エロゲのNTR男に転生したので攻略対象外のNPCを攻略してみようと思います。
是連人
序章「うん、思ってたより全然悪い。」
嗚呼、今この地球上に俺以上にマヌケな死に方をした人間がいるだろうか。
今日発売の新作エロゲの支払いをしに、コンビニに行った帰り、あまりにもウキウキしすぎて前を見ていなかったがために、赤い三角コーンに引っ掛けてある黄色と黒の棒に引っかかって体勢を崩して頭からマンホールの中に落ちていった。
無様だ。恥ずかしい。死にたい。もう死んだけど。
え、だって考えてもみなよ、遺体が持ってた荷物の中にエロゲの支払い完了のレシートが入ってんだぜ?しかも今回、俺の性癖ど真ん中のエロゲだったから他人に見られるのクッソ恥ずいんだが。
えっ?どんな内容のエロゲなのかって?よせやい、それを聞くのは野暮ってもんだろ。
…で、今どんな状況なんだろうな。目の前で女児向けアニメの魔法少女っぽいのが触手のバケモンと戦ってるわけなんだが。…魔法少女?少女?あれ少女かな?体つきが妙に…
あーッ、触手がーッ!!
「…くッ、くぅッ♡私は触手なんかに負けないッ♡」
Oh…、テンプレみたいな状況でテンプレみたいなセリフ吐いてら。
…いや、でも待てよ?あのキャラ知ってる気がするんだよな。どこで見たんd…
「…負けちゃダメだッ!魔法熟女ママリーヌ!!貴女が負けてしまうとお茶の間が凍り付いてしまう!!小さい子どもたちに悪影響を与えてしまう!!だから絶対に負けちゃダメだッ!!」
あーッ!!思い出した!!
魔法熟女ママリーヌって言えば、あの伝説のクソエロゲの"絶対王制破廉恥学園"の隠しヒロインじゃねぇーかッ!!
「これでトドメよッ!!必殺・愛のストッキッキングッ!!」
「出たッ!!魔法熟女ママリーヌの必殺技、愛のストッキッキング!!わざわざ靴を脱いで繰り出す謎の必殺技だッ!!」
えっ、じゃ、じゃあ、あそこでガヤ飛ばしてんのが絶対王制破廉恥学園の主人公か!!?
「…ふぅ、体を動かすのはやっぱり気持ちが良いわね!あっ、いけない!そろそろ息子を迎えに行かなくちゃ!!」
「…ありがとーーーう!!魔法熟女ママリーヌーーー!!」
あぁ、そうそう。こんな感じでストーリー上でちょくちょくエンカウントするんだよな魔法熟女ママリーヌ。
じゃなくてッ!!
どうなってんだ?ここってもしかしなくても絶対王制破廉恥学園の世界だよな?でも主人公があそこにいるってことは俺は一体誰なんだ?
…てか、どうせ転生するなら今日発売されたあのエロゲの世界が良かったッ!!なんで絶対王制破廉恥学園なんだよッ!!確かにプレイしたことあるよ!?でもセール中で百円で買えたから、ネタで買ったようなモンなのに!!全クリしてねぇんだぞッ!!
じゃなくてッ!!
あっ、そういやスマホ!!誰になったかは分からんが、スマホくらい持ってるだろ!そこから自分が誰か分かるかもしれない!
あった!ケツポケットの中n…
壊れてるッ!!!!!
「クッソ!これじゃ使いモンにならねぇじゃねーかッ!!」
「…おい、そこにいるのはまさか根取か?」
「…えっ、は?」
おいおい、今なんつった?根取?根取つったか?
「…お前、まだ
やっべぇ、コイツ殴りかかってくる!ひとまずここは逃げねぇと!
