予想通りの予想外
あの後も何回か魔物と遭遇したが、エリアスも俺やグリドと合わせて前に出て戦っていた。首を伸ばして嚙み付いたり爪で切り裂いたりと、どれも魔物の攻撃方法だった。
敵を嚙み砕いたりバラバラに引き裂いたりしているのを見ると、ペンギンの戦士と言いどんどん色物パーティーになっていくなと考え込んでしまう。
ボス戦前なのに疲れてきた。
主に精神的に……。こんな調子で大丈夫だろうか?
廃村が遠くに見えてきた頃、更に気分をどん底に落とす出来事が起こった。
「……くるま?」
隣を歩いていた理亜が何かを発見する。
道から少し外れた雑木林の中に暗い緑色をした車――正確に言えば障害物や銃弾などから車体を防護するために装甲板で囲われた軍用車両だった。
「え、なんでこんなとこに車が!?」
「――ハハッ、本当に何でだろうなぁ……」
理亜は驚いた。
俺は遠い目をした。
装甲車の近くには石で囲った焚火と思わしき焼け跡に、耐久性が高そうな大き目のテント。周囲には土嚢袋を積み上げてある場所。
軍用キャンプ――時代錯誤のオーパーツがそこにはあった。
「もしやここは……」
驚いて固まっていた理愛を置いてエリアスがキャンプの中を見渡し、気になる物を見つけたのか歩き出す。
進行先には金属でできた頑強そうなボックス型のコンテナが地面に置かれている。
エリアスが箱に近づき迷うことなく手慣れた様子で留め具を外して蓋を開けると、中には銃火器が詰め込まれていた。
武骨な拳銃や散弾銃、ライフルに各種弾丸などが入っている。
「間違いありません。これらはアンデッド系の魔物を浄化する神の力が宿った聖なる武器です」
コンテナから取り出した銃火器を手に、エリアスが俺たちに解説する。
「廃村にいる魔王軍の幹部、名を『ラフネ』と言いますが、彼女はアンデッドの魔女です。配下もアンデッド系の魔物ですので、この武器を使えば有利に戦うことができるでしょう」
ゲーム的に言えばアンデッド系の魔物に大ダメージを与えられる特効武器ということになる。
「聖なる武器…?銃が…?」
理亜は意味の分からなさに引いていた。
これが狼男や吸血鬼などに効果があると言われている銀製の弾丸とかだったらまだ言い訳できるかもしれない。
しかし、このコンテナに入っているのは一般的な真鍮や鉛が使われている弾丸のはずだ。
御伽噺とかで出てくるファンタジー武器ではなく、まごうことなき現代兵器である。
……何故にこんなものが置いてあるかと言うと、ここのボス戦に関係がある。
廃村にいる魔王軍の幹部はアンデッドの魔女であり、配下のゾンビの魔物を大量にけしかけてくるのだ。
――安直だが当時の俺はゲームにゾンビが出てくるという事から、銃火器で戦うシーンを連想してしまったのだ。
ゲームを一通り作った後、思い付きでこの軍用キャンプを設置してしまった。
「恐らく、この場所は司祭様がご用意したのでしょう」
エリアスが言うには、このキャンプ地は先に廃村に向かった司祭が用意したものらしい。
何者なんだ司祭……。
もしかして何も考えずに適当に配置したせいで、辻褄を合わせるために勝手にストーリーが改変されたのだろうか?
いずれにせよ不自然であることに変わりないが。
「これで私も魔女と戦えます。司祭様、感謝致します」
エリアスが手を合わせて祈る様な仕草をするが、ツッコミどころ満載である。
そもそもエリアスはこれまでの戦闘も問題なくこなしている。ボス戦も銃がなくても普通に戦えるだろう。
理亜が感心した風にコンテナから黒く武骨な拳銃を取り出して、興味深そうに眺める。
「この世界に銃とか車とかあるんだ。勝手にないものだと思ってた」
それな。
中世ファンタジーの設定なのに、何で銃火器とか出てくるんだろう?
制作者は世界観をもっと大事にするべきである。
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