一話「ショップの店員とかってやたらと可愛いヤツいるよな。」

※一話となってますが、この前に序章があります。


…寝不足だ。


これも、この町にいる暴走族の連中のせいだ。


この町には暴走族以外にも、どこかしこに不良がいるんだよな。まあそれも、全部バッドエンドの竿役だったり、主人公がヒロインを助けたりするための舞台装置みたいなモノなんだけども。


アイツら真夜中にぶんぶんぶんぶんぶbんbんぶbんぶbんbんぶbbんbn…はぁ。


…外に出よう。


しばらく歩いていたが、不良共の視線が刺さる。


まあそれもそのはず。俺が転生した根取ねとり 夜郎やろうは、ゲーム本編の二学期終盤辺りで、今までつるんでた不良共に集団リンチされたらしい、ということを学園のモブから聞けるのだ。腕を折られたとかあばら骨折られたとか、歯が折れるまで殴られたとか…。


正直、痛いとかはない。昨日現実を受け入れたくなさ過ぎて鏡を見たが、やはり傷一つ無かったし、俺は全然寝取り野郎だった。


だから、不良共は不思議なんだろう。あれだけコテンパンにやられたはずなのに、なんでこんなにもピンピンしてるのか。


…まあ俺にも理由は分からないが。


とは言え、不良共が俺に手を出してくることはもう無いはず。集団リンチはここいらの不良共にとってはみそぎのようなもの。禊の終わった人間にさらに手を出すことは無い…と信じたい。


不良に睨まれる経験なんて無いもんだからオドオドしながら歩いていると見慣れた路地を見かけた。


「…ここ、ヒロインが不良に襲われるときに使われる背景のイラストと同じ場所だ。」


ギャルゲとかエロゲって偏見だけど背景使い回してることが多い印象あるから一発で分かった。


一瞬、辺りが静かになったとき、路地の方から声が聞こえた。


「…つに……タら…は関…の無い……でしょッ!!」


聞き覚えの無い声だった。ヒロインたちのものではないようだ。


「…なら、関わってもストーリーの本筋に影響は無いよな…。」


そう思って人気のない路地を進んでみることにした。


ゲーム本編でもちょくちょく女の子が不良に襲われている、なんて話をストーリー序盤から聞くことができる。この話を聞いた主人公は、好きな人を守れる男になるために体を鍛え始めることになる。これは今後のイベントに大きく関わるステータス"強さ"を鍛えることができる"筋トレ"という要素が解放される重要な会話。


忘れてたけど、こういうことが日常的に起きる世界なんだ。


曲がり角を曲がるとそこには一人の女の子を囲む男が五人。割って入って止められたらどんなにカッコいいだろう。そこで喧嘩になって返り討ちにできたらどんなにカッコいいだろう。


でも現実は非情だ。俺は喧嘩の経験なんて無いし、対人戦で役に立ちそうな格闘技も学校の授業でやった程度。この根取も同じ、喧嘩の経験なんてほとんどない。コイツはいわゆる"虎の威を借る狐"の狐に過ぎない。自分で喧嘩なんて怖くてできないヘタレなんだよな。


だから、カッコいい助け方はできないけど、相手の気を逸らすくらいなら…!


「…な、なあ!そこのオッサンたち!女の子一人に寄ってたかって五人で何してんのサ↑!」


…声裏返った、ダサ。


「…あ"ぁ?俺の縄張りで何しようが勝手だろうが。つーか、誰がオッサンだ!?あ"ぁッ!?」


「お前、夜郎じゃねーか。あんだけいたぶってやったのにおかわりとは、懲りねぇなぁ?」


…あー、終わったっぽい。


でも注意は引けた。あとはあの子が逃げてくれれb…


「…ってもういねぇッ!!?」


「…くくッ、あはははははッ!!助けた女に逃げられてやんの!!笑っちまうよなぁ!!」


「禊は終わったつもりだったがおかわりをご所望なら、食わせてやろうじゃん?」


俺の顔面目掛けて拳が飛んでくる。ここで避けれたらヒーr…


「ゴゥフッ!!!」


…あーダサい。ホントダサい。


それからは、まあ酷かった。骨が折れようが血を吐こうがコイツら容赦ねぇんだもん。それからどれくらい経ったのか分からないが遠くでパトカーのサイレンの音が聞こえた。


「…ッチ、サツを呼ばれたか。夢中になりすぎたな。おい、さっさとずらかるぞ!」


そう言って、恐らく面識のある不良共は去って行った。


ここからはあまり記憶がはっきりしていない。多分救急車を呼ばれたんだろうけど意識が朦朧もうろうとしてて覚えていない。次に目を覚ましたときは知らない天j…


「…病院、で合ってるよな…。」


窓から爽やかな風が入ってくる。心地が良い。


すると病室の扉が開き、そこに立っていたのは…。

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