第2話 秘密

「そういえばあの子どう?」

「あの子って?」

「霞屋と一緒に学級委員やってるあの転校生のあいつよ」

「あぁ、来生さんのことか。というか誰から転校生って聞いたんだ?」

聞いてきたのは、去年と同じクラスの木島 瞳。割と明るい系の女子。去年のクラスでは一緒に学級委員やっていたけど今年は立候補すらもしなかった。そして何故か来生さんが自ら秘密にしていた転校生という事実を知っていた。なぜ?

「前に女子で集まってた時に普通に教えてくれたわよ。どこから来たのかは教えてくれなかったけど。クラスの女子なら大体知ってるんじゃない?まぁ、あの感じだとどこから来たのかは誰にも話してなさそうだったけど…」

結局クラスのかかわりの中では普通に転校生という事実を普通に出していた。だとすると、前に色々あって転校してきたというのは勝手な想像だったということなのだろうか。

「俺も別に大して色々しゃべったわけじゃないから来生さんのことはよくわからないよ」

「なんだ。何かあの人隠してる気がするのよね。なんかこう、うまく言えないけどすごいこと」

木島は大雑把な性格をしている割に人の細かいところをよく見ていると思う。去年もそれで驚かされた出来事が何度かあった。彼女自身もなかなかよくわからない人である。

「さぁね。でも木島ほど何考えてるのかよくわからないやつもいないと思うよ?」

「あらそう?私は常に正直に生きてるわよ?」

「何考えてるのかわからないのと嘘つきかどうかは違うだろ」

こんな中身があるのかないのか中途半端な会話をしていると次の授業の開始を知らせるチャイムが鳴り響く。

「おっと、まぁなんかわかったら教えてよ。じゃあね」

そう言って木島はそそくさと自分の席の方へかけていく。木島に話したら一瞬でクラスに広まってしまいそうだから実際に何か大事なことが分かっても伝えるかどうかは微妙なところだが。

最初に見つけたときは何か輝くものがあるような気がして気になって記憶に残った。最初は一目ぼれみたいな感じとかかなとか思ってもみたけどいくらか一緒にしゃべってみて少し違う気がしてきた。会話をしている中でにわかに感じる何となくの壁。そのあたりの興味こそが一番気持ちとして正しいのかもしれない。まだ、高校2年生の1年間は始まったばかりである。

「ねぇ次、数学だよね?課題の答えどうなった?」

いきなりそう聞いてきたのは来生さんだった。

そして数学の授業が始まる。


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