戦いの後、気を失っていた理亜たちに回復魔法やポーションを飲ませて応急処置をする。


 三人共、命に別状はなく、無事目を覚ました。


「うぅ……。いたた……」

「理亜、大丈夫か?」

「な、なんとか……。あ、こぶになってる」


 だが、理亜は頭を強くぶつけたらしく、足元がふらついていたので肩を貸して歩く。


 ボロボロになった魔王城から出ると、王国の騎士や兵士たちが駆け寄ってくる。


「やりましたね勇者様!」

「これで世界に平和が戻ります!」


 オークやニホンジカといった人じゃないものが押し寄せてくる。


 俺たちはいったい何に祝われているのだろう……?

 人類と魔物の戦いじゃなかったっけ?


 集まって来た顔触れを見ると、人間の数が少なく人外の比率が高かった。


 人体模型が前に出てきて優美に――、所作だけは優美にお辞儀をする。


「勇者様、陛下が王城でお待ちです。どうぞこちらへ。私がご案内致します」


 城下町が歓声に沸く中を、人体模型が王城まで先導してくれた。







 王城の謁見の間にやって来るとブニング王が歓迎してくる。


「よくぞ魔王を倒してくれた!そなたらこそ救世主じゃ!」


 ブニング王が両手を広げ、満面の笑みを浮かべている。


「魔王は強く、あのままでは人類は負けていただろう。それを見事倒したのは称賛に値する。国を、いや世界を代表して礼を言うぞ、勇者たちよ!」


 確かに魔王は手強かった。魔王軍幹部とは変な戦い方しかしてこなかったのもあって、余計に強く感じた。


 土壇場で俺がデバッグ魔法を思い出さなかったら、やられていた可能性が高い。

 間一髪だったな。


「本当によくやってくれた、さすがは勇者だ!」

「い、いやあ、それほどでも」


 ブニング王が絶賛してくる。俺たちの目的は無事に元の世界に帰ることだが、この世界を救うことができたのも僥倖だろう。


 勇者の面目躍如は果たせただろうか。


「さて、勇者よ。実はそなたに紹介したい者がいる」

「俺に紹介したい人?」

「『アデート』、こちらへ」


 国王が舞台袖に視線を向けると、頭にティアラをつけた白いドレスの人物が入ってくる。


 誰だろうと思って目を向けると、その人は中肉中背で茶色の短髪にそばかすをした――若い男性の顔をしていた。


 ――この世界に来た時に見た、ドッペルゲンガーの騎士じゃねーか!!


 どんだけ使い回してんだ小学生時代の俺!?

 また同じ顔の人間が増えたんですけど!?


「お初にお目にかかります、勇者様。私はアデート・ハーティクルと申します」


 高座に昇り王の隣に立った男せ――女性?はドレスの裾を軽く持ち上げてカーテシーをして自己紹介をする。


 ティアラやドレスを着ているのを見るに、この国の姫とかなのだろうか?


 名前はちゃんと付けているくせに、どうして外見は適当に設定しているのか。

 中肉中背の男性がドレスアップしている姿は違和感しかない……。


 困惑している俺にブニング王が告げる。


「褒美として私の娘――王女の婿になる権利をやろう」

「え?いらない」


 ブニング王の言葉に即答してしまう。


「何だと!?拒否するとは何事だ!?私の娘に文句でもあるのか!」


 文句しかねーよ!婿ってことはそのドッペルゲンガーと結婚するって意味だろ!


「何でいきなり結婚しなきゃならないんだ!?」


 敬語を使うのも忘れて俺はブニング王の提案を断る。


「王女の婿になれば、次はそなたが次の国王なのだぞ!」

「嫌だ!百鬼夜行の一員になんてなりたくない!」


 妖怪の王とかぬらりひょんか?

 何の罰ゲームだ!?絶対になりたくない!


 世界を救った人間に対する仕打ちじゃねぇ。本当に碌でもないなこの世界……。


「この国にとってはこれ以上ない褒美なのだぞ!」

「褒美!?これが!?そんな褒美はいらねーよ!!」


 そう叫ぶと背後で雷が弾けた様な音がする。


 驚いて後ろを振り返るとそこには魔王城でエンデか現れた時に見た光の粒子が集まった銀河のような渦があった。


 もしかして、これは転移の魔法か?

 このタイミングで現れたってことは…!


「理亜!あの渦に飛び込むぞ!」

「え!?大丈夫なの!?」


 理亜は戸惑っているが、この自作ゲームのエンディングは『国王からの褒美を受け取らず、勇者は故郷に帰る』というものだ。


 恐らく出現したタイミングを考えれば、あの光の渦に入れば元の世界に帰れるはず!


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