悪夢の始まり(7)

 俺たちの反応を気にしつつ、騎士たちは魔王や魔王軍の幹部についての解説を始める。


「魔王は魔法の扱いに長けた強力な魔族で、空に浮かぶ魔王城にいると思われます。この魔王城は強力な結界で守られおり、更に姿を隠すこともでき、現状では手が出せません。この結界を打ち破るために伝説の神器が必要なのですが、陛下が仰られた通り今は砕かれて魔王軍の幹部たちに奪われております」


 騎士がテーブルに広げた地図を見ながら話を続ける。


「魔王軍の幹部は全部で四人。各地に潜伏していて居場所が分かっているのは現在三人で、彼らが神器の欠片を保有しているのを確認しています。まず一人目ですが、王都近くの火山を占領していて――」


 騎士が幹部たちの見た目や特徴、何処にいるのかなどを詳しく説明してくる。


 その話を聞く限り、やはり自作したゲームの内容と合致する。


 自分が考えた設定を詳しくかつ大真面目に解説されると言うのは、中々に精神的ダメージを与えてくるな……。


 しかも、この場所には千歳がいる。


 どうして一番知られたら困る人と一緒なんだよ……。


 この世界は俺が作った自作ゲームが元なんだ!……とか言ったら、どんな目で見られるか分からない。


 ――悪いがこれ以上精神的ダメージを負いたくないので黙っておこう。


 本当に申し訳ない……。なんとしてでも無事に元の世界に帰る方法を見つけるから……。


 しかし、その帰る方法も問題だな……。


 考え込んでいると、一通り魔王軍の幹部について解説し終わったのか騎士が最後に付け加える。


「もし魔王を倒すことができたら、その時は陛下が莫大な褒美を約束すると仰っていましたよ」


 褒美か……。


「この世界のお金とかですか?」


「ええ、一生お金に困らない額をお渡しするとのことです。その他にも、勇者様たちが喜ぶものを用意しようとも」


 お金に困らないというのは魅力的だが、この世界に残るということは、猫の妖怪やドッペルゲンガーたちと常に顔を合わせる機会があるという意味でもある。


 自分の過ちを見せ続けられるのは、正直言って精神的に辛い。


 お金とかよりも帰る方法を教えて欲しいのだが……。


「あの、帰る魔法――えっと、別の世界に行く魔法とかないですか?」


 この世界はファンタジーな設定なので魔法や不思議な現象が起こる。その中に異世界に行く呪文とかなかっただろうか?


「別の世界ですか?すみません、私は聞いたことがないですね」


「そうですか……」


 もしかしたらと俺もゲームの記憶を掘り起こすが、該当する記憶は思い至らない。

 ワープや瞬間移動する魔法とかなかったっけ?


「も、もしかして、もう帰れないの……?」


 千歳も別の世界に行く魔法はないという騎士の言葉を聞いて不安そうにしていた。


 ……申し訳なさから心が痛い…………。

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