第0.9話 出ずる純黒


 




 ない......



 はずがない......



 生まれてこれるはずがない......




 世界は『コレ』の存在を許可していない。



 何よりも早く、何からも望まれぬモヤが出でた。



 暗闇に蠢く『純黒』


 暗闇の中で暗黒のよりも黒い意思

 この世で最も黒い黒。



 黒すぎるあまり、見る事さえできぬ絶対の黒。

 世界でもっとも弱い絶底。


 それはこの世の最低地点を遥かに下回っている。



 肉もない。ただの意志。


 存在への意思。



 不可能なのだ。存在をすること自体が不可能。

 しかし『コレ』は何故か在った。


 本物の『 』の中より出でたのだ。




 それは弱者達の総意であり、始まりの犠牲者。

 灰の神でもあり、全ての前例。


 この世の負を全て背負い、それを己が負で染め上げる最狂の意思。

 最狂の精神を持ち、不可能を体現した得体もない何か。





 灰にさえなれなんだ許されぬ意思。

 皆、畏怖と畏敬の念を込めて呼ぶ。



【火の無きところに在った灰】と。



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