第7話 かわいそうな綾野と綾瀬
帰りたい。今すぐ。
―――数分前。
キキィ…ガチャン
ふう、着いた。チャリを止めて下駄箱へと向かう。
チャリで約30分、どデカい坂を越えた先にある我が学び舎――神野高校。
自慢ではないが割と賢い高校だ。去年の夏から冬にかけて、目から血が出るほど頑張りまくった末、無事に合格することができた。
はぁーあ…入学当初はウキウキなはずだったんだけどな…何でこんなことに…。
そんなことを嘆いていたその時―――――
『バシッッ!!!』
――ケツに強烈な痛みが走った。
「あぅえ…?」
何だこれは。何が起こった。痛すぎる。何故ケツを叩かれた。変な声出ちゃった。
何だ友だちか?いや落ち着け、俺にそんなものは居ないはずだ。だとしたら……
『おっはよーーー!!綾野ーー!!』
「えっ……」
いや誰……?
そこには見たことがない女の子がいた。身長は160cmくらいか…。
なんだろう、The陸上部!って感じの見た目の女子だ。えっ俺この子と友だちだっけ?だとしたらとても嬉しいことだけど。まあ綾野ではないけど。
見ると彼女はとても顔を赤らめていた。
『え…あっ…!ごっごめんなさい!!てっきり友だちかと思って…』
どうやら間違えられたらしい。まあ名前似てるもんね。
『えっと、あっと…その…』
えっなにこれ気まず…。何か言った方がいいのかなこれ。
「あの……っ」
『えっ!あっ、その………ごっごめんないぃぃぃーーー!!!』
ものすごいスピードで彼女は俺の横を走り抜けて行った。流石陸上部だ。もう見えなくなった。
何だった今の…。
まだお尻がヒリヒリする。すごいパワーだな。毎朝この威力でケツをぶっ叩かれてる綾野さんが気の毒で仕方ない。
でも……可愛かったなぁ、あの子。名前何て言うんだろう……。
キンコーン……カンコーン……
えっやば…!もうこんな時間か!
今のはホームルームが始まる8時30分の5分前チャイム…!やばい…このままじゃ遅刻する…!
別に1回遅刻しても成績には何の支障もきたさないのだが、この俺が遅刻なんてしてみろ…
絶対目立つ!そして何事も無かったかのようにホームルームが始まるんだ…。それだけは絶対嫌だ!
人生に一度あるかないかの全力ダッシュ。下駄箱で靴を履き替え、階段を登る。
くそ…!何で俺のクラスだけ3階なんだよ!!他のクラスは1階なのに…!どうなってんだこの学校は!!同じ学年は階も同じにしとけ!!
手すりをつたいながら2段飛ばしで登っていく。
あーきっつい…!…こんなことなら何か運動部にでも入っとけば良かった…っ。
「はーっ…はーーっ…ふー」
何とか教室前にたどり着いた。時間は8時27分。頑張れば何とかなるもんだな。どうせまだみんなも友だちと喋って誰も自分の席座ってないだろ。
ガラガラガラ…
ふー。よかたよかた―――
―――と、思ったのも束の間。
もう先生が来ていた。みんなもう席についており、誰も喋っていない。
へっ……
数人がドアを開けた俺を首を曲げて見ていた。
足がすくむ。でもそこに留まるわけにもいかない。自分の席である前から2番目の真ん中の席に行く。
く……っ。周りの視線が痛い…。だから嫌なんだよこの席。クスクスと周りの奴らが笑っている。
椅子を引き席に座る。先生が俺の方をちらっと見たが別に遅刻をしたわけではないので何も言わず、出席簿を見ている。
「っ……。」
『キーンコーン…カーンコーン…』
先生『はいっ、それじゃあ出席とりまーす。』
そのままホームルームが始まり、俺の地獄の1日が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます