結果良ければ全て良し

 数分後。


「ま、魔王様……、申し訳ありません……」


 地面に倒れ伏した火竜が黒い煙となって消えていく。


 結局、一度も反撃されずに倒すことができた。


 あまりのあっけなさに、ゲームって攻略情報を見ながらプレイすると酷くつまらないと感じることを思い出した。


「作戦大成功だね!」


「ああ、上手くいったな」


 千歳は特に気にした様子もなく、無事に火竜を倒せたことに喜んでいた。

 火竜が倒れた場所には、黒い魔石の他に虹色に煌めく結晶が落ちていた。

「これが神器の欠片ってやつか?」


「これが?」


 拾い上げて眺めてみると、何か神聖ものを感じる……かな?


 正直言えば良く分からなかったが、周りを見渡しても他にそれらしいものが見当たらない。恐らくこれが集める様に言われていた神器の欠片なのだろう。


「それにしても、取られたくないなら溶岩の中に沈めるとかした方が効果的じゃない?」


「止めてくれ千歳。そんなことされたら見つけ出せる自信がない」


 二人で虹色の欠片を眺めていると、何故かグリドが暗い雰囲気をしていた。


「どうしましたグリドさん?」


「厳しい戦いになると思っていたから、刺し違えてでもと覚悟していたんだが……」


 グリドは火竜の倒れていた場所に目を向けていた。先程の戦いにやるせなさを感じているのだろうか?


 まあ、一方的に倒したから激戦にはならなかったな。


「作戦を聞いたときはまさかと思ったが、こんなに簡単に倒せるとはな……」


 強敵だと思っていた故郷の仇。


 死闘になると思っていたのか、そのあんまりな最期に思うところがあったのかもしれない。


「戦争とは虚しいものだな……」


 呟くペンギンの後ろ姿には、哀愁が漂っていた。

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