第5話

楽しかった旅行も終わりダラダラと過ごしていた8月の後半、私は倒れて病院に緊急搬送された。

騒がしくしてしまったため、家が隣の尚輝には当然ばれてしまった。

緊急搬送されてから三日目。

病院の中、私と直樹の二人。

「ごめんね、黙ってて」

「そんなことどうでもいいよ。でも、言って欲しかった」

「なんでもしてあげられたのに」

「ねえ、外行きたい。あの、秘密基地」

「え?」

「最後のお願いだから、いい?」

私は無理に病院の先生に頼み込み、一時間だけ外に出してもらった。絶対安静を条件として。

無理してきた秘密基地はだいぶ古びていたし、建物では、なくなっていた。二人で頑張って作ったものだし、とても思い入れはある。でも、そんなものだろうと心の中では、思ったいた。それでも、涙は止まらなかった。直樹にしがみつきながら一人で泣いた。秘密基地がなくなって悲しいのか、死ぬことが怖いのか、直樹やみんなにあえなくなるのが嫌なのか。なぜ泣いているのかもわからずに泣いた。もう止まらなかった。


出かけた二日後、みれいは亡くなった。

とても笑顔で、みれいらしいなと思ってしまった。

実感が湧かない。今でも、元気に俺の名前を呼ぶ声がする。葬式では、ゆみは、泣き崩れてしまっていた。しんごとりょうは俺を心配してくれたが、そんな声も届かないくらい呆然としていた。最後にみれいのお母さんが俺に一つの手紙を渡してくれた。「直樹へ」と懐かしい文字が並んでいた。


直樹へ

手紙を書くのなんて久しぶりだから緊張しちゃう笑

小学校四年生の時以来だね

さて、これを書いたのは秘密基地に連れて行ってくれた次の日。私はいつまで生きられているのかなあ。ごめんね、病気のこと言わなくて。みんなには、言えなかったや。心配されるのが嫌だったんだ!みんな優しいもん。きっと泣いちゃうと思う。みんなでスキーとかクリスマス会とかハロウィンもやりたかったな。直樹には小さい頃からなかよくてイケメンなのに、私といるからよく「彼女ですか?」って聞かれてたんだよ?知らなかっただろうけどさ。直樹はイケメンなだけじゃなくて優しいし、すぐ怒るけどそれは私を心配してくれてるから。ちゃんと知ってる。

尚輝、好きです。この世の誰よりも好きな自信があります。

これからも幸せでいてください。


気づいたら涙が溢れていた。今すぐにでも会って抱きしめて俺も好きだと言いたい。でも、もう会えない。なんで早く言わなかったのだろうという後悔とみれいが俺を好きだと知れて嬉しい気持ちでごちゃごちゃになる。これからもみれい以上に好きになれる人は現れないかもしれない。でもみれいに言われてしまったから最大限、幸せになりたいと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嘘と優しさ @_3irzn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