一応年長者
宙に浮いている女性従業員に案内された二人部屋。
魔物の襲撃などを気にせず済むため、久しぶりにゆっくりできる。
食事を取ってシャワーを浴びた後、グリドと部屋に戻ったが寝るには早い時間だったので、それぞれのベッドに腰掛けながら雑談していた。
「あの嬢ちゃん、チトセとはどういう関係なんだ?」
小さなサイドテーブルにランタンが置かれており、ランタンの中には黒い石――恐らく魔石だろうものに火を灯されていて部屋を照らしていた。どんなエネルギーにも代用可能って凄い便利だな。
「小学せ――えっと、6年前ぐらい前からの付き合いで、友達になりますかね」
小学生と言いそうになったが、この国に小学校なんて無かったなと思い直し、年数で答える。
「そんなに長いのか。それにしては苗字呼びなんだな」
「ま、まあちょっと機会がなかったというか」
気になっている女子の友達を名前で呼ぶのって、タイミングがなかったら難しいよな。付き合いが長いとは言え、急に名前呼びするのも違和感あるし。馴れ馴れしいと引かれたと思うとどうしても尻込みしてしまう。
「その割には俺のことは普通に名前で呼ぶじゃないか。まあ、俺に苗字はないけどな」
「そういえば、この国の苗字ってどうなっているんですか?」
疑問に思っていたことを聞いてみる。国王はファミリーネームを名乗っていたが、グリドに初めて合ったときは言っていないので気になった。
「町の有力者や貴族ぐらいしか持ってないな。クリデラたちの国では苗字があるのが一般的なのか?」
「ほとんどの家系でありますね。逆に国で一番偉い人たちの家系が苗字を持ってないです」
「そうなのか?変わってるな」
確かに、元の世界でも逆のパターンの国が多かったと思う。
「名前と苗字がある場合は、仲が良いと名前で呼ぶのが普通じゃないのか?」
「いや、まあ、そうなんですけども」
どう答えようかと俺が口籠って迷っていると、グリドが何かしらを察したのだろう。
「本当は名前で呼び合うような仲になりたいんじゃないのか?」
「え、いや、それはですね……。まぁ、なんというか……」
年の功があってか見抜かれてしまった。
ペンギンなので表情が分かり辛いが、からかうような声音をしている。
しかし、まさかペンギンとメンズトークする日が来ようとは思いもしなかったな……。
「よし、俺が少し手伝ってやろう」
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