廃村

 軍用キャンプにあった銃火器で俺たちも武装したが、中世ファンタジーの格好をしている俺たちに現代兵器である銃火器は違和感しかない。


 しかし、この装備を使えば廃村でのボス戦が楽になる。この際、見た目なんて気にしてはいられない。


 いや、むしろバグだらけのこの世界の住人と比べたらマシな恰好ではないだろうか?


「初めて使う武器だな。筒の先を敵に向けて、ここを手前に引けばいいんだよな?」


 斧を背負い、ショットガンを持っているペンギン姿のグリドを見ていると特に強く感じる。


 俺の恰好はましだと自分に言い聞かせて廃村に足を踏み入れると、どこからともなくゾンビの魔物が現れた。


「あああああああぁ……」

「う、うううぅ……」


 呻き声を漏らしながら窓や扉が壊れた家、崩れ落ちた小屋やら井戸から次々と這い出てきている。


 皮膚が腐り爛れて筋肉や骨が露出し、胴体からは内臓が零れ落ちそうになっている者もいた。


 肉が腐敗したような嫌な臭いが漂う。


「リアルなゾンビってグロいな」


「うん、けっこう怖い……」


 俺が溢した言葉に理亜が同意する。


 廃村自体がダンジョンになっており、村の規模は大きくないがそこかしこから絶え間なくゾンビたちが湧き出ていた。


 ここの魔王軍の幹部はそのゾンビたちも同時に相手しながら戦う集団戦となる。


「……いくぞ!」


 駆け出した俺たちに襲い掛かってくるゾンビたち。


 それらに向かってアサルトライフルを構え、引き金を引く。ゾンビなだけあって動きは緩慢で鈍いため、銃口を合わせるのは簡単だった。


「吹き飛べ!」


 耳が痛くなるような大きな発砲音を響かせ、ゾンビの体を弾丸が貫いていく。


 リアルだと銃火器は軍隊で訓練でもしない限りまともに扱うのは無理だと聞いたことがあるが、勇者の加護のおかげか身体能力が上がっていて扱うのに問題はない。重い反動が骨まで響くが、態勢を崩したりするようなことはなかった。


 アサルトライフルで撃ち抜くと、次々とゾンビたちは吹き飛び黒い霧となって消えていく。


 アンデッド系の魔物に特効の効果がある武器なだけあって、弾丸を数発撃ち込めばゾンビを倒すことができた。


 ……それにしてもファンタジー世界でなんで俺たちは銃火器で戦っているんだろう?


 勇者がアサルトライフルで魔物を倒していくとか、本当にこれでいいのだろうか?


 しかし、剣や魔法を使うよりもよっぽど有効的だった。近づく必要もないから、敵に反撃される恐れもない。


 ……深く考えたら駄目だ。


 今は戦いに集中しなくては。


「お願い、道を開けて!」


 理亜も拳銃を撃って立ち塞がるゾンビを倒していく。


 理亜が拳銃を使っている理由は連射するタイプの銃だと撃ったときの反動が辛いらしく、勇者の加護があっても抑えきれなかったからだ。


 拳銃も両手で構えて発砲している。


 それに関しては仕方ないので俺も何とも思わないが、問題はエリアスだった。

「神の御許に送らせていただきます」


 見た目は理亜と同じで華奢なのに、このシスターはサブマシンガンを片手で乱射していた。


 ……何故、その細腕で普通にサブマシンを使いこなしているのだろう?


 このシスターやっぱり色々とおかしい。


「どこかに魔女がいるはずです。見落とさないように注意してください」


 エリアスがゾンビを撃ち抜きながら言う。


 俺たちは魔女を探しながら、廃村の中を駆け抜ける。村の中心に近づくにつれてゾンビの数が多くなっていく。


 ゾンビの大群に囲まれたら大変だが、このゾンビたちは魔王軍の幹部が生み出している。幹部を倒さない限り無限に増殖する。


 俺たちは重火器で敵を蹴散らしながら移動する。


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