第35話 生活雑貨屋

『『へえ~そうなんだ。妖精とかって居るんだねえ…そういえば昔…』』


屋敷に帰ってからアルトから通信魔道具に連絡が来た。

あちらも暇じゃないと思うのだけど。

友達が出来たことがよっぽど嬉しかったのだろうか。


「あ、そうだ。そこの息子さんの名前で、ナダルって言う青い髪の男性知りませんよね?冒険者だろうからお城に居るわけが無いと思うけど」


昼間の依頼で聞いた人の名前。

アルトは知らないだろうけど一応聞いてみる。


『『青い髪?割と珍しいね。最近どこかで見た気がしたけど…城は色々な人が出入りするからね。その人がどうかした?』』


「本当?キャシーさんがしばらく会ってないから、家に戻ってきてほしいって言ってて…わわっ、言葉遣い失礼しました」


言ってから気が付く。

アルトに引っ張られて丁寧語じゃなくなっていた。


『『気楽に話して良いよ。砕けて話してくれる方がこっちも気が楽だから。ぼくたち友達だよね?』』


『『もうっ!ソウタとばっかりお話になって。私にも構って欲しいですわ』』


フェミニアの怒っている声が聞こえた。


『『悪い悪い、そんなつもりは…ソウタまたな』』


しばらくして通信が切れた。

フェミニアと仲良さそうで何よりだ。




   *




『ソウタ、今日も冒険者ギルドへ行くの?別に、お金稼がなくても暮らしていけるよね』


外に出かける用意をしていると、コルネットがふいに疑問を投げかけてきた。


「そうなんだけど…。何もしないのも落ち着かないっていうか…」


住むところは既にあるし、食べ物も用意してもらっている。


『じゃあ、ソウタは確か本が好きだったわよね?本屋さんを探しに行きましょうよ』





プノンの中心街に来た。


「すみません」


本屋を探しに出てきたのは良いけど、全く土地勘がないので近くの店に入って訊いてみることにした。

地図があれば良いのだけど。

町は相変わらず人が居なくて静かだ。


「いらっしゃい」


店内から中年の女性が出てきた。

店は生活雑貨を取り扱っているようだ。

鍋とかフライパンとか並んでいる。


「買い物じゃないんですが、ここらへんで本を売っているお店ってありますか?」


「お客じゃないのかい…まあ、いいかね。本屋は近くにあったけど半年前に閉店したからこの町には一軒も無いと思うよ。あんな高いものを買う人も居ないだろうからね。隣町まで行けばあるんじゃないかね」


「そうなんですね…」


町には本屋が無い。

そんな気はしたけど。

改めて聞くとがっかりするな。


「あの…この町って人が少ないですよね?」


「そうさね…多くの若者が、王都に行ってしまって昔に比べて町の人口もだいぶ減ってしまったからね。寂れてしまってね。領主様も対策も何もしないんだよね」


『この入れ物ステキね。ソウタ買っていこうよ』


コルネットが店内で見つけた透明な素材で出来たコップ。

細かい細工がされていて高級品な感じがする。

キラキラしてずっと見ていられる。


「へえ~キレイだね。じゃあ、このコップ二つ買います」


よく値段を見ずに言うと、二つで銀貨8枚分だった。

ちょっと高いな。

やっぱり買うのをやめようかと思ったけど、コルネットが思いのほか喜んでいた。


まあ、いいか。

昨日の分の稼ぎが消えてしまった。


「お買い上げありがとうございました。また来てくださいね」


品物を買ったお陰なのか、店主は笑顔で見送ってくれた。

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