辻斬り
「気を付けろ。ここからが本番だ」
グリドが真剣な声で装甲車のドアを開けて外に出て、周囲を警戒している。
俺もドアを開けて魔王城の床に足を着けようとし、何かを踏んだ。
「ん?」
ぐにゃりと絨毯とも違う何かふわふわとした感触を疑問に思い、足元を見ると灰色の毛玉が倒れていた。
「な、何だ!?」
驚いて飛び退く。
踏んでしまった場所に誰かが倒れていた。
装甲車で突撃した際に一緒に引いてしまったのか?
その誰かは全身を灰色の毛皮で覆い、狼と人を混ぜたような見た目をしていた。
人狼というものだろうか?
ふらふらと覚束無い様子で立ち上がろうとする。無理をしているのかぷるぷると脚が震えていた。
「オ、オレは……、魔王軍……幹部、じゅ、獣狼の」
「チェストオォォ!!」
「ゴアァッ!?」
立ち上がろうとする瀕死の獣人を、俺は躊躇いなく切り捨てた。
どうやら既に身体が限界だったらしく、一撃で仕留めることができた。
崩れ落ちた人狼は黒い霧になって消えていく。
「前から思っていたが、お前さん、敵に対して本当に容赦ないな……」
グリドが俺の行動に少し引いていた。
「いやだって、魔王軍幹部とか言っていましたし…」
幹部となれば今までと同じく苦戦を強いられるかもしれない。
何か仕掛けてくる前に倒してしまった方が良いだろう。
「日月くんナイス!」
グリドとは対照的に理亜は特に気にした様子もなく、幹部を倒したことに喜んでいた。
理亜も俺と同じく戦いの誉れとか考えないタイプである。
『――貴様らが勇者たちか?随分とふざけた連中だな』
どこからか、声が聞こえた。
雷が弾ける様な音がし、広間の中心に光の粒子が集まった銀河を思わせるような渦が現れる。
その渦から背が高く異質な雰囲気を纏った異形の大男が出て来た。黒く裾の長いローブを身に付け、頭部からは捻じれ曲がった角が生えている。
周囲の空気が重苦しくなり、息が詰まった。
この感じは……!
「まさか、お前は……」
「そう、余がこの世界の新たな支配者。『魔導神エンデ』だ」
魔導神エンデ――このゲームのラスボスである魔王だ。
凄まじい重圧感を発し、相対しているだけで冷や汗が出てくる。
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