第6話 農民

秋葉原にて、とあるゲーム屋の前


ミオ「ん? ここは?」


リョウ「あ、ここの三階。行きたかったゲーム屋なんだよ。ネットショップで在庫切れになってるドミニオンの日本語版が置いてあるらしい」


ミオ「へー」


リョウ「そろそろ新しいセットが欲しくてさ。秋葉原行くって聞いたから絶対に来たかったんだ」


ミオ「欲しい奴あるといいね!」


入り口にたむろする怪しい男達「……」


リョウ「あ、通ります。すみません」


怪しい男達「……ちっ」


階段「カツカツカツ」


ドア「チリンチリン」


店員「いらっしゃいませ~」


ミオ「おお~……ボードゲームがいっぱいある~」


リョウ「やば、すげー」


ミオ「こうして並んでると圧巻」


リョウ「ほんと。あ、カタンの拡張セットも全部おいてある」


キョロキョロ


ミオ「見てこの辺のやつ。パッケージお洒落!」


リョウ「ボードゲームもインテリアの時代だよな。本棚みたいにお洒落なボドゲ棚作るのが好きって人も今は多いね」


ミオ「へー」


リョウ「えーと、ドミニオンのコーナーはどこかな」


ミオ「そういや新しいセットって何買うの?」


リョウ「『冒険』が欲しい」


ミオ「『冒険』? それ楽しいんだ」


リョウ「トラベラーカードって言うのがあって。使えば使うほどカードがレベルアップするんだよ。アプリ版で使っててそれが凄い面白くてさ。サンダーストーンってゲームにもカードがレベルアップする要素があるけど、それのドミニオン版って感じだな」


ミオ「ふーん(よく分かってない)」


リョウ「待って」スマホスイー


リョウ「これこれ、これがトラベラーカード」


ミオ「どれ? へー、『騎士見習い』? 『チャンピオン』? カッコいいね!」


ミオ「あ、これ……フフフ」


リョウ「ん?」


ミオ「この『農民』ってカード……ハハハ! な、何か素朴な人だね!」


リョウ「あー、なんか気の抜けた顔だよな」


ミオ「眠たい時のリョウに似てる!」


リョウ「えっ! 俺似てる?!」


ミオ「ちょっとだけ……(笑)」


リョウ「いや……気を付けるわ」


ミオ「何を?(笑)」


リョウ「なんか色々……あ!」


リョウ「あったあった!」


ミオ「あった?」


リョウ「これだよ探してたのは……」


すっ


その時、リョウと謎の女の手と手が重なった。


謎の女「あっ」


リョウ「あっ」


ミオ「えっ」


謎の女「……そちら様もこれが狙い?」


リョウ「い、一応」


松葉杖をついた謎の女は重なった手を退けようとしなかった。


ミオ「ねぇ、他に在庫あるか聞けば?」


リョウ「あ、ああ」


たまらずリョウの方が手を引いた。


リョウ「すみません、これの在庫ありますか?」


店員「『冒険』はそれがラスト一個ですね……」


リョウ「次の入荷って……」


店員「一ヶ月後には入るって聞いてますが……」


リョウ「そうですか……」


謎の女「………」


リョウ「……先に手を触れたのは俺の方だよな?」


ミオ「いや、彼女怪我もしてるし譲ってあげなって」


リョウ「そ、そうだな」


謎の女「譲る?」


リョウ「あっ、この『冒険』、欲しかったらどうぞ」


謎の女「私、貴方みたいな『農民』顔にモノを譲られるほど貧しくなくってよ」


二人「「えっ」」


謎の女は茶封筒を付き出した。


謎の女「『冒険』の購入権、これで買えるかしら?」


茶封筒には三万円が入っていた。






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