第6話 家

いきなり飛躍したメッセージが届いたことを知らせる通知が届き困惑していると、

『全然暇だったらで、霞屋くんがよければなんだけど、』

『あ、プリントとかも一緒に持ってきてくれると嬉しいかも』

と、送られてきた。

いつも放課後暇そうにしていると思われたのかもしれないがこれでも一応科学部に入っている。週1回金曜日に集まることになっている。今日は金曜日なので活動日である。今日は部活の方で顧問の先生と決めごとをする約束があったので、放課後が暇というわけではなかった。女の子が自分の家に男子を誘うというラブコメありがち展開に何も思わないほど朴念仁ではないが、大事な予定でもあったので、行けない旨を返信する。

『ごめん、今日部活があるから今日は無理だ。』

『え、部活やってたんだ意外。全然いいよー。』

ラインのメッセージがすぐ帰ってくるのを見て、とりあえず体調についてはそんなに心配はいらないのかなと思い、一安心しつつ午後の授業を迎えた。


放課後を迎え、すぐのことだった。科学部の方のグループラインで、

『今日、顧問の先生が体調不良とのことなので、定例会含めて今週は無しで。』

というメッセージが届く。つまり今日の放課後は暇になったのである。

別に金曜日以外も科学部の部室は開いていて、遊びに行くのも全然良いのだが、今日はお昼の来生さんのラインが頭にあったので科学部に行くのはやめる。

教室に戻り来生さんの机に詰まっているプリントを回収しに向かうと、数日間の欠席とともに集まっていた授業プリントが姿を消していた。

来生さんが来たとは思えないので、先生が回収したかなと思い職員室を訪ねることにした。


尋ねる途中に

『部活なくなったから行けるわ』

というメッセージだけさっと打ち込んでおく。すると秒で

『うい』

と返信が返ってきた。


「先生、来生さんの机に溜まってたプリントって回収しました?」

「あぁ、溜まってたから回収した。何、持って行ってくれるのか?」

まるで知っていたかのような回答を瀬戸先生はしてきた。

そんな返しをしながらも、大きい用紙のプリントなどは丁寧にたたまれ束ねられたA4のクリアファイルを託してきた。

「そうだ、住所とかは聞いたのか?」

あっ、と思い出す。いきなり家に来てほしいなどという連絡をもらい驚いていたが、そもそも家の場所を知らない。

「これから連絡します。」

そう回答すると。

「なんだよあいつ…」

そう瀬戸先生はぼやいたように聞こえた。


先生は来生さんの住所をメモしたポストイットを俺の手元にあるクリアファイルに張り付ける。しかし高校教師が生徒の自宅住所などという個人情報をこんなにも簡単に渡していいのだろうか。いいわけがない。あきれていると、

「さっさと行ってこい!」

と強めに肩をたたかれてしまい、強引に送り出されてしまった。瀬戸先生の適当ぶりをしり目に来生さんの家へと向かう。

住所のメモを見るといかにもマンションの名前といったカタカナと24-03という部屋番号と思われる数字が書いてあった。マンションの名前の前にある住所を携帯の地図アプリに入力する。すると近辺で一番大きな駅のすぐ近所であった。

「うわ、いいところだな…」

思わず口に独り言が出た。とりあえずその表示を参考にしつつその駅を終点とする電車に乗り込む。


電車が到着し、電車から降りる。普段そんなに街に出歩くタイプでもないので、久しぶりに来た駅だが県内で有数の大きな駅ということもあり、多くの人が行きかう駅である。高校に入学以来多くの人と喋る機会があり、どこが最寄り駅という会話は一つの定番であるように思う。さまざまな最寄り駅の名前を耳にするが、高校からさほど離れていない今いる駅を最寄りとあげる人は見たことない。そんなターミナル駅である。


駅の改札を抜け、数分歩いたところに目的地はあった。思わず

『でか、』

と言葉が漏れる建物がそこにはあった。いわゆる“タワマン”というやつだ。そしてこのタイミングで気付く。部屋番号の前半の数字“24”の存在に。24階なのだろうか。


こういったマンションは概してセキリュティも厳重であり、いきなり部屋の前のインターフォンを押しに行けるわけではないので、ここで連絡を入れる。

『着いた』

『開けるねー』

すぐに返信をもらい、ガラス戸の奥へと進んでいく。案内を見た感じ本当に24階のようであった。エレベーターの中で24階のボタンを押す。24というボタンは一番右上にあった。静かな音を立てながら登るエレベーター。普段乗るエレベーターよりも少し長い時間乗った後、降りるとすぐに24-03という部屋番号を見つけた。

そして扉の横にあるインターホンを押す。

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