四人目(2)
「あの、あなたがウエストタウンで有名な聖職者の方ですか?」
「有名かどうかは分かりませんが、ウエストタウンの教会に仕えさせていただいております」
エリアスの受け答えも特におかしなところはない。
優し気な雰囲気の女性だった。
「俺たちはこれから廃村にいる魔王軍の幹部を倒しに行くんですが、良ければ貴女も協力していただけませんか?」
「魔王軍の幹部と戦うのですか?危険では?」
シスターが俺の言葉に目を丸くして驚く。
「俺たちは魔王の討伐が目的で旅をしていてな。この少年は勇者だ」
俺の説明にグリドが補足してくれる。
「貴方が勇者様?」
「ええ、そうです」
俺は頷いて右手の甲にある勇者の紋章を彼女に見せる。
「まあ!勇者様が現れるとは、これも神様の思し召しでしょうか」
シスターは紋章を見て神妙に頷く。
「実は少し前に司祭様が魔王軍の幹部を討伐すると言って、お一人で廃村に向かわれたのです」
何やら訳ありなのかと話を聞くと、ウエストタウンのとある司祭が廃村に住み着いた魔王軍の幹部を脅威に思い、このままだと町に被害が及ぶかもしれないと討伐に向かったそうだ。しかし、半日が経過してもまだ戻ってきていないらしい。
何故廃教会に仲間になるシスターがいるのかという細かい設定を忘れていたが、その話を聞いてそう言えばそんなストーリーだったと少し記憶が蘇る。
「私も同行しようとしたのですが、危険だからとここで待っているように言われまして……」
単身で乗り込むとか随分と思い切ったことするなその司祭。倒しに行くとしても、せめて複数人で行ったほうが良いのではないだろうか?
ストーリーを作ったのは俺だけど……。
「司祭は魔王軍幹部を一人で相手できるほど戦い慣れているのか?」
グリドも疑問に思っているらしい。
「司祭様はウエストタウンを守るため、今まで幾度も魔物とも戦っております。しかし、幹部を相手できるかと言うと少し難しいかもしれません」
まあ、司祭は戦うことが仕事じゃないしな。難しいと言われてもおかしくはない。
「なら、一緒に救援に向かいませんか?」
「勇者様がいらっしゃるなら心強いです。ぜひともお願い致します」
シスターが俺たちに笑顔でお辞儀をする。
「私はウエストタウンの教会のシスターで『エリアス』と申します。宜しくお願いしますね」
お辞儀をする所作は綺麗で違和感はない。
――バグってない!凄いまともだ!
当たり前のことなのに凄く感動してしまう……。神よ!感謝します!
感極まっていると理亜が別の何かと勘違いしたのか、俺を見る目が若干不審げになる。
「…ねぇ、もしかして美人さんだからって勧誘してない?」
「いや、そんなことないけど?」
「ほんとにぃ~?」
「それ言ったらペンギンを誘ったこととかどうなるだよ?」
「……あのときは日月くんの気が触れたんじゃないかと思ったよ」
まあ、事情を知らなかったらペンギンを仲間に誘うとか正気の沙汰じゃないよな。
「ついに正気なのは私だけになってしまったんじゃないかって」
理亜は疲れた顔で遠い目をしていた。
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