魔女(2)
銃を構えて次から次へとゾンビを撃ち抜いていくが、予想以上にゾンビが増える速度が早く周囲にゾンビが溢れ返えってきた。
「このままではまずいな……」
ジリ貧になると思っていると、地面に散らばった弾丸が目に入った。
さっき俺がリロードするとき手古摺り、落としてしまった物だ。
「――そうだ!理亜!あそこに火の魔法を放ってくれ!」
「え?急に何!?」
「いいから頼む!周囲の連中は俺がなんとかする!」
理亜の周りにいたゾンビたちを剣で切り裂きながら、魔法を唱える時間を稼ぐ。
「わ、分かった!『バーニング』!」
理亜が魔法を地面に向かって放つと、炎で熱せられた弾丸が弾け飛んだ。
暴発して近くにいたゾンビたちに命中し、周囲が一掃される。どうやら重火器を使って撃たずとも、弾丸自体にアンデッドを滅する効果があるらしい。
上手く行った!
これならわざわざ狙いをつけて撃つ必要もなく、大量の弾丸を一度に放つことができるため、周囲を一掃できる!
「皆!持っている弾丸を地面にばら撒くんだ!」
俺の考えている事が分かったのか、三人共持っていた予備の弾丸を周囲にばら撒く。
「俺の傍に集まれ!『ワイドシールド』!」
俺が魔法で球形状に壁を貼る。勇者というのは色々な魔法に適性があるらしく、こういう結界のような防御魔法も使える。
「理亜!」
「おっけー!『バーニングストーム』!」
理亜が頷き、直ぐに炎の広範囲魔法を唱える。俺たちを中心に、嵐の様に炎の渦が吹き荒れる。
ゾンビたちを直接焼き尽くすには火力が足りなかったが、地面にばら撒かれた弾丸が熱せられて暴発し、四方八方に弾け飛んだ。
「ぎぃああああああああ!」
大量のゾンビたちが一掃され、更に魔女も巻き込まれたのか怯むのが見えた。
「今だ…!」
その隙に俺は魔女へと駆け出す。
ゾンビたちが倒れたせいで辺り一帯が黒い煙が立ち込めているため、視界が悪い。
だが、魔女が怯んでいる今が好機!
煙の中を突き進もうとすると銃弾が当たったと思われる、更に体が損壊したゾンビたちが見えた。
大半は倒したようだが殲滅はできなかったらしく、損壊しながらも生き残っていたゾンビたちが俺に噛みついてこようとする。
「残りは任せろ!」
「勇者様!行ってください!」
「お願いします!」
グリドとエリアスが俺とゾンビの残党たちとの間に入って相手を引き受けてくれる。
「やらせはせんぞおおおぉぉおお!」
ゾンビでは止めれないと判断したのか、距離が詰まると魔女が杖を振り上げる。
そこから黒い鳥のような形をした魔力の塊が打ち出された。
至近距離で放たれたせいか完全には躱すことができず、鳥の翼に触れた左腕が切り裂かれた。
「くっ!?だがこの程度なら!!」
体を捻って直撃を避け、魔女の元へと辿り着く。
剣を振り上げると同時に、右手の勇者の紋章が黄金に輝き出した。
魔王軍の幹部に反応しているのか?
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
渾身の力を込めて剣を振り降ろす。
流星の様に刃が煌き、無防備になっていたラフネの体を切り裂いた。
「があぁぁあああああ!!」
身体を両断されたラフネが憤怒の表情をしながら黒い霧になって消えていく。
最期に俺に向かって手を伸ばしてくるが、その手はこちらには届くことはなく、空を切った。
「おのれええぇぇえ………」
魔女が消え去ると、残っていたゾンビたちも霧になって霧散していく。
予想通り、生み出していた魔女を倒せばゾンビも消滅するらしい。
なんとか倒すことに成功すると、魔女がいた場所には火竜の時と同じく虹色に煌めく結晶――神器の欠片があった。
「何とかなったか……」
あのままだとゾンビの物量に押し潰されていたかもしれない。
博打に近い行動だったが、上手くいって助かった。
下手したら有効打である弾丸を捨てるだけで終わっていたからな。
それにしても、火竜の時もそうだが相変わらずまともに戦闘していないな、俺たち……。
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