しかし実際は大変革によって目覚めた覚醒者であり、実年齢は70後半、主に自己再生と身体能力強化に長けた上位Ⅰの能力者である(覚醒者能力が上位Ⅰなだけど、技術の面を考慮しての本当の力は最上位Ⅱ)。

 

「そんなにかしこまらずとも良い。戦場で共に暴れ回った中じゃろ」


「まあ、それもそうっすね。それで?ルグルスさん今日はどうして俺を呼んだんですか?一応まだ未成年なんで晩酌は付き合えないっすよ」


「いや、まあ。何じゃ、実はお主に一つ特殊な任務を授けたいと思って今日は呼んだのじゃ」


「特殊な任務ですか」


「ああ。そうじゃ。内容はとある少女の護衛じゃ」


「いや、護衛ってルグルスさん俺の力知ってますよね?護衛なんかさせるよりも普通に戦場で暴れさせた方が良い結果挙げられますよ」


「それはまあそうじゃな。だが最近は世界超能力者組合のおかげで戦争も減ってきて確実に平和になってきておるからのう。それは薄々お主も感じておるじゃろ」


「それはまあ、そうっすね。とはいえ一応少佐である俺が護衛につかなければいけない少女ってどれだけ偉い立場にある人間なんですか?」


 世界平和維持機構独立軍の少佐である主人公の立場を分かりやすく言うならば大企業の本社の部長クラスであり、基本年収だけで億を超え、数多の特権を与えられ、基本的には部下に命令を出来る立場な普通に偉い人間である。


「それがのう、聞いて驚くのじゃ。相手は天然の覚醒者、それもただの覚醒者ではない最上位Ⅰの更にその上である神位に該当する神覚者の疑いのある少女じゃ」


 神位、それは神に匹敵する力を持った者に与えられる称号であり、文字通りたった一人で神に並ぶのである。

 下手な大国の軍事力と=ではなく神>軍事力という記号を付けることが出来る一騎当千を超える一騎当国な存在である。

 その存在価値たるや比類なきものであり、誰もがその力を欲し求めるもののである。

 そんな神位であるが、最上位神に深く気に入られた上で全てを信仰に捧げることで獲得出来る契約者と、一切の契約もせず、純粋に己の力のみで覚醒した神覚者に分かれる。

 契約者はその性質上神によって生殺与奪の権利を握られ数多の戒律に拘束されてしまい自由意思がないことがほとんどであるが、神覚者は違う。

 自力で覚醒した神覚者は何者にも縛られずその圧倒的な神の様な、否、神の力を自分の意思だけで自由に振える。振えてしまう。

 契約者と神覚者では同じ力であっても重要度と危険度には天と地程の差があるのだ。

 

「神覚者の疑いがある少女っすか。それはまあ確かに俺レベルの人材が護衛についた方がいいっすね。とはいえ護衛っていっても俺そういうのしたことないですし、もっと別の良い人材いたんじゃないっすか?

 というか別に護衛じゃなくて監視して可能ならスカウトした方が良くないっすか?多少強引な手を使っても神覚者の疑いのある少女を仲間に出来たるメリットは大きいっすよね?」


「それがのう、そうもいかない事情があってだな。相手があの千王グループの会長の娘なのじゃ」

 

「千王グループって、ここのスポンサーであり世界で5本の指に入る子供でも知ってる超超超大企業のあの千王グループっすか?」


「そうなのじゃ。だから下手なことは出来ないのじゃ」


「なるほど。それなら余計に俺みたいな素人じゃなく最も護衛に特化した人材を送った方が良いと思いますけど?」


「儂もそう思う。じゃが、実はその少女が学園に通っていてじゃな。学園内で護衛を連れ込むというのも難しく、件の少女が怖がるから年上の男の護衛の派遣は出来ず、条件を満たしている女性の護衛はほとんどが別の任務にあたっていて動けず。

 どうしようかと悩んでおったら、少女の方が護衛を付けるのは目立つから辞めてくれと要望があったのじゃ。

 結果的に千王グループの会長様から少女に分からないように護衛を付けろと命令をされてな。断れるはずもなく了承してしまったのじゃ。

 という訳で上野泰斗よ。丁度お主は17歳の神覚者の疑いのある少女と同い年で同じ学年になれる。

 転校生という形でもう枠はねじ込んであるから明日からよろしく頼むぞ」


「ん?いや?え?明日?いや、え?というか学園って?え今更俺学園に行くの、何処の?いやというか待ってくれよ明日って?流石に急過ぎない?」


「じゃが、明日から平日になってしまうしのう。少女の護衛が必要なんじゃ。今現在これはお主にしか出来ぬ任務じゃ頑張るのじゃぞ。

 それに儂としても戦いばかりだったお主に学園生活というのを楽しんで貰いたいという思いはあるしのう」


「ルグルスさん・・・分かりました。その任務謹んで受けさせていただきます」


「うむ。頼んだのじゃ。今度酒を奢ってやるわい」


「いや、だから、ルグルスさん俺未成年ですって」

 



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