決闘
飲み物と鹿の乱舞を唖然と見ていると王都の方から騎士や兵士たちが増援にやって来る。
「王都住民の避難が完了しました!これより第五王宮騎士団、加勢いたします!」
「突撃いいいいいいいい!!」
「魔物共を蹴散らせ!」
重装備の騎士たち、そして何故かこけしとマーライオンが続いて走って来る。
王国の騎士たちが――騎士?……本当に騎士で良いんだよな?
……暫定騎士たちが魔王軍との決戦に駆けつけてくれたのだろう。
北門周辺の戦闘が激しくなっていく。
「……ええっと、これ私たちも戦った方がいいんだよね…?」
理亜が懐疑的に聞いてくるが、戸惑うのも無理はない。
とてもじゃないが人類と魔物の戦いに見えないのだから。
「た、多分…。って、理亜!後ろ!」
「え?」
「その命、貰い受ける!」
両手に剣を持った二刀流のマネキンが切り掛かってくる。
理亜は気づくのが遅れていて、避けるのが間に合いそうになかった。
俺は自分を盾にしてでも守ろうとしたが、先に横から飛び込んで来た何かが剣を受け止める。
「させぬ!」
二刀を止めた人物のマントが翻る。
それはマント以外何も着けておらず、体の前面が抉れて中の臓器の模型が丸見えになっている、学校で見たことのあるもの。
白銀の細剣――レイピアを携えた人体模型だった。
…………なんでそれを騎士にしたんだ過去の俺……。
人体模型はマネキンの二刀を弾き返すと、二人――いや、二体は距離を取る。
「美しいお嬢さん、私の後ろへ!」
人体模型は相手から目を離さず理亜に声を掛ける。
「え?う、うん…?私?いや、私たちも一緒に戦った方がいいんじゃ…?」
「ありがとうございます。ですが、勇ましい女性は嫌いではありませんが、ここは私に任せていただきたい」
人体模型に話しかけられた理亜が困惑している。
「マネキン……。やはり貴様とは因縁があるな」
知り合いだったのか人体模型がマネキンに話し掛けていた。
「フッ…。これも運命か、人体模型よ……。だが、今日でお前との因縁も終わらせてもらう」
二体とも何故か無駄に格好つけて向き合っていた。
と言うかマネキンと人体模型の因縁ってなんだよ。
そんな設定にした覚えはないんだが?
「華麗なる我が剣技、受けきれるか!」
「貴公が今まで戦ってきた中でもっと優美な剣士であることは認めるよう。だが、私も負ける訳にはいかない!」
マネキンが人体模型を優美だとか言っているが、何を基準に美しいと言っているのだろう……。内臓の形とか色とかだろうか?
人体模型と優美さは逆立ちしても一切結びつかない……。
「「いざ勝負!」」
レイピアで鋭い突きを繰り出す人体模型と、それを捌く二刀流のマネキン。
意味の分からない決闘を始めていた。
俺たちはいったい何を見せられているのだろう……。
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