「…また逃げるのか、卑怯者がッ!!次は絶対お前のその顔面に一発入れてやるからなッ!!」
「…はぁッ、はぁッ、はぁッ!!」
クッソ、やっぱ聞き間違いじゃなかった!俺が転生?したのはこのクソエロゲの中でも良心?なにそれおいしいの?のクズ中のクズ"
あてもなく走ってきたはいいがいい加減体を休めたい。
「…あぁー、クソ。根取ってどこに住んでんだっけ?」
確かゲーム中のバッドエンドの一つに根取の家で一生…、ってのがあったはず…。
…うぅ、思い出したくねぇ。吐き気がしてきた。
「…あ、そうだ。根取の家って確か優市杉の登下校のルート上にあるんだ。んで、下校中に…。ヴォエッ!」
このあたりが優市杉の自宅の近くのはず。んで、根取は設定上はボロいアパートに一人暮らししてたんだっけ?てなると…。
「…もしかしてここか?」
全体像を見るのは初めてか?こんなにボロかったんだな…。
ん?このアパート、もしかして根取以外住んでないのか?そんなことって…。
いや、深く考えちゃダメだ。これはエロゲ。しかも絶対王制破廉恥学園の世界だ。考えるだけ無駄もいいところだ。ここは、一人でゆっくりできる場所が手に入った、と思っておけばいいか。
え、鍵かけてない…。こわ。
…なんて言うか、根取の家にしては質素と言うか、何もないと言うか。
そんなことはいいか、ひとまず状況を整理しないと。
俺が転生?したのは根取夜郎。どのルートでもそのクズキャラっぷりを遺憾なく発揮してヒロインや主人公、さらにモブキャラからも嫌われてるエロゲ史上最も嫌われたキャラクターとしてプレイヤー間では殿堂入りしている。どっかの何とかデイズのアイツみたいな扱い受けてて、いやアイツ以上にヘイト買ってたな。それでかなり笑った記憶があるがまさか自分がその根取になるとは思わなかった。
で、次は今がストーリーで言うところのどのあたりなのかを把握しないと。
外は肌寒かった。今は雪が降ってるな。なら二学期終盤から三学期序盤あたりだろうか?
そういえばさっき主人公が"今度はただじゃおかないと言ったはずだ"と言っていた。主人公のそのセリフは二学期中盤の文化祭イベントのときのものだったはず。あの後から根取は行方不明になった、って言うのを学園のモブから聞けるんだよな。
…待てよ、魔法熟女ママリーヌの触手モンスターとのバトルイベントって確かハーレムルートに入るための最後の条件だったはず。
確か、このイベントを見たときに開放された実績って"因縁との決着"…。
そうだ、初めこの実績が解放されたときは何が何だか分からなかったが、これ次の周回プレイに入ると分かるんだよな。この実績を解放すると次の周回プレイから、根取夜郎がストーリーに登場しなくなる。なんでこれ以降出てこなくなるのかはよく分からないが。
実質三学期から根取がストーリーに登場しなくなった理由はプレイヤー間で様々な考察が出たんだ。
一つ目は、作中で描かれていない大晦日に主人公とタイマンをやった説。
二つ目は、魔法熟女ママリーヌのバトルイベントに巻き込まれて死んだ説。
三つ目は、つるんでた犯罪組織によって消された説。
プレイヤー間では一つ目の説が最も有力とされていた。特に根拠があったわけではない。下二つがあまり気分の良いものではなかったから、というのが理由になってるっぽい。
…が、この世界に来てなんとなく思った。恐らく二つ目の魔法熟女ママリーヌのバトルイベントに巻き込まれて死んだ説、が有力な気がするんだよな。
俺の、根取の服が以上なまでにボロボロなのに対して、体には傷一つ付いていない。おかしい。あの戦いで本来、根取は死んでいるんだと思う…。だけど、俺がこの根取の体で転生したから傷が治った、と考えるのは都合が良すぎるか?
まあ、現実の俺も死んでるだろうし、コイツも死んでるなら都合がいい。根取の体、ありがたく使わせてもらおう。
ここから先は、俺がヒロインや主人公に関わると作中に無い展開になる可能性が高い。それは避けたい。
ヒロインは全部で四人、隠しヒロインが二人の合計六人。内、学校でエンカウントする可能性があるのは三人だな。んで面識のあるヒロインは隠しヒロイン以外の四人。
今が物語の終盤だってことはなんとなく理解した。ならやっぱり、今だけは主人公たちに関わらない方がいいだろうな。ハーレムルートに進んでいるならなおさら。ハーレムエンドでは主人公が三年生に進級する前に宝くじで九千億ぶち当ててヒロイン全員を連れて海外に引っ越す形で終わっていた。
今は魔法熟女ママリーヌの最後のイベントをヤってるあたりだと思う。その後で、ヒロイン全員を説得して回って…てな感じのことをするはずだから、俺がいると話がこじれそうだ。
…結論、しばらく学校には行けないだろうな。主人公たちにエンカウントしないよう注意を払いつつこの辺りを散策してみよう。何か分かることもあるかもしれない。
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