SPEED.12 走り屋の神様

日産はアテーサE-TSという駆動システムを開発した。それは四駆といえば四駆、FRといえばFRという絶妙な駆動システムだった。



それを搭載している車種は第2世代GT-R(R32、R33、R34)が有名だろう。他にも、GT-R(R35)やステージア(WGNC34)、レパードなどがある。



それを搭載した1台が涼斗のR34である。



対して今、目の前にいるのは『トミ・マキネン』がドライバーの時に優勝した4WD車のランサーエボリューションの最後のシリーズとも言える

ファイナルエディションだ。



マキネンが乗っていたのはエボ5などだったため、ランエボXは5世代後にあたる。



そして、ここにあるのがランエボXの後、世に放たれたランサーエボリューション・ファイナルエディションである。



それに乗っている彼は26歳と少し、年が離れているが、兄弟のように関わってきた仲だった。



そして今、そのランエボを抑えてこの俺が前を走っている。すごい光景だ。



330km/hで数十kmほど走っているとランエボの動きがおかしくなった。



「ヴォォォォウウウォ」………「グヴァッシャーン」その時、何が起きたか分からなかった。



すぐに車を止め、助けに向かおうとしたが、車を降りた時にはもう火の手が上がっていた。


これでは助けようもない。とりあえず、消防に通報して、助けを待つこととなった。



消防が到着してまもなく、一貴さんの死亡が確認された。死因は不明だそうだ。



ランエボは車好きでもどんな車なのか分からないほどまで原型が留められていない。



こんなのはあんまりだ。ついさっき、『皆でバトルしようか』と言って楽しんでいた。



それが一瞬でこうなった。走り屋の神様はどこまでも不平等だ。アルトワークスに乗っていた基博っていう男だって事故で死んだ。



次はアニキを事故で俺から奪っていったのだ。



そして、俺は空に顔を上げ神様に問いかける。



「どうして、俺から大事な人を二人も奪ってしまうんだ?そんなに俺が気に入らないの?!どうして?!なァ、どうしてなんだ?!!」



涙を浮かべて必死に訴えたが返答は返ってこない。自分たちのやっていることは『違法行為』

ちゃんとわかってる。それが楽しい。



神様はそのことをやってはいけないという意味で俺から二度も走り屋仲間を奪ったのかもしれない。俺はそう思った。



でも、こうやって走るからこそ得られるものがある。大事なことも気付かされてしまう。



神様は俺に、走るなら首都高以外も走れと言っているのは知ってる。でも、そこで大事な人まで奪わなくてもいいじゃないか。



首都高だけで名を上げるだけじゃつまらないのだろう。だからといって俺から知り合いを奪うのはどうかと思う。信じられない。



そうこうしているうちに夜が明けていた。



数日後、一貴さんの葬儀を終えて遺骨となり、家へ帰える前、「涼斗君はよく、うちの息子と仲良くしてくれたみたいで、この赤いランエボを譲りたいと思うのだけどどうかしら?」



一貴さんの母親は言った。これは家に置いていても仕方がなく、ただ埃がかぶってしまうからであり、信頼できる人間に譲りたかったのだろう。そのうえで俺に譲りたいと申し出たのだ。




ここでもし、俺が『いえ、置いておいてあげてください。』と言ったら、きっと売りに出されていただろう。



「分かりました。お預かりします。」と返した。



この車は最高のマシンになりそうだ。耐久性の高い4WD、WRCでの功績が詰め込まれた集大成ともいえる1台を彼は乗っていたのだ。



その車を親が俺に譲ってきた。その返しとしてベストなチューニングを施し、首都高最速を狙っていこうと思った。



この結果を天国の一貴さんも望むはずだ。



そう思って積載車にランエボを積み込んだ。


ショップへ持ち帰り、どのようにチューニングしていくか考えることにして、ランエボをリフトの近くに置いた。



外装はカーボンボンネットとカーボントランク、ウイングは純正品から取り替えて、GTウイングに付け替える。タイヤはYOKOHAMA製タイヤを履かせて、ホイールはWORK製ホイールとして、金色の塗装がされたものを履かせる。

あとは、赤色のマッドガードも付ける。




これが、理想のランエボ完成図である。































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