SPEED.10 横羽の狭さ
強そうなM4 Coupeに出会った。見た目からして強そうだった。大きなGTウイング、ラリー用のエアロ、車の中で白く光るロールバーは潰れないように後だけでなく、前にも付いている。
こりゃあ、とんでもなく金をかけた車だろう。
しかもフロントガラスには『♡Cute MAX♡』というステッカーが貼ってあった。ショップワークスのクルマでデモカーなのが見て取れる。
金とメンツを注ぎ込んだカンバン車なのだ。そのクルマに俺は惹かれた。
そうやって横目でM4 Coupeを見ていると、「ねぇ、キミのR34って速い?」先に向こうから話しかけてきたのだった。これは急展開だッ。
「ヴォォォォァァフッ」見覚えのあるポルシェとセリカXXが入ってきた。「ようやくか。」
「何この女の子!?かわいいってゆーか…浮気だな!?このクソバカダメ彼氏!!!」
そのとんでもなくうるさい罵声は辰巳中に響き渡った。「ちょっと静かにしてくんね?」
それに、他の女の子といっしょにいたら浮気断定される世の中ってどうなのよ。やばいな。
「私の車と勝負しない?」そう言った。
しかし、この34は遊びで製作した車なので少し
劣る部分がある。本気で作ったR34がガレージに置いてあるので連絡を入れて搬送車で持ってきてもらうようにお願いをして待つことに。
待つこと15分ほど。1台の搬送車がPAに入ってきた。荷台には白の34が載せられている。
これが俺の作った史上最強のR34だ。みなとみらいのTAで2分59秒を記録した最速マシン。
ワイスピ仕様の34ももちろん速い。でも、上には上がいる。それがこの34だ。エンジンを極限までブーストアップ。ロールバー、GTウイング
カーボンボンネットを装着している。
外装パーツおよびホイールはカーボンボンネットとGTウイング以外全て純正のものである。
これであのM4と互角以上の
「セッティングは終わった。いつでもバトルできますよ。」俺はあらかたセッティングを済ませて、その女性に戦走の用意ができたと伝える。
本当はブライアン仕様の34でバトルして欲しかったんだろうけど、勝つためにはこの34で行かないと勝てないと思ったので用意したのだ。
この白い34はある漫画のチューニングショップが製作したデモカーを真似て製作したものだ。
最高出力は840PS、9,900rpmである。
傍から見ればとんでもないモンスターマシンと見れるだろう。俺からすれば最高傑作だった。
「なかなかこの車も速そうだね。湾岸道路にはぴったりのモンスターかもしれないね。」
彼女はショップの車を見ながら俺に言った。
昔はアルトワークスで粋ってたが今は違う。
あの車も素晴らしかったが、34には度肝を抜かれてしまい、アルトワークスがとてもちっぽけなマシンに思えてしまう。34が偉大なだけだ。
34にはエンジンの他にクランクシャフト、ディスクブレーキなどにも手を入れている。
ブライアンモデルには200万ほど掛けたが、白の34は500万以上掛けていたことに気づいた。
外装は純正品だが中身はほとんどブランドのパーツを使っているのでどうしても根を張ってしまうところがあるが、仕方がない。
ブライアンモデルもはじめは白だったが白2台持ちというのも少し、気持ち悪いと思ったので白は1台だけ残して、好きな車を製作した。
「そろそろバトルしたいんだけど、いいかしら?」彼女は口を開いた。「はい。やりましょうか。」少し待たせてしまっていたのだろう。
舞台は羽田の空港ランプスタートから始まり、そこから横羽に入り、最後は環状に戻るというルートで俺と彼女は了解し、車に乗り込む。
二人には悪いが後ろからついてきてもらうことにした。「「全然、振り切っていいからね〜。」」
二人は口を揃えて言う。「ありがとう。本気で行くわ。」俺は意気込みを二人に伝えて乗り込む。
空港ランプまでは慣らし程度で流すことになった。空港ランプの入口に着いてから、バトルの用意をすると、M4女子から伝えられていた。
それまでにじっくりとこのM4の走りをケツから眺めさせてもらおうじゃないか。
そして、バトルがスタートした。
と、思われたが流しで走っていたところ、M4がエンジン不調を訴えてバトルは中止となってしまった。彼女はそのことをきっかけに近くのランプから降りて自分のショップに帰ったのだ。
「後味の悪いバトルだったね。」「ほとんどなんにもしてないけどね。」「この後どうする?」
俺達は近くのランプに停まり、行き先を考えていた。「東名行ってみようか?」「行こうか。」
3人で首都高を離れ、東名に行くことにした。
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