第28話 王女と王様

「ただいま~」

「あ、おかえりなさい」


フェミニアが家で僕たちを出迎えた。

買ってきた夕飯をテーブルに置く。


「えっと…フェミニアにお客様が来てるんだけど…」


「お客様?」


フェミニアが首を傾げている。

玄関先で男はフードを脱いで顔を見せる。

金髪の青い瞳の青年、上着を脱ぐと白い翼が現れた。


「「え?ええええ?」」


フェミニアは目を大きく見開いて絶叫していた。


「王様?な、何故…貴方が?」

「君のお父様にも驚かれたよ…。まあ当然だよね」

「わらわはアルトの母親じゃ。アルと呼んでくれればよいぞ」


家に来たのはゼノベア王のアルト、隣には黒い翼のアルトの母親アルという女性。


「突然訪問して申し訳ない。えっと…」

アルトは言い辛そうに目を反らした。


バシン!


「ほら、しっかりせんか!」

母親に背中を叩かれるアルト。


「「フェミニアさん。ぼ、ぼくと結婚を前提に付き合ってくれませんか」」


アルトはフェミニアに頭を下げた。



「……え、本気ですか?冗談じゃないですよね?」


「冗談でわざわざこのような田舎まで来ることもないじゃろう。ここまでの移動距離が半端ないのじゃぞ」


「嫌ならハッキリ断ってくれてもいいですから…」


アルトは目を伏せてうつむいている。


「そうですね」


フェミニアは深呼吸をする。

そしてアルトの手を取って言った。


「私からも喜んでお願いいたしますわ」




   *




「ソウタ、私冒険者辞めるわ。取り合えずトステア城に戻ろうと思うの」


「そっか」


フェミニアとゼノベア王が付き合うと聞いて、トステアの王様は泣いて喜んだらしい。

他の兄弟たちも驚いていたと後で聞いた。


トステアとゼノベアは隣国だが、あまり交流が無かったらしい。

昔は、国同士仲が悪かったようだがここ数百年は穏やかに暮らしている。


「彼に冒険者は辞めなくていいって言われたけど、アルトと一緒に居たいから…今までありがとうね」


僕はフェミニアとの冒険者パーティを解散した。

フェミニアが城へ戻るので、彼女が借りていた家を出て行かなければいけなくなった。





僕たちは、前泊っていた宿へ向かっていた。


「振り出しに戻っちゃったな」

『また二人きりになっちゃったね』


冒険者のランクも、この間の依頼で一個上がったんだっけ。


「また、お金稼がないとな…もういっその事、無料で住める家があったら良いんだけど」

『お家ね~。別にこだわらなくても良いんじゃない?わたしはどこでも良いよ?』


購入したベッドは収納魔法アイテムボックスに仕舞ってある。

試しに入れてみたら入ったから驚いた。

一体どれくらい入るのだろう?

青い猫型ロボットの四次元ポケットみたいだと思った。



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