蛇足(2)
「わあ!かわいい!」
ペンギンを見た千歳が声を上げる。
その声に反応したのか、嘴の付いた頭をこちらに向ける。
「可愛いなんて言われたのは生まれて初めてだな」
喋った!?
発された声は低く、威厳のある渋い声だった。おおよそペンギンが出してはいけない流暢な人語である。
「グリドさんを可愛いなんて変わった感性だな」
「あの威圧感のある兄貴をねぇ」
「ガハハ!面白い嬢ちゃんだな!」
周りにいた客たちが愉快そうに笑う。
その様子に千歳は不思議そうに首をかしげる。
「このペンギンが斧使いの戦士……?」
……ど、どういうことだ?どこからどう見てもペンギンなのに、周りには人間の男性に見えているってことか?
いや、そもそもなんで仲間キャラがペンギンになっているんだ!?
「…………あ」
――と、そこで思い出してしまった。
ゲームを作り終わった後、使わなかったゲーム素材がたくさんあった。それらの素材はよくできており、無料で配布もしていて手軽にこのクオリティのデータを手に入れられるってすごいよなと思い、適当にゲームに反映させて動かしていた。
確かその中にはコウテイペンギンのデータもあったはずだ。
……も、もしかして、仲間キャラのデータを上書きしてしまったのか?
――何やってんだ過去の俺!?
しかも、このキャラだけじゃなく他にも遊びで色々いじっていなかったか!?
……まさか、この先の登場人物たちも大変なことになっているのでは?
なんてことしてくれたんだ過去の俺……。
頭を抱えたい衝動に駆られるが、何とか持ち直してペンギンに話し掛ける。
「あ、あの、貴方が火竜の討伐をしようとしていて、仲間を探しているって聞いたんですが……」
敬語でグリドに話し掛ける。
ペンギンに敬語を使うのも中々にシュールだが、中身は三十前後の男性だったはずなので年上になる。
「ああ、そうだ。俺はあのトカゲに故郷を焼かれてな。大勢死んでしまった。俺の家族や友人もな……。なんとしてでも仇を打ちたい。あいつらのためにも…!」
故郷を襲われたというのは本当らしい。
怒りが籠ったグリドの声は唸る様に低く迫力がある。
見た目はペンギンだけど……。
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