魔王(2)
「みんな!?大丈夫か!?」
理亜たちの安否が気になるが魔王に隙を見せる訳にはいかず、再び剣を構える。
「フン、蓋を開けてみればこの程度か。勇者の加護とやらはあるみたいだが、まるで技術が足りていない。戦いにおいては素人のようだな」
魔王の言葉に内心で歯嚙みする。
奴の言う通り、思い返してみれば今までまともに戦った回数が少ない。
魔王軍の幹部たちとはまともに戦ったとは言い難い勝ち方をしている。道中も装甲車で駆け抜けたりして戦闘回数は少ない。その数少ない魔物との戦いも相手がバグっていたりで、良い鍛錬になったとも言い辛い。
ゲームクリアを優先していたせいで、俺たちは圧倒的に戦闘経験が足りていないことに気が付いた。
経験不足なのに突っ走っしてきた弊害か……!
今まではそれでも何とかなっていたが、小細工が効かないような強い相手に対しては苦戦を強いられていた。
「それでも負ける訳にはいかないんだよ…!」
俺は魔王に向かって駆け出す。
右手にある勇者の紋章が光り出した。
黄金の光を身に纏い、一気に加速する。
「む?」
一瞬で距離が詰まり、訝しげな表情の魔王に向かって剣を振り抜く。
「はあっ!」
しかし、切り上げた剣は魔王を完全には捉えることができなかった。
直前に魔王が身体を後ろに引き、ローブや皮膚を切り裂いたが、浅い傷を負わせる程度で終わってしまった。
「興味深い力だ。勇者だけが使える能力か?少し驚いた。だが、余を倒せる者など存在しない。余こそが最も強い魔導神なのだからな!」
魔王がカウンター気味に氷の魔法を放ってくる。鋭利に尖った氷塊を絶え間なく飛ばしてきたので、下がるしかなかった。
数が多く、全てを避けることができなかったため、氷の短剣が体を掠めていく。
その内の一本が足を切り裂いた。
「いっ!?っつうう!!」
痛みで足が縺れて転びそうになったが、何とか態勢を立て直す。
飛び退くと同時に魔法が殺到し、立っていた場所の石畳が粉々に砕かれた。
「どうした勇者!それで限界か!」
魔王が嘲笑うように腕を振るうと、短剣の数が更に増える。
氷の短剣を避けながら歯を食いしばり半壊した広間を走り回る。
「くそっ…!どうしたらいい!?」
高威力の魔法に同時使用。おまけに身体能力も高く、近づいて剣を振っても避けられる。
ゲームを作っていた時の俺はどうやってこんな強い魔王を倒す想定だったんだ?
ラスボスだからと強さを盛りやがって!
畜生、どうしてテストプレイをしなかったんだ!
テストプレイさえしていればこんな強いラスボスが生まれることも、戦士がペンギンになることも、シスターがクリーチャーになることもなかったのに!!
「いや、待て……」
―――テストプレイ?
「…………あった!思い出したぞ!魔王を倒す方法を!」
絶体絶命の中、希望を見出した。
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