第37話 徐爵式

エミリアさんが来てから数日が経った。

屋敷は広いので空いている部屋に泊ってもらっている。


執務室でエミリアさんに仕事を教わっていると、アルトから通信魔道具に連絡があった。


『『今ちょっといいかな?』』


「はい、大丈夫です」


僕はエミリアさんに許可を貰い、アルトと話し始める。


『『ソウタに男爵の爵位を叙爵じょしゃくしようと思うのだけど…』』


「え?いきなりどうしたんですか?」


『『平民が領主っていうのは居ないからね。領主になれば貴族も相手にすることになるだろうし。爵位はあったほうがいいよ』』


「僕、何もしてませんけど?」


『『そこは大丈夫。ぼくを助けた事にしておくさ』』


ということで王城へ行くことになった。

玉座の間へ行って叙爵するらしい。

形式的な物らしいけど。



「『転移テレポテーション』」


「わぁ、本当に一瞬だわ」


エミリアさんは初の転移魔法で驚いていた。

転移先は、以前…転移用に用意してもらった部屋だ。

今回の式の為に、僕の服はオーダーメイドで作ってもらっていた。

結構な出費になってしまった。

僕はタキシード、コルネットはドレス、エミリアさんは普段のスーツだ。


「よく来たね」


アルトが軽く挨拶する。

最近よく話している所為か、久しぶりの感じがしない。


「一応玉座の間で徐爵式をするから、恰好だけ気を付ければ良いよ」




   *




「あー緊張した」


大勢の貴族たちが見守る中、叙爵式が行われた。

緊張し過ぎて手と足が同時に動いてた気がする。


「叙爵式が珍しいですからね。見物人が多いのも仕方が無いのでしょう」


エミリアさんが苦笑いする。

前もって言われた通りの言葉を返し、王様から剣を受け取って終わった。

僕が若いからなのか、周りの貴族たちがやたらと騒めいていたのが印象的だ。


廊下を三人で歩いていると。


「お疲れ様。戻ってゆっくり休むと良いよ」


向かい側から、アルトが笑顔で手を振って歩いてきた。




   *




『人間って大変ね~』


屋敷に戻ってくると、コルネットはベッドにダイブしていた。

転移したのはコルネットの部屋だ。

エミリアさんは今日は城に用があるらしい。

部屋で二人きりになっていた。


「確かに面倒くさいな」


僕はネクタイのひもを緩めた。

片っ苦しいのは疲れる。

コルネットはドレスを脱ぎ始めた。

彼女も窮屈な洋服を着ていたのだ。


「あ、着替えるんだね…僕、部屋から出るね」


ドアに手をかけようとした時、後ろからぎゅっと抱きしめられた。


「コルネット?」

『一緒に居よ?折角二人きりだし』


最近、仕事の引継ぎやらで忙しくて彼女に構ってあげてなかったな。


「うん。そうしよっか」




上着を放り投げて、僕たちはベッドで寝そべっていた。


『ソウタ、格好良かったよ』

「徐爵式の事?緊張してガチガチだったよ」


『うん。緊張してたね』

「だろ?格好悪い」


『そういうところも好き』

「うん」


彼女の瞳を見つめて、僕は優しくキスをした。


『ソウタ、もうそろそろ良いよね?』

「良いって何が…」


コルネットは下着を脱ぎ始めていた。

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