第5話 ウミガメの習性

東京、秋葉原にてーーー


友子「じゃあ、また18時に集合ね……!」


ミオ「うん!」


谷「リョウ、あとでな」


リョウ「おー」




ミオ「………」


リョウ「………」


ミオ「と、友子と谷君行っちゃったね! あはは」


リョウ「だなー」


ミオ「友子の顔見た? ガチガチに緊張してたね!」


リョウ「告白すんだっけ? 上手くいくと良いね」


ミオ「う、うん!」


リョウ「……」


ミオ「…………」


ミオ「……ア、アタシらもどどどどっかいこっか!」


リョウ「まぁそうだな」


ミオ「よし、しゅっぱーつ!」


てくてく


ざわざわ


ミオ「……秋葉原って外国人沢山だねー」


リョウ「そうだな」


ミオ「………」


リョウ「………」


ミオ(気まずい………いつもは二人きりでもなんともないのに! これもちょっと前に友子があんなこと言うから)


ちょっと前に友子『私……谷君に絶対告白するから。ミオも頑張ってね』


ミオ(もぉ~!! リョウはいつも通りだし、意識してるのはアタシだけ? 馬鹿みたい!)


ミオ(アタシも普段通り、普段通り……! いつもリョウに話しかけるように……ほら)


ミオ「ウ、」


リョウ「ん?」


ミオ「『ウミガメの習性』を使うとさ、アクションカードを次のターンに使えるじゃん」


リョウ「おお。そうだな!」


ミオ「で、次のターンもまた『ウミガメの習性』使えば更に次のターンに出来るじゃん。これって永遠に出来るの?」


リョウ「出来るよ! こないだの『牧羊犬』コンボ凄かったな!」



こないだーーー


リョウ宅でミオがいつものようにドミニオンをしていた時。

ミオはサプライに『牧羊犬』があるとついつい購入してしまう。(絵柄が可愛いから)

しかし、『牧羊犬』は集めれば勝てるような強いカードでは無いので、ミオは『牧羊犬』を手札に溜め込み、敗北するのが通例であった。

だが、この時のサプライには『ウミガメの習性』があり、ミオの『牧羊犬』が大活躍した!

『ウミガメの習性』と『牧羊犬』のコンボによって、ミオの手札は常に潤沢に回った。リョウは『牧羊犬』をナメていたので、その動きについていけず、その時は珍しくミオが大勝したのであった!



リョウ「『ウミガメの習性』って凄いんだよな! どんなカードも組み合わせてみると奥深いシナジーが生まれてさ! しかもカードデザインもよくてさ! 次のターンに先送りするのはウミガメが産卵のために陸に帰ってくるのを上手く表現しててな!」


ミオ「へぇ~」


ミオ(これこれ、リョウとはドミニオンの話してればいつも通り)


ミオ「『ウミガメの習性』で、ここぞ! って時のためにアクションカードを溜め込むと強いんだね」


リョウ「うーん、そうとも言えない」


ミオ「え?」


リョウ「確かに『ウミガメの習性』は便利だ。アクションカードを溜め込むと一見得してるように見える。けど実際のところはアクションカードを使う機会を一度減らしてるんだ」


ミオ「確かに」


リョウ「だからさ……先延ばしにすることは賢い選択に見えて、実際はズルズル損を増やしているとも言える」


ミオ「損………」


リョウ「だから、永遠に先送りするのは良くないんだよな。まぁその判断が難しいんだけどね」


ミオ「……………」


ミオ(……先送りにすることの何がいけないんだろう)


ミオ(アタシはリョウと一緒に学校行って、授業受けて、一緒に帰って、ドミニオンして。その毎日の繰り返しでいい。それでアタシは満足してる)


ミオ(友子は? 友子は谷君に告白することを選択した。二人が付き合ったら……盛大に祝ってあげたいな)


ミオ(友子と谷君はこれから楽しいことがいっぱいあるんだろうか。付き合って初めての誕生日、初めてのクリスマス、初めてのバレンタイン。キスだってこれからするだろうし、もしかしてその先まで?)


ミオ(アタシは。『ウミガメの習性』を選び続けて……損をしているのだろうか。行動アクションは出来る時に行うのが良い。それはドミニオンでも、人生でも同じ)


リョウ「………おっ、ここかな?」


ミオ「決めた」


リョウ「え?」


ミオ「『ウミガメの習性』はもう使わない」


リョウ「えっ?」


ウミガメの習性「ええっ?!」


リョウ「別に使っても良いと思うけど」


ミオ「ううん、今日はもう使わないよ」


リョウ「……?」





ウミガメの習性「私をもう使わないなんて、ミオさん酷い……。そこまで言うからには、これから避難所場であっても、共同墓地をウミガメの習性で使わないだくださいね!! べぇ!!」

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