SPEED.3 りんちゃんのショップ

今日は自分のショップが休みなので、りんちゃんのショップにやってきた。「あら、リョウじゃん。どしたの?」りんちゃんはチューニングだけでなく、一般車の修理などもやっている。


「今日はうちのショップ休みだから遊びに来た。ついでになんか手伝ってあげるよ。」


まぁ、手伝った分だけ金はもらうつもりだが。


「じゃあさ、あっちのリフトに乗ってるBRZのタイヤ交換してくれる?」「おっけー。」


休みの日といっても車をいじるのは好きなので別にタイヤを取り替えることは苦ではない。


一通り作業をこなし、なんぼか手伝いにはなっただろう。「ありがと、上がってコーヒーでも飲んで。」りんちゃんは椅子に座っていた俺に声をかけた。2階が休憩所兼住居になっている。


りんちゃんは気持ちよさそうな顔をして、エアコンにあたっている。「3時か。」帰ろうかな。


「そろそろ帰るね。」俺は言う。「今日はありがとね。気をつけてね。」「うん。じゃあ。」


「またね。リョウ。」私は手を振った。

「あっ、ちょっとお金ちょうだい。今日手伝った分のやつ。」俺は思い出して口を開く。


「金を取るとは心がないのかクソガキ。」


「いやいや手伝ってるからなこっちは。」


「わかってるよ。はい、2万円。」


「今度こそ、じゃあね。」


俺は34のエンジンをかけ、アクセルを踏む。

「ヴォォォォォォ」「コク」「ヴォォォォ」


自分のショップに戻り、シャッターを開ける。

するとそこには1台のNSXが入っていた。

スマホを見ると母親からLINEが来ている。


『エンジンの調子が悪いから見てくれる?』


なんだって!?ほんと勝手だなあの人。鍵渡さなきゃよかったな。うちのショップの合鍵は3つあってうち2つは俺が、1つはうちの母さんと父さんに渡して、いつでもショップに入れるようにしていた。


まさか、こんなふうに使われるとは。エンジンの調子を見るついでに少し、手を加えてやるか。俺はNSXのエンジンフードを開け、作業を始めた。「別にそこまで調子が悪いわけでもなさそうなんだけどね。」俺はNSXをチューンナップして830馬力から840馬力まで上げた。


数日後、母さんがやってきた。「調子はどう?」

他人事のように接しているが、あんたの車をこっちはチューンナップしてやったんだよ!!


「ここにあるでしょ。軽く流しに行くから、ほら鍵。」俺は鍵を渡す。「そうだね。流しに行こか。」それから湾岸道路に行って、200km/h程で軽く流し始めて、スラロームしていく。


俺はケツから見ていて少し、母さんの走りが変わっていたことに気がついた。「ん?違うな。」


その後、大井PAに入った。「なんか違ってたな。母さんの走り。」俺は言う。「そうかな。いつも通り流したつもりなんだけど。」


やはり、自分では気づかないものなのだろうか。いや、気づきにくいものなのだろう。


そこに見慣れたRZ34が入ってきた。「あら、賢太郎さんじゃない。こんなところで会うなんて奇跡かしらね。」「いやあの人も走り屋だから会うことはあるだろ。そんなことで奇跡とは言わないと思うぞ。」俺は母さんの親父への愛が過ぎると、子供の頃から思っていた。正直やばい。


「見たことある34とNSXがいるな。と思ってたら美穂子さんと涼斗じゃないか。凜はいないか?」どうやらりんちゃんがいないことを変だと思っているらしい。「あいつも店持ってるからな。毎日のように家族で湾岸に行けないだろ。」


父親だけが何故か最新式の車である。何故だ。


「せっかくだし、みんなで走ろうか?」

俺は提案してみた。「そうだね。凜には悪いけどみんなで走ろうか。」「そうね。行きましょう。」


「コク」「ヴォォォォ」「オゥゥゥゥ」「コク」

「オウァァァァァ」「くっ。速いな母さん。」


「この僕を忘れてはいけないよ。」「コク」

「ギャアアア」「オォォォォォォォ」後ろから親父のRZ34が追いかけてきている。なんなんだ。


全員が速いため離されたり、近づいたりの繰り返しであまり面白いバトルにはならなかった。


午前4時頃、俺達は高速から降りた。近くの道路の路肩に止まり、車から降りる。「あんまり、面白くなかったな。」「そうね。」「そうだな。」


「また今度、走りに行きましょうか。」


その母さんの一言を最後に俺達は別れた。










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