第3話 仮面舞踏会

昼休み、教室で……



ミオ「ねぇ聞いてよー。購買のパン全然売って無くってさー……」


リョウ「そんなのありかよーー!!」


ミオ「えっ!? どした?」


リョウ「聞いてくれ! 相手が『民兵』使ってきてさ」


ミオ「あ、ドミニオンの話」


リョウ「で、銅貨とかいらないカード捨てたんだよ。そしたらさー、その後に『仮面舞踏会』を打たれた! これじゃ折角集めた金貨を渡すしかない!」


ミオ「あちゃー、ハメ技的な? きっついね」


リョウ「あー……、酷すぎる、こんな、こんな酷いコンボ……」


ミオ「まー、やる気なくすよね」


リョウ「俺もやりたい!」


ミオ「えっ?」


リョウ「俺もこんなエグいコンボで相手を黙らせたい!」


ミオ「えー? そんなんやめときなって」


リョウ「なんで?」


ミオ「自分がされてやなことを相手にするのは善くないことじゃん」


リョウ「確かに。でもゲームと現実は少し違う」


リョウ「ゲームの世界では、相手の嫌がることをした方が善いことなんです」


ミオ「でも、そんなエグいコンボされたらアタシ萎えてやめるかもよ?」


リョウ「なるほど、つまりこの金貨を渡さずに切断するってことか」


スマホ スイー


仮面舞踏会「金貨を相手に渡しました」

仮面舞踏会「あなたは銅貨を獲得しました」


リョウ「それはゲームにおいて一番やっちゃいけないことだよ」


ミオ「!」


リョウ「ゲームは勝ったり負けたりを競うから、確かに頭に来たりもするけど……大前提、一番大切なことは対戦相手へのリスペクトを持つことだよ」


リョウ「相手の嫌がることをするのは、全力で戦うっていうリスペクトの体現なんだ。そして、切断放置はその逆でリスペクトに欠ける恥ずべき行為なんだ」


ミオ「……そういうもん?」


リョウ「そういうもん。そいやなんで今日は購買でパン買ってんの? いつもはお弁当じゃん」


ミオ「えっ? あっ、えーと……」


ミオ「今朝ね……ママと喧嘩したの」


リョウ「えぇ!」


ミオ「で、頭来たから弁当受け取らなかった」


リョウ「折角ママさんが作った弁当を受け取らなかったの?」


ミオ「だって、今日は体操着要らないって言ったのに、勝手に鞄に入れてたから……」


リョウ「ふぅん」


ミオ「そんなくだらないことで喧嘩したの? って思ってるでしょ……」


リョウ「いや? 事前に頼んでたのにママさんが勝手なことしたんだろ? その怒りはもっともだと思う」


ミオ「……ありがと」


リョウ「けどそれでお弁当を受け取らないのはママさんへのリスペクトに欠ける。ママさんだって朝早く起きて頑張って作ってる」


ミオ「………まぁ」


リョウ「喧嘩するのは仕方ない。けど、相手へのリスペクトだけは忘れないようにしないとな」


仮面舞踏会「その通り」


リョウ「帰ったらちゃんと謝った方がいいよ」


ミオ「………んー……」


ミオ「ドミニオンオタクの癖にたまに正しいこと言う……」


リョウ「ドミニオンオタクは関係無いだろ!」


ミオ「ごめんごめん」


リョウ「まぁ、じゃあお昼は俺の弁当のおかず少し分けたるよ」


ミオ「いいの?」


リョウ「その手に持ってるチョコスティックパンだけだと足りないだろ」


ミオ「……ありがと!」


リョウ「からあげでいいか?」


ミオ「うん。あっ、じゃあ……アタシのパンのちょっとだけお返し!」


リョウ「え、いいよ。てかそれ、食いかけじゃねーか!」


ミオ「いいから食え! ほら、『仮面舞踏会』!」


リョウ「もごーー!!」





仮面舞踏会「不要札が無い時に俺と舞踏ダンスっちまったことはないかい? 仕方なく属州渡したら、相手に舐めプだと思われて理不尽にキレられたことがある奴は、とんだ不幸ハードラックだったな。対戦相手へのリスペクトを忘れるんじゃあないぞ」

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