第3話 あんまりだよ

 そんなのあんまりだろ。


 名前を覚えてないのはしょうがない。俺だって2、3人しか覚えてないし。まあ二学期もしたら普通はほぼ全員覚えるんだろうな。


 でも『誰?』って!存在すら知らないのか…。


 まあそりゃあ?高校入学してから友達1人もいないし?スマホ使うのも禁止だから休み時間ずっと寝たフリしてるし、喋ったのも自己紹介のときと先生に当てられたときぐらいだけど…


 あーやばい、なんか涙出てきた。しんどい。


 それを察してなのか、


『ん、ごめんね。思い出そうとしたんけど全然思い出せなくて。』


 ダメージがすごい。


「えっと、あっ綾瀬です。一応同じクラスの…」


『そうだったんだ。ごめんね、私忘れっぽくて。』


 あれ、もしかして優しいのかな。しかもこの声なんだか聞いてて心が癒されるというか、めつちゃ優しい声だな…




 てっ!そーじゃなくて!!何でここにいんの!?俺もだけど!今深夜の3時だよ!?てか最初に来た時誰もいなかったよね!?いやまさか最初からいたのか?俺が気づかなかっただけ?俺なんも変なこと言ってないよね!?うわーはっずー…


『それじゃあ、またね。』


「あっうん…またね…」



……



 えっ帰んの??嘘でしょ?この状況で?てかさっきからめっちゃ冷静だけど!?普通驚かない?!教室でこの状況絶対普通じゃないでしょ!?びっくりしてんの俺だけ!?



 いや、待て落ち着け。そんなことよりも、今俺の身にとんでもない事が起きている。



 クラスの子と喋ってる!!しかも女子!!高校生になって同い年の子と喋るなんて卒業まで無いと思ってたのに!しかも2人きり!


 こんなチャンスもう二度とない…!!


ガラガラ…


!!!


 初音がドアを開けて帰ろうとしている…!


 ダメだ…嫌だ…このまま、何もしないまま終わるのは…!


 また……このままじゃ俺はもう何も変われない…!


 やらないで後悔するよりやって後悔したほうがいいに…決まってる!


 何か…何か…!




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