第7話 計画(アシュフォード伯爵視点)
娘のエレナに追放を言い渡した。本来なら、王家と結びつくことで我が家の繁栄に貢献するはずだった。
メイドからの報告で、エレナが一人で屋敷を出ていったことを確認した。指示通りに動いたようだ。これで一安心だな。
ここまでは計画通りだった。
ペトルス王子がエリュシオンを狙っているという情報を入手したのは先日のこと。どうにかして阻止しなければいけなかった。
そこで、偽の情報を王子に伝えた。エレナがエリュシオンのメンバーと浮気しているという情報を、独自の情報網を使って流したのだ。情報源はバレていないはずだ。おかげで、王子はその情報を信じてくれた。
こうして、婚約破棄へと誘導することに成功した。
もしも婚約が成立していたら、エリュシオンは王子に奪われていたかもしれない。そんなことは絶対に許容できない。
確かに、王家との繋がりを得られなくなるのは痛手だ。だが、今ではエリュシオンを抱えておくほうが価値が高い。
当初の計画では、エリュシオンで稼いだ金を元手に王家との繋がりを持ち、伯爵家を繁栄させていくつもりだった。エレナを王子と結婚させることで、王家の権力を味方につけられると考えていたのだ。
だが、事態は想定外の方向に進んでいった。エリュシオンは、当初の予想をはるかに上回る収入源に育ってくれたのだ。彼らの才能と創造力は、伯爵家の財政を支える大黒柱となった。
今や、王家との繋がりは必ずしも必要不可欠ではなくなっている。むしろ、エリュシオンを手放すことのほうが、伯爵家にとって大きな痛手となるだろう。
そこで私は決断した。王妃の立場と、エリュシオンの支配。天秤にかけた結果、後者を選ぶことにした。今まで通り、エリュシオンの主導権は握っておきたい。そのために、婚約を破棄してもらう必要があったのだ。
浮気したことになっているエレナは伯爵家からも追放した。これで、浮気の情報に信憑性が増したはず。
さて次は、エリュシオンとの交渉を始めなければならない。エレナが居なくなったことで、彼らの動きをコントロールする必要が出てきたのだ。特に、トップのヴィットーリオが反発してくる可能性がある。彼は、エレナを慕っていたからだ。
ヴィットーリオが抵抗するようなら、トップだけを切り捨て、新たにエリュシオンを作り変えるしかあるまい。新しいトップを据えて、組織を変えていくのだ。
他のメンバーなら、金を出せばついてくるはずだ。今まで通り、高額の報酬を支払ってやろう。仕事の報酬をケチるなど、馬鹿なやつのすることだ。そんな愚かなことは私はしない。
この先も、狡猾に立ち回ってみせよう。伯爵家の繁栄のためなら、手段を選ばずに進んでいくのみ。
そう、すべては私の計画通りに進んでいる。あとはエリュシオンを手中に収めるだけ。私の野望を阻む者は、もはや誰もいない。
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