SPEED.6 そこには34が在る
『今夜、走れます?』ある人から連絡が来た。
それは高校の後輩からだった。そうか。あいつも走り屋だったんだもんな。1年も顔を合わせていなかったので、忘れてしまっていた。
『真綾から連絡してくるとは珍しいな。』
『その、先輩が元気にしてるかな、と思って。』
『嬉しいよ。夜中の2時くらいに行けるわ。』
『分かりました。芝浦PAで待っていますね。』
『分かった。』少しの時間連絡を取り合った。
言う通りに夜中の2時近くに芝浦PAに行った。
すると、真綾の愛車であるZ32が停めてある。
「お久しぶりですね。先輩。元気そうでなによりです。白の34から乗り換えたのですか?」
彼女は初期の頃の34の姿を知っているため、今の34のカラーリングが変わっていることに気づいたのだろう。「うん。初めは白だったんだけどシルバーに塗り替えたんだよね。」
「そうですか。でも、この姿もいいですね。」
姿は変わってしまったけれど、車は変わっていないのでイメチェンしたと思ってくれたのだ。
彼女のZ32も初めて見た時からほとんど姿を変えてない。変わっているとすれば、GTウイング
Watanabe製ホイールを履いているところだ。
「先輩は本当にクルマが好きなんですね。」
確かに俺はクルマが好きで車バカであるし、知識も豊富でいろいろなことを知っている。
何よりも34が在るからクルマが好きという理由にもなる。あの車に出会っていなければ、ショップなど経営していなかったと思う。
「じゃあ、走りに行く?」「はい!!」
俺達は芝浦PAから出てドライブに行くことに。
最初は軽く流して、250km/hで走っていた。
『先輩、そろそろスピード上げてもいいですか?』『いいよ。』俺は答える。レインボーブリッチに向かい、330km/hで橋の上から花火を眺めていた。『きれいですね。先輩。』『うん。』
LINEでやり取りをしながら、走り続けること約30分。湾岸を離れ、東名高速に入っていた。
時刻は午前3時54分である。海老名SAにいた。
スタバでそれぞれコーヒーを買った。「先輩。今日はありがとうございました。とっても楽しかったです。」真綾は俺に向かってお辞儀をした。
「これからどうする?帰ってもいいけど。」
「このまま朝帰りしましょう。」真綾はそう言ったので、「わかった。このままいようか。」
ゆっくりと夜が明け、朝日が昇ってきている。
「帰ろうか。」「はい。そうですね。」
次の日、と言っても数時間後。俺はショップのリフトに載っているFDのエンジンを下ろして休憩にコーヒーを飲む。「よっ。リョウくんよ。」
またしてもお邪魔者がやってきた。菜々子だ。
俺は仕事があるのに何なんだ。暇人はいいよ、
ん。こいつ仕事何してるんだっけ?
なんの仕事をしているのか忘れてしまうくらい毎日のように訪問してくるのだ。
「お前って、なんの仕事してんだっけ?」俺は聞くしかなかった。だってわからんから。
「え?私?なんで忘れるのさ。仮にも私の彼氏でしょ。忘れちゃいけないんだよ〜。しょうがないな〜。私の仕事は、自動車雑誌GT SPORTS
の出版社社長なんだから。」そう言ったのだ。
めっちゃ金持ちだった。そりゃポルシェも乗れるよな。「申し訳ございません。お嬢様。」
「うむ。よろしい。じゃあ今夜ドライブしよ。」
「かしこまりました。では、夜の8時頃に。」
「分かった。連絡するから用意しといてよ。」
こればっかりには俺が悪い。ただ走るのは好きだし、彼女の心も満たされるのでいいと思った。「8時にここ集合でもいい?」「いいよ。」
時刻は8時ちょい前。「ヴェウウウ」1台の997が入ってきた。「行こうか。リョウくんよ。」
俺は自分のショップの戸締まりをして隣のガレージからR34を出した。「やっぱ、格好いい。」
「ヴォォォォ」走ること1時間。俺達は神田橋ランプの入口にいた。ハザードを焚き、車を停める。「どうだ。スカイブルーのネオン管は。」
「うん。めっちゃいい。最高。」彼女はとても喜んでいた。俺はきっちり91万円を払ってもらった。「よっしゃ。二次会に行くぞ。」「OK。」
「ヴォォォォォォ」「コク」「ヴェウウウ」
そうして俺達はまた走り始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます